星と鳥と風~21 旅は道連れ


【旅は道連れ】

親愛なる旅のアテンドマンKが
この言葉を呪文のように唱えて
男3人の旅先は無事に確保されていった

元々Kの家は私の旅の帰り道でもあって、今回の音楽イベントの帰りに寄るつもりではあったが、(ここであったが3年目)急遽【旅は道連れツアー】が、前のめりで始まった。朝、イベントで出会った皆んなやパートナーと再会の約束を果たし、別れた後、我々はまず
とある高山にある神社にお参りをしに行った。行くまでに、車がおかしくなるんじゃないかと思うくらいの坂道を20分程登ってやっと辿り着いた神社は更に階段を中々な段数登った先にあった。
しかし我々の憧れの聖地である場所はもう目前だ。
足取り軽く男4人で向かった。(メンバーはKに星にIにT)

大事に手入れされているであろう、綺麗な庭園は、凛として、高山らしく涼しかった。憧れの聖地で、昨日までの灼熱の中遊んで熱った身体をゆっくり冷やしながら、各自お参りして、その後は皆でのチルタイムをしばし楽しんだ。しかし、K以外お会いする事すら初めてなI君とT君とも、シャイな私が、自然体でいられた事と、数ある神社の中で、まさにここに一緒に辿り着いたご縁はきっと何かを起こすと信じて止まない。

帰りは帰りで、急で、クネクネした峠で、ブレーキがもはや効かないレベルの坂道を、軽く肝っ玉を冷やしながら下りた。そして

腹が減った。

やっぱりここでもナイスなアテンドマンKは、とある道の駅に入って、我々は美味しいアナゴ丼にありつけた。
ここでT君が「やば、フェリーに間に合わないから帰るわ!」と、【炙り穴子丼】を半分残して「帰らないと家のギャル達(娘)」がうるさいからと、そそくさと帰って行った。

【アディオス•アミーゴ】
美味しいタコスを有難う

それからはI君の車を先頭に、私は後を付いて行かせてもらったのだが、当初の目的地から大きく外れた山あいに車はどんどん進んで行き、我々は軽くニ山ほど超えた先にある廃キャンプ場に辿り着いた。
Kは「ごめんごめん!寄り道したくなった」と言っていた。確かに、遠回りにはなったが、私にとっては有難いアテンドだった。何故なら当初、イベントの帰りは完全に1人、落ち着けて、2.3日車中泊で滞在して、自然の中でゆっくり何かを書きたかったからだ。
絶好の機会が訪れたと思った矢先、前を見るとそこには【クマ注意】の看板があった。普段、クマという文字をあまり見慣れない九州出身の私は、少し怖かったのと、普段遊ばせてもらっている山に熊がいない事の有り難みを噛み締めながらキャンプ場奥地へ歩いた。
キャンプ場は思いの外広く、500人規模のフェスができるほどの広さがあった。そして、更にKとI君の後を着いていくと、その先には綺麗な源流が流れていた。
そこには岩魚も泳いでいた。岩魚は私の県ではほぼいないので、釣り人の私は人知れず興奮していた事など2人は知る由もないだろう。

I君はその間、石を積んでアートを楽しんでいた。
それどうなってるの?と聞きたくなる絶妙なバランスと、美しい石のチョイス。I君も絶妙な感覚の持ち主だと感じていた。

もう何かが限界なKは、洋服を脱ぎ捨てて、そそくさと川の中へダイブし、熱くなった体を冷やした。

「星は今日はここでキャンプだな」と唐突に川から上がってきたKに言われて、【それも悪くない】と思っていた。言葉も綴りたいし。それに求めていた条件が全て揃っている。
私はしばし悩んだ。
しばし悩んでいる私にKはもう一つ
「ここにいたら絶対何者かに話しかけられるよね」と言ってきて、急に夜を想像して怖くなったそれでその日は泊まることを諦めた。
(ちゃんとチキンだ)

でも、後々諦めて良かったと思える旅になったのだから、本当は不正解など実際自分が浸っている勝手な自分のイメージにすぎないのかも。
(Kからは散々怖い想像を掻き立てられたが)

その後、温泉に振られた男3人は足湯に浸かって
I君の営むお店にお邪魔する事になった。
I君は私が出演したイベントでも【レコード屋さん】で出店していたのだが、お店には更に、古着やアンティークな物、I君のセンスの光る商品達が並んでいた。

それからI君のご好意で、我々は旨いノンアルコールビールで乾杯して(I君、何から何まで本当にありがとう)私はレコードを見させてもらった。
沢山欲しいレコードはあったけど、一枚だけゲットさせてもらった。旅先でのレコードは記憶に残る。この曲を聴く度に、この愉快な【旅】を思い出すに違いない。

散々ゆっくりさせてもらった後はKの家に着地した。
大盛りで味わい深い、Kの作る【たらこパスタ】を頬張ったら、急に眠くなった。
I君ともここで解散して、私はKの家で休ませてもらった。

ここは来るたびに本当に心がほっとする。やはり私の大事な帰る場所であり、大事な【家族】なのだと心から想った。

何故か寝る間際、【彼女】の歌が私の頭の中で鳴っていた。

惜しみなく差し出され
またとなく溢れ
とめどなく瞬いて
この手を差し伸ばす
訳もなくありふれて
君と望めば
音もなく訪れる
風も色をもつ

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