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もしかしたら...ピアノを習うには耳が良すぎると不利かも??

いや、音楽に関わる以上、耳が良いに越したことはない!といいたいところだが、私はドイツ人にピアノを教えていて、時々「あまり音に敏感でない方が良いかもねえ」と思うことがある。

特にピアノ初心者だ。

今回私が言いたい「耳が良い」というのは「絶対音感を持っている」ということではない。念のため。

ピアノは平均律で調律する

ピアノという楽器は平均律で調律されている。この平均律というのは簡単に言ってしまえば1オクターヴを12等分した音律だ。

ドとドのシャープの間とレとレのシャープの間の音の高さの差が同じになるように調律する。(って、わかってもらえる説明だろうか?)

音律については私は「積読にしてしまっていた本」として紹介したことのあるこの本に詳しく書いてある。

いや〜音律の話になると物理だからね、全てここで説明するのは私にはハードルが高すぎる!

というわけで、ピアノは平均律に調律する。すると5度(例えばドとソ)の響きが唸る(濁る)。

上で紹介した本には「ピアノ調律師は完全4度の2音と完全5度の2音を、うなりを数えながら繰り返して編み上げるように調律していくのが一般的な調律法らしい」と書いてある。

5度(4度)の2つの音は同時に鳴らすととても綺麗に協和するはずなのだ。だが、そうすると鍵盤楽器は調律がとても複雑になるので、妥協して平均律で調律をする。その結果が

5度の響きが完全には綺麗にならない(唸りがある)

だ。

そうは言っても、耐えられないほど汚い響きになるわけではないんだよ。そこは5度だよ。協和するのだよ。一応。(というレベルで綺麗に聞こえる)

5度の響きが綺麗でないから「このピアノは調律が必要ですか?」

ここからは私がドイツ人生徒にピアノレッスンをしていて、よく経験することだ。

ドイツ人は音楽性豊かか?と聞かれれば「そうでもない人が多い」と答える。多くは忍耐もないからピアノ練習もしないし、リズム感もない人が多い。

だけど音には敏感なのか?と思う人が結構な割合でいる気がする。

初心者が2つ以上の鍵盤を同時に押す、という技を習うと5度、そう、ドとソの鍵盤を同時に弾く、ということが多発する。

すると

「あれ?なんだか汚い響きですね。このピアノは調律してもらった方が良いですか?」

と生徒に尋ねられるのだ。

いや、残念だけどピアノで奏でる5度は完璧には綺麗な響きをしていないのだ。仕方ないのだ。見過ごせ!
おまけにこれくらいでピアノを調律してもらっていたら調律代がバカにならない!(ほぼ毎日調律してもらうことになる)

ちなみに、私の生徒さんは練習はサボってもピアノの調律だけはキチンとしてもらっている家庭が多い。

不協和音が出てくると「子供が間違って弾いていると思うのですが」

和音を習い始めると「ドミソ」の主和音と「シファソ」の属七の2つの和音がついた簡単な曲を練習することが多い。


このような楽譜を弾く(これはバーナム教本から)

そこで発生するのが

「属七和音が受け入れられない問題」なのだ。

例えば、「ちょうちょう」(元はドイツ民謡「Hänschen klein」)のメロディーを右手で弾いて、左手で「ドミソ」か「シファソ」の和音をつけるとする。

そうすると2小節目(メロディーは「ファレレ」)には「シファソ」の和音がつく。

ここで大問題が発生するのだ!!!!ファとソの音を同時に鳴らすと、濁るのだ。

この「Hänschen klein」の課題(教本に入っている)を与えたら、翌週のレッスンで親御さんから

「あの〜先生、この2小節目を娘はこのように弾くのですが、汚いですよね。間違って覚えたのだと思うのですが…」(などと遠慮がちではなくて、「これ、違うよね」とストレートに尋ねてくる)

この世には不協和音というものがあるのだ!と延々と説明するか、それとも「これであっていますよ〜常に綺麗な和音だと綺麗さがわからないですよね。だから響きの汚い和音も入れるんです。すると綺麗な和音に戻りたくなりますよね〜」とか、生徒や親の音楽に対するレベルに合わせて説明をすることになる。

これ、1度や2度じゃないのだ。ひどいと「この音(不協和音)には耳が痛くて耐えられないので課題を変えてください」となる。

え?じゃ、グレゴリオ聖歌でも練習するかね???

ピアノの上に飾り物をたくさん置いて、共鳴するのにパニックになる生徒

ピアノの上に物を置きたくなる人は多いだろう。

ましてや、リビングのインテリアには凝る人が多いのがドイツ。特にクリスマスが近くなるとクリスマスの装飾品がずら〜っとピアノの上に並ぶ。

だけなら良い。このピアノの上に置かれたものが、ピアノを弾いていると共鳴して雑音を出すことがある。

「きゃ〜先生、なんか変な音がする〜!!」

ピアノの上にあるものが原因かもよ、と告げると慌ててピアノの上の物を全て下ろすのだが、それでレッスン時間が過ぎるのだ。

そして「これは調律師に来てもらった方がいいのでしょうか?」となる。

ピアノの上に物を置くのなら多少の雑音には目をつぶれ、じゃない、耳を閉じろ!(あ、聞こえなくなると困るか…)

ピアノを習うとなると、多少は耳が悪い方が良いのかもしれないなあ、と思うことがある。本当は良いに越したことはないんだけどねえ。


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