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【漫画】福本伸行「無頼伝説 涯」~貧乏時代に唯一誇りに思っていたこと

私は25歳まで深夜のコンビニでアルバイトをして生計をたて、派遣社員を経て、28歳で上場企業の正社員になりました。バイト時代は資格の勉強と並行していたこともあり、シフトは抑え気味。かなりお金に困っていました。今回はそんな時代に勇気づけられた漫画について書きたいと思います。

① 貧乏なのに一人暮らしをしていた

私は28歳で正社員になるまで、派遣社員やアルバイトとして働いており、かなりお金に困ってました。バイト時代の月給は毎月14万円程度。初めての一人暮らしで知識がなく、家賃が高騰する3月に引っ越してしまった影響で、6.8万円と高めの家賃が生活を圧迫。食生活はインスタントラーメンと、半額シールが貼られた弁当に頼っていました。

なぜ一人暮らしをしていたんだ?実家で生活すればいいんじゃないか?

と疑問に思う人もいるでしょう。それは至極ごもっともです。

しかも私の場合、実家と自宅が徒歩で往来できるほど近くにありました。
それなのに一人暮らしを選択していたのです。
金銭的な面だけでみれば、ただの阿呆です。

ではなぜ一人暮らしをしていたか。

それはただ世間の空気を気にしただけでした。
なんとなく「25歳にもなって一人暮らしをしていないのは恥ずかしいよな」と思い、勢いで実家を出たのです。十分な生活基盤があったわけではない。かといって、確固たるポリシーに基づいた動機でもない。そんな感じなので、困窮すると「ああ、実家暮らしならこんな目には遭わなかったなぁ」と思うこともしばしばでした。

よく生活困窮者でも「恥ずかしくて生活保護を申請しない」って言いますよね。私はその気持ちがわかります。人間、意外と困っても意地を張るものです。

② 福本漫画との出会い

本稿の表紙にもなっている「無頼伝説 涯」は福本伸行という人が書いた漫画で、2000年ごろに週刊少年マガジンで連載されていました。福本伸行というと、映画にもなった「カイジ」や「アカギ」が有名ですね。私はそれらの漫画も好きです。
後々知ったことなのですが、「無頼伝説 涯」はあまり人気がなくてマガジンでは打ち切りになったのだとか。ちょっとブラックな面もあるので、読者層とマッチしなかったのかな・・・

当時働いていた深夜のコンビニバイトは、昼夜が逆転して体力的に辛かったです。また、ガラのよくない地元で働いていたため、客とのトラブルも多く、精神的にもまいっていました。

ただ、唯一?働くメリットはこれです。

「本がタダで読める」


コンビニには必ず本棚がありますよね。店員は休憩時間にそれが読めるのです。当然、店は公式的にそれを認めてはいませんが、深夜はアルバイト店員しかいない。バレやしません。

当時から人気だったワンピースやナルトは読みませんでした。
いかに人気でもコンビニでは”65巻”とか、最新巻しかありません。
前の話がわからんので、手に取ろうとも思わないのです。

よく読んでいたのは1話完結の「仕掛け人 藤枝梅安」や「首切り 朝」。
コンビニでバイトしていなければ「誰が買うねん」という漫画たち。
そういえば、店員としてこれらの漫画を売った記憶がないぞ。

当時から「President」や「日経ビジネス」等のビジネス誌も読んでました。
人生の逆転を狙っていましたからね。
雑誌で、ユニクロの柳井社長が「今後の若者は(国際競争に晒され)貧乏でも仕方がない」みたいなことを言っていて、一人でキレていた記憶があります。

あとは「愛蔵版」と呼ばれる、安くなって”最初から”発刊される本、これもよく読みました。
「無頼伝説 涯」との出会いも愛蔵版でした。
福本漫画を読んだのはそれが初めてだったと思います。


③「無頼伝説 涯」にみる”自由”

「無頼伝説 涯」は、中学生の主人公「涯」が冤罪で収容施設「人間学園」に入れられ、そこから脱出を試みるお話です。漫画の見どころは、収容者(学生)を電流棒でいたぶったり、低い天井の部屋に閉じ込めたり、という「人間学園」の”ヤバさ”と、そこから脱出するための、アイデアやアクションでしょう。

でも、私が感銘を受けて勇気づけられたのは、冒頭も冒頭、第1話でした。

涯は両親がいたいため、幼いころから養護施設で育てられてきました。
中学校に通うようになると、親への愚痴を言っている同級生をみて辟易とします。

養護をうけておきながら、なにを生意気なことを言っているんだ

自立してないじゃないか と。

涯はそんな環境が嫌で養護施設から飛び出して家出をします。
そして、偶然出会ったヤクザから”場所とり”として生活費をもらいながら、空き家で生活することになるのです。
貧しいながら、ようやく自分の家を手に入れたのでした。

そこで生活は貧乏でしたが、涯は満足していました。
そこには「自由」があったからです。

涯は生活を通して「自由」とは”なんでもしていい”ということではなく、
”自らに由る”すなわち自立することなんだ、と悟ります。

そして、自由な状態は制限があるが、それでも無限の可能性があるということに気づくのです。

実は、福本漫画の根底には「自由」や「自立」というのが大切なものとして描かれています。「天 天和通りの快男児」では、アカギが他人に迷惑をかけたくないという理由で自ら死を選びます。また、「カイジ」でも、主人公が勝負の判断を他人に委ねたことを後悔するくだりがあります。


④ 俺は自由なんだ・・・!

私は当時、非常に貧しい思いをしていましたが、意地で両親には頼りませんでした。また、酒もギャンブルもやらない、ヌルっと貧乏だったので、借金もしていませんでした。
それ自体当たり前というか、大層なことはないんですが、
この「自由」への考えを目にしたとき、大変に勇気付けられたことを覚えています。

俺は自立しているんだ。胸を張っていいじゃないか、と。

生活には困窮していましたが、それでも金を捻出していたものがあります。
資格を取得するための本やノート、受験料、勉強場所のためのマックのコーヒー。エレファントカシマシのCDレンタル。
そして、福本漫画。

コンビニで福本漫画に出会ってから、わずかに余った金を持って
ブックオフで「アカギ」や「銀と金」を買いました。すっかりハマってしまったのです。

さて、今回は漫画について書きました。人間、頑張るときは自分を勇気づける何かがありますよね。多分、福本漫画に”勇気づけられる”なんて珍しいので、何の参考にもならないでしょうが、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。

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