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ファンタジー短編小説2

紀淡のリリー最終回


さくらの花が咲き

オルベージュ 北の洋洋は

お客で一杯になり

忙しい日が続く

百合は少しずつ 料理をまかされて

休みの日は 疲れてしまい

寮にいる日が 多くなっていた

いつしか季節は 夏になり

健さんの店を 訪ねることにした

どうしているかなぁ 健さん・・・


免許は持っていたので

会社の車を借りて ドライブと洒落る

渚の道は ゆるやかに曲がり

目の前に オホーツク

北見山地をのぞみ 窓を開けると

野の花の丘へと 誘われ

すれ違う車も少なく 快適この上ない

料理修行所番外地の

瀟酒|《しょうしゃ》な建物が 目に映る

健さんに逢える うれしさに

胸が高鳴る なんだろう

店の扉に 貼り紙が・・・・・


申し訳ありません

暫の間 休業致します

秋には 帰ります   店主

そして 竹で造った花挿しに

一輪ハマナスの花が 飾ってあった

なみだぐみ 両手を合わせて

百合は詫びた

ごめんなさい 逢いたかったのね

ごめんなさい

ひとりぼっちにさせて・・・・


竹の花挿しに 水をあげて

ゆっくりとドアを開けて

車を走らせ 納沙布岬へ向かう

車を降りて オホーツクの海を眺めて

百合は誓った

わたし 浜茄子の 花になる

美しく 美しく 咲いてみせる

そして 立派な料理人に なります

見てて下さい 健さん

足元に 渚の遊歩道に

くれないの花が ひとつ ふたつ みっつ

数え切れない程 

ゆらゆらゆらと 揺れていた


    完

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