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ファンタジー短編小説

南州丸4


あした 漁に出てみるか

鮪は取ったらエビス エビス様だ

ここは日本一の漁場だ

ここで腕を磨いて 帰ったら

日向灘一の 鮪漁師たい のう

やっぱり海長は 男の中の男よ

豪と快はふたつ返事で 習うことにした

魚探はいらん

鮪は海猫|《ごめ》が啼いて 教えてくれる

擬似餌は 見破られる

電気ショックは 鮪に失礼だ


糸は 太すぎては駄目だ

切られるか 上がるか びくびくする位が丁度いい

きらきらきらと 波間に光る

銀のウロコのさんまを 食わせるとよ

手取り足取り 

夜が更けるのも 忘れて

海長は 鮪の一本釣りを熱く語る

明日の漁が 楽しみだ


大間の沖は 僚船|《ともぶね》の漁場だ

じゃまをしたら いかん

そう言うと 海長は

恐山を左舷に見て 高野崎へ針路を取る

竜飛崎は 潮の流れが 速い

そんな海長の気づかいだ

海長丸に曳かれ 南州丸は

初めての津軽海峡

波を切り 飛んでゆく

北の海も また いい所だ


群れを嫌った ワタリドリのように

あちらこちら

一本釣りの船が 行き交う

新入りです よろしくと

やさしく 汽笛を鳴らす

ボォー ボォー ボォーと

こだまのように 汽笛が返る

ありがとう 僚船よ

北の海も やはりあたたかい情がある

<続く>

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