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『フリーバッグ』、見た?めっちゃすごくない?

アマプラの『フリーバッグ』はサブカルクソ女を経た大人の女に絶対見て欲しい

もともとは主演のフィービー・ウォーラー=ブリッジの一人芝居から始まって、アマゾンプライムオリジナルのドラマコンテンツになった『フリーバッグ』、配信開始からわりと大人の女性には話題になってたので見た人も多いかもしれない。

もともと90年代をサブカル漬けで過ごした、サブカルクソ女なアラフォーの私にはぶっささってしまった。
おしゃれでシニカルで胸糞悪くて、超面白いドラマすぎる。

主人公の「フリーバッグ」には名前がない

タイトルの「フリーバッグ」という言葉は主人公の名称でもある。
英語では、みすぼらしい人とか不潔な人っていう意味らしいのだけど、主人公は見た目はともかく、中身はそんな風な印象のアラサー女性で、ロンドンでカフェを経営している。
男にだらしなくて性欲が強く、けっこうすぐ嫌な事をいうすごくおしゃれなフリーバッグは、作中で一度も誰からも名前を呼ばれない。
だから本当に周囲に「フリーバッグ」と呼ばれているのかも、わからないままだ。
ただずっと「フリーバッグ」のような女性として存在して、「フリーバッグ」として振る舞う。

「フリーバッグ」にはだらしない男関係で関わりがあるたくさんの男と、亡くなった親友と、なんかちょっと弱くて頼りない父親とその再婚相手のアーティストのゴッドマザーがいて、ゴッドマザーはアーティストらしく周囲に理解を求めるめんどうくさい人。
姉は堅物でおもしろみがなく、突発的にとっぴな事をするヒステリックで付き合いにくそうなつまらない女で、要するに全体的に「フリーバッグ」含め登場人物がどうしようもない。

なんとか日常生活を営めているけど、不安定であやうくて気持ち悪い感じの人間関係と人柄がすごく印象に残って、胸糞悪い展開でもぐいぐい見てしまう。

「フリーバッグ」は物理的にこっちに話しかけてくるメタドラマ

「フリーバッグ」のドラマの構成でおもしろいなと思うところは、モノローグのような「フリーバッグ」の脳内のセリフをカメラ目線でこちらに語りかけてくるところだ。
そのモノローグのメタ手法は「フリーバッグ」しか使わないけれど、「フリーバッグ」は見ているこちらに話しかけて時にはセックスの内容や感想も含めて巻き込んでくる。
そうだね、うわあなんでそんな事したの…というこちらの思いに、「フリーバッグ」はいいタイミングでモノローグとして語りかけてくる。

ただこのモノローグ、最後にはものすごいスパイスとどんでん返しでガッと作品を引き締める役割をするので絶対に注目していてほしい。

「フリーバッグ」はなにも成し遂げない

私たちは(今私はアラフォー女なので勝手に私たちはそのくらいの年齢だとして話を続ける)、結局「フリーバッグ」に惹かれてしまう。

仕事も安定しない、真面目に働かない、ごまかす、変な男に手を出して嫌な目にあう、家族ともうまくいかない、薄っぺらい嘘をつく。
シーズン2まである作品を通して、「フリーバッグ」はだいたい上記のような事しかしない。

私が好きなエピソードは、ヒステリックな姉と瞑想セミナーに行く話。
もう、何もかもうまくいかない。
堅物の姉はつまらないし、頑なだしいじっぱりだし、姉妹でなければ付き合わないタイプだろう人と宿泊しながら瞑想をする。
「結果的に瞑想してた…?」って感じなのだけど、まあ何もかもがひどい。
でもその何もかもがうまく行ってない、何もかもが空回りなところって、現実社会を生きている私たちもそんなもん。
多分みんな、何もうまくいってない。

私も親として社会人として、その場その場でうまくやり過ごしている気がしてるけど、まあなにも成し遂げていないに近い。
「フリ」をして大人の社会に紛れ込んで、なんとかバレたりバレなかったりして今日までやってきている。

「フリーバッグ」は、その象徴として始終ダメでなにもできない姿を見せてくる。
ある人のお葬式の時に「あなた今日すごくきれいね」とみんなに驚かれる「フリーバッグ」は、自分でもなんでこんな日に自分はこんなにきれいなの?と混乱したりする。
それが妙にリアルだった。
なんでこんな日に、私はこんなにきれいなの?
まあだいたい、大人なんてそんな風に生きてるよね…とすごくリアリティのあるエピソードとして重く受け止めてしまった。

「フリーバッグ」は私たちなのか?

私はSATCのキャリー他、あのメンバーに自己投影していたような気持ちでは『フリーバッグ』を見られなかった。
私は「フリーバッグ」のようにはなりたくない。
ただ、ああいう一面があってなお大人ヅラをしているよなっていう事を改めて思い知って、情けないような気持ちになって引き込まれてしまった。

もしかしたら『フリーバッグ』の、独特の間やモノローグで語りかけてくるメタ手法は、いわゆる男性的な男性にはあまり響かないかもしれないと思う。
ただ、大人の女であれば痛いところをつかれる場面は多分にある。

ぜひ一気見してほしい。
「フリーバッグ」がきれいなのも、だらしないのも、親友の死も何もかもがどうしようもない。

あんな風になりたくないけど、夢中になる。
自己投影しなくても見ていられる、女性としてはドメスティックな大人の女の日記みたいなドラマだった。
困ってしまうくらい面白く、私は4回くらいシーズン2まで見直している。
『フリーバッグ』、面白いにもほどがある。

なぜか埋め込みがうまくいかなかったけど、『フリーバッグ』のリンクです↓

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B089XRDJ7Z/ref=atv_dp_season_select_s1



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