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ドラマに書かれない警察の本当の話

元警察官で、数回の転職を得て、現在はバス運転手をしている傍ら、講演講師として活動をしている者が、思ったことを書くつぶやきです。
私個人の見解であることをご理解の上、読んでいただけると幸いです。

文章にするのは難しいので、うまく表現できるか、またいつまで続けられるか不安はありますが、できる範囲でやって行きたいと思いますので、暖かく見守ってください。

今日は「警察の広報」と「捜査関係者への取材」の違いについてです。

ニュースでよく聞くのが「捜査関係者への取材」で分かりました、と言う表現です。
この言い方をされると、警察が公式に報道機関に発表したのかな、と思う方がほとんどだと思います。
正確に言うとこの言い方は、警察の公式な発表ではないのです。


警察の広報の仕方について

警察が報道機関に正式に発表する時は、「広報簿」(自治体によって多少言い方が違うかもしれませんが、おおよそこの言い方です)と言うA4サイズの紙を1~2枚程度の内容で、報道機関に発表します。
これが、警察の正式な「広報」になります。

内容は、事件事故等の発生日時、場所、逮捕した際は被疑者の名前や逮捕種別(通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕)や逮捕日時や場所、逮捕容疑の事実の内容(認めているか否認しているか)等をまとめた内容です。
銀行強盗や特殊詐欺等・災害救助等の訓練の実施や広報啓発活動(例えば有名人の1日警察署長をやる場合等)がある際は、実施日の前に広報をしていきます。
これを見てそんなに発表していないじゃないかなと感じた方がいるかもしれませんが、その通りです。
警察では広報の仕方と言うのがあり、事件事故によっては被疑者や被害者等の人権を侵害することもあることから、人権に十分注意をしたうえで、警察本部に常駐する「記者クラブ」に、どの事件事故について広報をするか言うのを事前に協定を結んでいて、その協定に基づき事件事故を発表する感じになります。
また発表の際、捜査に支障のない範囲で事件事故の概要的なことを「コメント」として言っています。この「コメント」は、広報簿には書かれていませんが、発表者が口頭で記者さんに説明する内容であります。
発表の際は、警察署等で広報簿を作成したら昼間は警察本部の捜査担当の部署と広報課(夜間は警察本部の当直)へ内容を送り、本部の決裁がおりたら、本部(たいていは広報課)から記者クラブ(報道機関)へと発表されるっていう流れです。
本部の決裁がおりたら、警察署でも報道機関や地元の報道機関(ローカル紙)等へ発表をしていきます。
そして広報課では報道機関からの問い合わせに答えていきます。
警察署でも同様に報道機関からの問い合わせに答えていきます。
警察署では副署長や警務(総務)課長、各課長、夜間は当直責任者が対応をしていきます。

「捜査関係者への取材」とは!?

ニュース等でよく聞く「捜査関係者への取材で分かりました」と言う表現です。
前にも書きましたが、この言い方は警察の正式な発表ではありません。
それではどこで・誰が発表しているのか、と思うかも知れません。
報道機関の記者の方の取材力と言うのは、知られていないと思いますが意外と凄い力であります。
取材方法に関しては疑問に持つ方がいるかもしれませんが、そこは警察は介入しづらいところです。
報道機関の記者さんが取材をし、まとめてきたのを、警察本部や警察署の担当者の方に質問等をしていきます。
そのやり取りの中で、記者さんが間違いない(自分達の取材が間違いない)と確証を得ることができたら、「捜査関係者への取材で分かりました」等と言って、ニュース等で放送される感じかと思います。
警察も事件事故等の捜査状況を逐一話をしてしまうと、裁判等の公判廷に影響をするのを当然ですが、守秘義務に違反してしまう可能性もあることから、何でもかんでもベラベラ話すことはしません。
警察の公式の見解は「広報簿」だけであります。

