なぜ「闇バイト」に応募してしまうのか!?

元警察官で、数回の転職を得て、現在は鉄道会社に勤務している傍ら、講演講師として活動をしている者が、思ったことを書くつぶやきです。
私個人の見解であることをご理解の上、読んでいただけると幸いです。

東京都や埼玉県を中心に「闇バイト」による、一軒家の強盗事件が発生し、ニュース等で話題になっています。
テレビでは一軒家での被害に遭わない対策をよく取り上げられています。
この様な事件に遭わないためには、防犯対策もとても重要ですが、その一方で「なぜ闇バイトに応募してしまうのか?」というのがあると思います。


「闇バイト」に応募してしまう背景とは!?

「闇バイト」は「高収入」を謳ってSNSや掲示板などで募集が行われ、「軽い気持ち」で始めさせるが、個人の身分証や実家の情報などを提供させることで、犯罪組織から辞められない手口を用いています。
そのため、多くの専門家は若者が「闇バイト」に応じないよう啓発することが重要だとしています。

こうした論調から、ともすると若者の「将来を顧みない安易で短絡的な考え」が問題とされ、若者の自己責任に帰されがちであります。
または、その若者を育てた親の責任へと関心が向きがちだ。しかし、この問題には経済的な背景があることも見逃すことができないと思います。

「闇バイト」に応募する動機は!?

若年男性の貧困率
統計的に見ると、若者の貧困率は高い傾向です。
男女ともに20歳〜24歳で貧困率の「山」ができています。特に男性において貧困率が高く、2000年代以降の上昇が著しい状況です。

この年齢層は高校や大学といった学校の卒業後にあたり、学校から仕事への移行の困難が伺える傾向かと思います。バブル崩壊以降、学校卒業後に無業者や非正規雇用となる者が増加したことが大きな要因だと考えられます。

雇用の劣化による若者の貧困化が「闇バイト」応募の背景にあることは想像に難くないかと思います
雇用が劣化した日本社会では、多くの若者が働いても生存ギリギリの非正規雇用か、額面の給料は非正規より高くても(時給換算では非正規と変わらないことが多い)過重労働で心身を消耗する正社員かという選択を迫られることになっていると思います。

「普通」の仕事よりも、「闇バイト」の方が「コスパがいい」とすら感じる若者が出てきてしまう背景には、そうした雇用問題あると考えられます。
ただし、「闇バイト」は貧困や労働問題だけに起因しているわけではなく、次に見るように、貧困を加速する「消費社会」の問題も看取できます。

「浪費」による「闇バイト」

「浪費」そのものは誰しも経験のあることではないでしょうか。
仕事や学校、家族などでのストレスや不安を消費によって解消しようとしたことがあると思います。アルコールやタバコ(ニコチン)といった物質の消費、ギャンブルやゲームといった過程のある行動を通じた消費、アイドル、ホスト、「推し活」などの関係を通じた消費です。
これらは商品化され、金銭の支払いを伴うことが多いことから、家計の余裕がなければ、「節度を持った」消費にとどめておけばよいのです。

しかし、これらの消費が自分の力で止められなくなる場合があり、それがいわゆる「依存症」です。
お金がなければ抑えるはずの消費を止められず、消費を継続するために犯罪に加担してしまう状態は、依存症に陥っている可能性が高いと言えます。
消費が止められなくなった結果、「闇バイト」に応募する若者も少なくないことが推察されます。

「闇バイト」を防ぐために

まず、失業して生活に困っているなら福祉制度を活用したり、依存症により債務が膨らんでいるなら債務整理をするなど、制度を活用して生活を再建することが重要です

日本において生活に困った場合に使える制度は、生活保護にほぼ一元化されています。住んでいる地域の自治体で誰でも申請ができ、世帯の収入と資産が条件を満たせば受給が可能です。毎月の家賃や生活費が一定額支給されるほか、医療費が無料になったり、子どもがいる場合には教育費の補助や、仕事のための資格取得のための費用補助もあります。住居を失っている場合には、アパートを借りるための初期費用や引越し費用も支給されます。

借金を抱えて返済が困難になっている場合には、法律家に相談して債務整理をした方がよいと思います。債務額が多額であれば自己破産も検討してほしいです。同制度を利用した場合、ローンを組んだりクレジットカードを契約することは一定期間できなくなりますが、生活必需品や99万円以下の現金の保有は認められています。生活保護受給中であれば自己破産に伴う弁護士費用が免除となります。

次に、貧困の要因である雇用の劣化を防ぐ必要があります。昨今のインフレにより非正規労働者の生活はますます厳しくなっています。
2024年は賃金の引き上げをした企業はありましたが、まだまだ少数と言えると思います。2023年には、靴小売最大手のABCマートや総合小売大手のベイシアでは、複数の個人加盟ユニオンが「非正規春闘」と銘打ってストライキや抗議行動を行うことにより、それぞれ5〜6%の賃上げを実現しています。このような労働組合を通じた労働条件の改善は、貧困と犯罪を抑止するためにも必要であると思います。

労働組合の活動の前に、国等は雇用施策についての見直しも必要だと思いますし、経営者の方も若者をはじめ従業員の人が一般的な生活ができる様に賃金を引き上げる様に、従業員が定着できるように、経営努力をするべきです。

最後に、依存症については個人の治療は必要です。
しかし、それだけでは問題の根本的な解決にはならず、「依存症ビジネス」の規制も必要です。
例えば、インターネット・ゲーム依存症に対し、韓国では16歳未満の児童の深夜0時〜朝6時のアクセスを規制しているし、中国では18歳未満の児童が1日3時間以上ゲームをした場合にはクレジット(ゲームをする権利)を半分にし、5時間以上するとゼロにする仕組みを作ったり、本名での登録や住民登録番号が必要とされています。
日本ではありふれたパチンコは、韓国では全廃され、中国ではそもそも今まで許可されていません。

私個人が思っているのは、家族や会社等の勤務先の方が「気づいてあげる」ってことも大切だと思います。
個人情報保護と言われている世の中になっていますが、自分の家族や職場の仲間が「闇バイト」に応募して犯罪に加担する前に、周囲の人が日頃から注意して、ギャンブルや課金ゲーム等で多額の借金を抱えてしまった場合、また頑張って働いているのに、賃金がなかなか上がらないと悩んでいたり等、若者も悩んで、葛藤をしています。そんな葛藤に早く気付いてあげて、家庭や職場等で救いの手を差し伸べてあげて欲しいと思います。

あとお金に困って「闇バイト」に応募する前に、ぜひ弁護士等の専門家にも相談してほしいです。
※参考資料:今野晴貴氏(NPO法人POSSE代表、雇用労働政策研究者)
      2023年6月12日 YAHOO JAPAN!ニュース投稿より

私の防犯講演では、子供向けを中心に一部大人の方へのSNSの向き合い方やスマホの使い方等についても講演をしています!

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河野博紀 自己紹介
河野 博紀 - 一般社団法人日本刑事技術協会 (j-keiji.org)

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