25 留学生との会話
なかなか就職が決まらず苦闘している4年生ネパール男子Aとの会話
A:ネパールの金持ちの子弟は、留学先としてアメリカやオーストラリア
を選ぶ。日本を選ぶのはあまり金持ちの子弟ではない。
私:アメリカやオーストラリアを留学先に選んだ学生はいい就職ができているのか?
A:そうではない。重労働ではないが非常に単調な作業の繰り返される仕事にしかつけないケースが多い。
日本では、私たちは、もう少しいい就職先が決まる可能性が高い。
私:アメリカに住んでいた私の見た経験でも中南米からの人たちはアメリカ人がやりたがらないボトムの仕事からスタートすることが多いように思った。
A:そうはいっても、住居の家賃、社会保険、最低限の食費や交通費などど
うしても出て行くお金があり、
「この給料でどうやって生活していけばいいの?」
と思うような求人が多いよー(嘆き)。
私:(勉強はもういいという態度の彼に対して)就職のために何かスキルを
磨かないといけないのでは?
例えば、簿記の検定を受けるとか、TOEICを受けてみるとか。
趣味は何か?
A:今はない。ネパールにいたときはクリケットをやっていた。
私:日本人の好きな野球とクリケットはルールが似ていると聞く。
それらを比較して面接の人に話させるようにしておけば、面接で得点源になるのでは?
その2か月後、人材派遣会社に登録していたAは、
努力の甲斐があり金属製造業の会社に内定をもらい、
学生ビザから就労ビザへのビザ変更申請を
出入国在留管理庁に提出した。
その後ある日のAとの会話:
A: 先生、ビザ変更について、
出入国在留管理庁(入管)の人から、
45分も色々聞かれてきたよ!
私:へえー、どんなことを?
A: 勤務日、勤務時間、休憩時間、残業のあるなし等を聞かれたけれど、
一番聞かれたのは、
職種:生産管理業務
についてでした。 先生、生産管理業務ってどんな仕事?
私:工場では一つの製品だけではなく、多数の製品を生産します。
それらの多数の製品が、決められた納期通りに出荷できるように、
部品の手配、製造ラインの各製品への割当て、機械や治工具などの調整な
どを計画し、その計画通りに進められるように管理することだと思うよ。
A: ああーそうだったのか。入管の人が、生産管理業務とは、
生産、管理、業務 の3つの仕事をするのか?と聞いてきて、そうだと思う
と答えた。
私:それはおかしい。生産管理と生産管理業務とは同じ仕事。
経理と言ったり、経理業務と言ったりするが同じこと。
また、生産管理は今言ったような一つの仕事を言い、
生産と管理を分けるのはおかしい。
A: 私は、
生産管理業務とは、数を数えること
と思いそう答えた。
入管の人がそれについて、いろいろ聞いてきて、長い時間がかかった。
今までにもビザ更新を入管に申請してきたが、
こんなに長い時間をかけて入管で
色々聞かれたことは初めてだった!
どうやら、彼の仕事は、生産管理と言っても、
工場現場で数を数えたり生産に従事する現場作業部分が大きく、
在日6年目と言っても、
当然ながらまだまだ進歩の余地の大きい日本語能力の彼
と、
製造業の現場をおそらくあまりご存じない入管の審査官
との、
一寸ちぐはぐな会話がビザ変更申請をめぐって長く行われたというのが真相ではないか
と思われ、とても愉快でした。