#19 大門先生と一緒ってどうなんだろう
1.ことの発端
看護師の友人と話をしていて、以前働いていた病院の医師たちについて、「医局に属せないタイプの医師ばかりで、腕はあっても曲者ばかりで対応が大変だ」と話したら、大学病院や公的病院経験のみの友人が、「すごい!大門先生みたい!」とキラキラした目で感動している様子だったのです。
彼女のときめきとは裏腹に私の心はなんだかモヤモヤしてしまいました。
そのモヤモヤについて考えてみました。
2.大門先生とは
大門先生とは、某ドラマの主人公で、凄腕フリーランスの女医です。テンポの良さや、小気味良さで何シリーズも続いています。彼女は、美人でスタイルがよく、医師としての腕は完璧で、権力に屈せず自分の筋を通す、かっこいい存在です。
しかし、組織のルールを無視した大胆な行為をする彼女は間違いなく組織の中では浮いています。彼女以外の医師たちは、組織のルールに則っているので、彼女の異質さが、視聴者のスカッと感を刺激し、面白く魅力的な人として表現されているのです。
3.医局所属の医師の特徴
医局は一般的に、大学やその附属病院での臨床、研究、教育、人事などを行うところです。つまり、同じ大学所属の医師として、教育を受けたり指導したり、研究をしたりできるということです。そこでの人脈や、修行が後のキャリアアップに繋がったりするようです。
関連施設を持っているところも多いので、医師が急性期病院で力不足であっても、関連施設に異動という形で職場を提供されたりするようです。
組織化されていて、医局内で教育がなされるので、治療方針や、手技などが統一されていますし、明確な上下関係、主従関係があります。
4.医局に属さない医師の特徴
上記のような人事システムはないので、各自が施設との直接契約になります。つまり、知識や技術にかかっているということです。
医局に属さない理由は、それぞれあると思いますが、一緒に働いた医師たちを見ると、組織に属するのが苦手そうという印象を持ちます。ですから、医局のような上下関係や、教授争いは無縁です。
医師たちは、自分の知識と技術を強みにして働いています。施設によっては、患者さんを集められなければ辞めさせられる可能性があり、そう意味での圧力は常に感じているのかなと思います。
また、人にもよりますが、私が見てきた医師たちは、指導する、されるという関係を好まない、または興味がない方が多かったです。
そのような医師ばかりでしたので、役職の上下関係はあってもそこまでの効力があるようには見えませんでした。
5.一緒に働く看護師目線での両者の違い
医局所属の医師たちは、組織化されていて、医局内で教育がなされるので、治療方針や、手技などが統一されていますし、明確な上下関係、主従関係があります。
医局に属していない医師たちは、教育を受けた背景が千差万別です。ですから、〇〇術であっても、方法や、使用物品、経過の見方など様々なことが異なりますし、基本的に変えません。
ですから、〇〇先生の時はこのやり方、△△先生の時はあっちのやり方と先生の人数分、やり方が増えていきます。
6.モヤモヤの正体
見てるだけならかっこいい大門先生と、現実的なやりとりをして、振り回され、もめることも多かった現場の医師…。
モヤッとした正体は、バーチャルとリアルの違いだと確信しました。
私が一緒に働いた医師たちは、総じて実力者たちで、同じ診療科を他施設で経験したスタッフたちがこぞって「ここの先生たちは本当にうまい」「術後の立ち上がりが違う…」と異口同音に言っていました。
そこだけを聞くと、確かに素晴らしくカッコいい医師たちと一緒に働いてたんだなぁ、という事実の一つに気づきす。友人が目を輝かせたのも間違いではないのかもしれません。
ただ現実は、小さな病院で看護部の立場が劇的に弱く、先生たちのキャラは強烈に濃かったので、いろんな意味で振り回される毎日でした。
大門先生はアウトロー的なところがあって、周りの医師やスタッフたちを振り回しています。もし、本当に大門先生と一緒に働いている看護師たちも「なんなの?」と思いながら指示に従っていると思います。その病院の医師たちがみんな大門先生みたいなキャラクターだったら、看護師たちは悲鳴を上げるし、ドラマとしてもヒッチャカメッチャカになって、作品として成り立たないですよね。
まとめ
医局に属する医師、属さない医師、それぞれに特徴があって、特に属してない医師は圧倒的に、腕に自信があり、それに基づいて働いているので、自己流を曲げない印象があります。
大門先生と、一緒に働いた医師たちが同じと言われモヤモヤした理由は、バーチャルとリアルの違いでした。