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ファンタジー短編小説2

紀淡のリリー9


山のような ご祝儀を 

拾い集めて お礼をのべて

袖に引いて

リリーは 支配人にすべて渡した

リリー いや百合 これはお前のものだ

取っておくれ いいんだよ

いいえ わたしは 料理見習いの身分

受け取る訳には まいりません

百合は そう言うと

料理場へ 急いだ


おはようございます

支配人に挨拶をすると

百合 昨夜はありがとう

本当に 助かったよ

漁協の皆さんに ほめられて

鼻が 高かったよ

感謝の言葉が うれしかった

支配人 ひとつ尋ねていいですか

なんだい 百合

昨夜 一番後ろの席にいた

背の高い 短い髪の人は

漁師さんでは ないですね


リリーは踊りながら

唄いながら

一人の男が 気になっていた

包みこむような まなざし

時折り見せる 孤独の影

そして なにより

一枚だけ持ってきた 家族の写真に

写っている

父の顔に 瓜ふたつだった


そうか やっぱり 気になったか

支配人は ほほえみ 話し始めた

何処から流れてきたのか

よくわからないんだが

聞くところによると 創作料理人だそうだ

面接の時

桂むきの競争をさせてみるかと

言った 番外地健のことさ

本名は竜神健

竜神もちょっと怪しいが

岬で 料理修行所 番外地

と言う 小さな料理店をやっているのさ

<続く>


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