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#秋ピリカ応募テーマ紙 【シュレッダー】


シュレッダー

ここは総務課、後ろのデスクのマコトの事が気になる。
同期入社になる。もうすぐ10年目、私の方がひとつ年上。マコトは営業部から、私は企画部から配属されてきた。

マコトは営業部だったせいか、身のこなし、電話対応、ファイリング、オフィスワーク、全て私より抜きん出てる。

マコトの事が気になる。これがどういう気持ちか自分でもわからない。仕事ができるマコトへの憧れなのか、ライバル心なのか、それとも恋心なのか。

ただ単に波長が合うだけなのか?

マコトが出張などで不在だと、少しホッとする。自分の仕事に集中できる。
「意識しすぎだね…。」

マコトからもらった出張先のお土産の絵葉書を
デスクに飾ってる。緑豊かな森の写真だ。
「目休めにどうぞ、一応お揃いだよ。」
マコトは微笑みながら言ってくれた。

今日はマコトが不在、仕事が捗る。コーヒーを飲みながら、くるりと回転椅子を回して、マコトのデスクを何となく眺めた。「ん、変わってる?」いつの間にか同じ絵葉書じゃない!
「気分転換に変えたのかな?」そんな事私に告げる必要もないし…。モヤモヤする。

「仕事に没頭しよう。」

夕方、ゴミ箱の不要な紙類をシュレッダーにかける時間。ゴミ箱を持ってシュレッダーに向かう途中、新人の女の子のデスクに目が行った。

「あれ、さっきのマコトの絵葉書と同じ?」

落としそうになるゴミ箱を慌てて抱きしめた。
可愛いい娘だ。フワフワした髪にナチュラルメイク、人気がある。

マコトとその子の絵葉書は、真っ赤なポプラだ
なぜ気づかなかったんだろう。紙の山をシュレッダーにかけながら、吸い込まれていく様をただ見つめ続けた。頭がボンヤリする。

一瞬、自分の森の絵葉書もシュレッダーにかけようと頭によぎった。
「いや、確かめたい!」

即座に、自分の森の写真とマコトのポプラの写真を入れ替えた。
「何でそんな事しちゃったんだろう…。」
後悔。



それから2週間。マコトも新人の女の子も何事も無かった様に仕事をしている。当たり前だ。気づいても言うはずないのに…。
モヤモヤする。そんな自分に自己嫌悪。

今日もシュレッダーの時間。
ゴミ箱を手にとる。ふと、目が留まった。

昇進試験の要項用紙だ。「そうだ、条件に満たるんだ。」
折り目のついた要項紙を慌てて取り上げた。
マコトも同期だ、受けるのだろうか?

「知った事じゃない!」マコトと波長をずらすには何かに没頭するしかない。
大体、赤のポプラの絵葉書は私の波長と合わない。

ゴミ箱を手に取り、紙の山とポプラの絵葉書をシュレッダーに投げ入れた。
紙の山はモヤモヤした自分の気持ち。
「さあ!試験要項の続き読まなくちゃ。」

         了



            (本文1118文字)

#秋ピリカ応募

ピリカさまの秋ピリカグランプリ2024に
参加させて頂きたく存じます。
初めて小説を書いてみました。
ピリカさまの「創作なんてしたことがない」方でも、まずは書いてみようの文章に気持ちが動かされました。企画外かも知れません。ピリカさまお手数おかけ致します。

                 サブリナ