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穿孔性十二指腸潰瘍         キムチ鍋からの、煮込みラーメンラー油掛け

真夜中のこと、なんかお腹がチクチクするぞ。
トイレに起きた。
オシッコをして、寝床に戻った。
そして、体を「く」の字にして寝た。その姿勢が
一番チクチクが、和らぐ。

明け方近く、3:00頃おなかが痛くて目が覚めた。
ウッ!吐き気がするような感じで、みぞおちのあたりが痛い。
ゲップをすると、昨晩の『キムチ鍋からの、煮込みラーメンラー油掛け』の臭いがする。   食べすぎか

白菜、豚のばら肉、油揚げ、人参、キノコ、ニラ、ねぎ、
みそ仕立てで、豆板醬でお好みの味に。すりごまを入れると、辛みがマイルドになります。
しめは、太麵のラーメンを入れてラー油をかけて食べる。

寝室でうなってバタバタするのも、なんだから
リビングに移りソファで「く」の字になって寝た。

5:00頃だろうか、奥さんが「大丈夫?」って起きてきた。
「救急車、呼ぼうか?」
その時の私は、
エイリアンが腹の内側を食い破って、外に出てくるんじゃないかと
思えるほどの、痛みに襲われていました。
(エイリアンには、どこで寄生したんだろう。)

少し、意識がもうろうとしてきた、その時
「大丈夫ですよ。安心してください。」
「すぐ、楽になりますよ。」っていう包容力のある太い声と
冷たいナイロン地のジャンパーの腕に抱きかかえられて
車いすに乗せられたのを、消えそうになる意識の中で認識していた。

そして、まぶしさでぼんやりと目を開いた時
救急車の中だった。
(急性アル中で2回ほど、救急車の世話にはなってるので、救急車の中は
なんとなくわかる)
救急隊員と、うちの奥さんが会話してるのが、聞こえる。
「内科と外科の当直がいるのは、○○病院と△△病院ですが
どちらの病院にしますか。」
「じゃ、○○病院のほうでお願いします。」
けっこうしっかりした受け答えを、してるじゃないかうちの奥さん。
(後から聞いたら、○○病院のほうが近いから。だそうだ。)
救急車が動き出すとまた、意識がもうろうとしてきた。

こんどは、ガラガラガラ、ざわざわざわ、という音で目が覚めた。
ストレッチャーの上で、腹を抱えて横向きに寝ている自分がいる。
そして、「痛い、痛い、痛いです。」と叫んでいる。
なんで、「✕✕です。」とていねいに、「です。」をつけているのか
よくわからない。
でも、たしかに、「です。」と言っていたのを覚えている。

こんな感じのストレッチャー
こんな感じのエレベーターホール

大きな病院の、天井の高いエレベーターホールにストレッチャーの音が
冷たく響き渡っている。   ガラガラガラガラ!
「緊急です。緊急です。道を開けてください。」という看護師さんの
声がする。
こんなに早くから、病院って人がいるんだと思い、薄ーく目を開けると
うちの奥さんがジャージ姿で、小走りに寄り添っていた。
(私が、刺したわけではないんです。と言いたそう。)
エレベーターの扉が開いたところで、また意識がとんだ。

「外科の先生、呼んで。」という切羽詰まったような声で、目がさめた。
「内科ではだめだから早く外科の先生を呼んで。」女医さんの声だ。
ボサボサ髪の外科の先生が、なにかの映像を見て
うちの奥さんに、なんか言ってる。
「大丈夫ですよ。今日中に必ず手術しますから。」
フ~ン。手術するんだぁ。そう思いつつ再び夢の世界に入った。

「○○さん、○○さん、わかりますか。ここにサインしてください。」
っていう、看護師さんのデカい声で目が覚めた。
すごいスピードのストレッチャーは
テレビで見たことのある、銀色の扉の中に吸い込まれていった。
「○○さん、チョット我慢してください。」と聞こえたら
口から喉にかけて、銀色の冷たいペリカンの口のようなものを
差し込まれた。
「オエ!」
こんどは、「チクっとしますよう。」と言われたのを最後に
完全にわからなくなった。

目が覚めると。
オウ~~~!
俺は仮面ライダーの手術を受けたのか?
何本もの管につながれている。
カフカの『変身』を思い出した。
「巨大な毒虫ではないが、人造人間か。」
まだ、意識はハッキリしないが、
ふんどしがずれて、丸見えのような気がする。
恥ずかしいなんて感情はなく、もう、どうにでもしてくれ、っていう感じ。
奥さんは、おらず。感動的な
「あなた、大丈夫?」
「ああ」なんて会話はなかった。
ただ、明るい部屋で、ピコン、ピコンって音だけが耳に入ってきた。
そして、眠くなったので、眠った。