警察と報道機関の関係性は…

「記者クラブ」と言う所を通じて、関係性を保っている感じです。
記者クラブの存在を問題視する報道機関もありますが、その点はここでは論じません。
記者クラブに所属している報道機関の記者さんが、警察本部をはじめ、警察署へ顔を出したり、取材をしていき、ニュース等になって行く感じであります(簡単に言うとです)。
記者さんが日頃から警察署等に定期的に回ったり、また事件事故等についてしっかり取材ができている方だと、いざ事件事故等が起きた時に、警察の担当者ともちゃんとやり取りができ、警察の「広報簿」を発表したり、捜査関係者への取材と言って、ニュース等で報道されることになるかと思います。
その一方で「捜査関係者への取材」が暴走すると、警察が報道機関に発表する前の事件等をスクープとして報道されてしまったり等、警察の捜査の妨害になることもあります。
私が在職中でびっくりしたのは、記者さんが警察署のトイレ(大の方に)こもって、トイレでの事件捜査員の会話を盗み聞きをして、その内容を捜査関係者への取材と称してスクープされ、以降の事件の捜査に支障をきたしたことがありました。
この時は後日、副署長から「トイレ内でも事件関係の会話はしないこと」と指示がでました。
この様なことを起きてしまうと、警察も報道機関を信用しなくなってくるので(最近はその傾向が多いです)、捜査本部等が設置される事件が起きた時は、原則として記者会見が行われる時以外は記者さんも署内への出入りが禁止されます。
記者さんも自分達の取材内容が合っているか確認したい、また担当者から話を聞きたいと思い、警察署の駐車場で待っていたり、朝の出勤前や帰宅時に警察幹部の家に訪問して話をしたりすることがあります。これを「朝ガケ」「夜ガケ」等と言われています。
警察の担当者と記者さんが、ちゃんとコミュニケーションが取れているかと言うところではないでしょうか。
記者さんもですが、警察サイドも記者さんとは良好な関係を築いておきたいと言う考えもあることから、定期的に飲み会を行って、関係を保っている感じであります(お酒が入るとたまに不祥事が起きてしまうのが残念な所ですが…)。
良好な関係が保てると、報道機関も事件事故をちゃんと発表してくれますし、警察側も捜査の支障のきたさない範囲でちゃんと取材に対応をしています。
警察の広報啓発関係の活動は、報道機関にちゃんと記事やニュースにして欲しいと思うので、警察側も全てをけぎらっている訳ではないことを理解して欲しいと思います。
良好な関係を保つためには、お互い日頃からのコミュニケーションが大切だと思いますし、良好な関係が、国民の方にとっても良いことであり、「報道の自由」が結果、有益につながっていくと思います。

余談ですが…

報道機関の記者さんの最初の仕事と言われているのが、警察の担当だそうです。警察との仕事(自分の取材も含めて)がちゃんとできる記者さんは、後々政治部等と言った部署に配属になるみたいで、警察担当は記者としての最初の腕が問われるところだそうです。
警察担当は「サツマワリ」と言われ、サツマワリができないと他の取材はできないと言われているらしいです。
取材先をはじめ、警察関係者とちゃんとコミュニケーションが取れることが重要なのかなと思いました。
私も在職中は、何人かの記者さんとお話したことがあり、そのうち1名とは退職まで色々とお世話になり、助けられたこともありました。
その方は交番勤務時代に知り合い、交番の勤務体系等について私に一生懸命質問をし、後に交番相談員の必要性について報道をしてくれました。
また私が所属していた署で広報が出た時は、私の所に内緒で連絡をしてきて、色々と話をしたりし、その後たいていニュースになってました。
ちなみにその方は現在、政治部の官邸キャップの記者になられています。
仕事のできる人は、ちゃんと出世して行くんだなと思いました。
一方で、警察批判するジャーナリストがいましたが、この方は警察担当の記者出身を言ってましたが、「サツマワリ」が全然できない記者だと、警察関係者をはじめ、同僚の記者からも言われていたみたいです。

話はそれましたが、テレビでよく聞く「捜査関係者への取材」と、警察の広報の仕方等について書かせていただきました。

こんな私は、講演講師としても活動しています。
警察官として在職中の体験談から、皆様のお役に立つ話をしています。
河野 博紀 - 一般社団法人日本刑事技術協会 (j-keiji.org)

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