リュープリン治療に向けて

リュープリンという注射薬がある。婦人科の病気にも使われる薬で、FtM(体は女、心は男)の第二次性徴を抑制して体が女性化するのを抑えてくれる薬だ。

その薬は定期的に注射が必要で、止めれば初潮を迎えている年齢であれば生理が再開する。可逆的(元に戻る)治療のため、患者の年齢が若かったりトランスジェンダーなのかXジェンダーなのかまだハッキリせず、後に気持ちが変わっても取り返しのつかない事にはならない。

紹介状を持ってファーストオピニオンを受診する。
Dr.は元々ジェンダー外来をやっていたのでGIDの診断、治療のエキスパートだ。
親子で会って話をする。
受診時、私服で男児服を着ていて既に髪型も男の子のカットにしていたため、Dr.から「完全に見た目は男の子だね」と言われる。シンヤは嬉しそうに笑っている。

簡単な質問に答える。いつ頃から自分の性別に違和感を感じたのか。具体的に性別に関する嫌だった思い出を教えて欲しい。私に対しても、親から見て、あれ?と思うような事があったかどうか。
親は子供のカミングアウトに対して否定的かどうか。
18歳未満での治療の場合、両親が現在なら両親2人の同意が必要なため、片親が否定的、反対していると治療ができない。
我が家の場合、ママは〇だがパパは△の状態だった。

そして、ホルモン異常や先天性の性染色体の病気などで性別がハッキリしないなどの症状が出る事もあるため、GID以外の病気ではない。という否定をするために検査が必要だと言われる。

具体的には血液検査(ホルモン値、性染色体の検査)、シンヤはFtMなので婦人科で内診台に上がり、生殖器(外見と子宮、卵巣の異常の有無)、小児科で第二次性徴の4段階のどの段階にいるか(発毛、胸部の発育等の外見)。それぞれ検査結果と医師の診断書をもらう。

中学1年、まだリュープリンの治療が間に合うかもしれないが、早くしないと効果が見られなくなるので急ぎましょう。と言われる。
さすがGIDを診ている所はとても話が早い。そうか、高校前までに診断書、なんて呑気に構えていたけど今は初潮前後から始める治療もあったのか。今まで知らなかった情報がグングン入ってくる。

リュープリンを受けているかどうかはその後の治療にも影響が出てくる。FtMである事に揺らぎがないとわかり、リュープリンを受けている場合は、原則18歳からの男性ホルモン剤治療が特例で15歳から始める事ができる。
男性ホルモンは打ってから「やっぱり違うかも」と言われて治療を中断しても、声が低くなったりヒゲなど体毛が濃くなったりした変化は不可逆(元に戻らない)のため、意思がハッキリしていて訴えに揺らぎのない18歳からを基本としている。

それがリュープリン治療を受けている場合、低年齢のうちから訴えがハッキリしていて家族も診断、治療に否定的ではなく協力的、積極的。身近にいて様子を見ていて間違いないと思っているのであれば、15歳から不可逆的治療を開始しても大丈夫だろう。という事なのだと思う。
リュープリンの価格の高さ、定期的な筋肉注射の苦痛や通院(GIDに対してリュープリン注射を実施している病院が少ないので遠くに通う場合も多々ある)の大変さ、診断や治療開始までの検査のハードルの高さを考えれば、現状のままで生活している事に強い苦痛があり、治療に積極的でその意思が強固である事はおわかりいただけるだろう。

ファーストオピニオンから宿題が出される。
GIDに関する診断と治療のガイドラインの最新版をネット検索して目を通しておく事。
パパが治療に対して同意してもらえるか、GIDに対して理解を深めておいてもらう事。
シンヤに必要な検査を早急に受けて検査結果、診断書を持参する事。

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