次に目が覚めた時は、次の日の昼間だった。
奥さんと、甥っ子、姪っ子が立っており
「大丈夫?」なんて、健気な言葉をかけてくれました。
まだ、ピコン、ピコンって音は、響き渡り。
仮面ライダー状態は、変わらずでした。

奥さんの話によると、緊急オペだったらしく
診てくれた当直の外科の先生が、執刀してくれたそうです。
(当直だったのに、医者って大変だなぁ)
12:00から始まり、16:00過ぎまでかかったとのこと。
状況によっては開腹手術もあったけど、お腹に5個の穴をあける
腹腔鏡手術ですんだので、退院は意外と早いらしい。
こんなに時間がかかったのは、
前の晩に食べた『キムチ鍋からの、煮込みラーメンラー油掛け』の油を
吸い取るのが、大変だったとのことでした。😁

穿孔性十二指腸潰瘍とは

  胃壁や十二指腸壁に孔が空いてしまい、壁を突き抜けて
  そこから胃や十二指腸の出す消化液(タンパク質分解酵素など)が
  腹腔内に漏れ出し、腹膜炎をおこす病態。となってます。
  後から、病院の図書室で調べたら
  自分の出すタンパク質分解酵素で、自分の内臓を溶かすようなもんだと
  書いてありました。 だから
  24時間以内に手術しないと、危ないらしいです。

術後1日目は、ナースステーションの目の前の部屋。
2日目から2~3日はその隣。そして、だんだん、ナースステーションから
遠ざかり、退院近くになると一番遠い部屋。
2日目からは、歩いてくださいと、歩け、歩けです。
点滴スタンドをゴロゴロさせながら、病院内の喫茶店に行ったり
展望室に行ったり、コンビニに行ったり、図書室に行ったり
ウロウロしました。 また、お見舞いにいただいた
『超訳 ニーチェの言葉』』を読んでみたり
普段、なかなかしないことをやってみました。
でも、やっぱり飽きてしまいます。
(アッ~!プリン体入りの、麦のジュースが飲みてぇ~!)

4日目からは、食事が出ました。
やったぁ!  ごはんだ、ごはんだ。!
どんなメニューだろうと、ルンルンしながら見ると、なななんと
ハンバーグに野菜サラダ、ほうれん草のお浸し、なんて書いてある。

ワクワクしながら夕食の時間を、待ちました。
時間つぶしに、点滴代をゴロゴロ引きながら、病棟の廊下をウロウロし。
時間が近づくと、ベッドの上で、よだれダラダラのラブラドールのように
「僕良い子にしてたよ。」状態で待ちました。

カチャカチャ、カチャカチャという配膳の音が、近づいてきます。
そして、ついに
「○○さん、夕食ですよぉ。」って、
看護助手さんが、夕食を持ってきてくれました。
ヤッター!    エッ!
手前に白い液体、その隣と左上に茶色の液体
その隣の小鉢には緑色の液体、そして
右上には緑黄色の液体にオレンジ色のすじが入っている。
これは、スタバの新作か?

手前はごはん、その隣はみそ汁。そして、左上はハンバーグ。
その隣の小鉢は、ほうれん草のお浸し。そして
右上は野菜サラダ。
なんてステキな、お夕食でしょう。
1分半で、私の夕食終わり!

そうだよなぁ、十二指腸に孔空いちゃったんだから。
まだ、固形物は早いよなぁ。😔
でも、美味しくいただきました。😁

4人部屋でトイレ、シャワー、洗面台付きでした。差額はなし。
(この病院は、相部屋はすべて4人でした。)
なかなか、快適な病院生活をおくり、11日目で退院でした。

後から思うと、なかなか大変な病気だったんだなぁと思います。
以前から、朝食はほとんどとらず、コーヒーのみの日が多かったです。
半年ぐらい前から、空腹時にみぞおちのあたりを押すと、痛いという
自覚症状はありました。
以来朝食は、必ず食べるようになりました。
ちなみに、「ピロリ菌とストレスが原因だろう。」と先生は言ってました。

私にとって、ほぼ初めての入院体験を書いてみました。
この病院とはその後、夫婦そろって長いお付き合いを
させていただいております。
ここまで、お付き合いいただきありがとうございました。🙇‍♀️








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