風をよむ
風の時代。がふと頭に浮かんだ。
風は自由そのもの。
風をよむ、風を掴む、風に乗る、風を起こす、
風になる。
そんなことを考えていたら、空に指をたてて風をよんでいるシーンが浮かんだ。
ボンヤリとアニメだか映画だか・・・何だっけ?ジブリかな?アレ?
と、自分の人差し指を、頭の上高く立ててみた。
人差し指を見て思い出したのは、
風の時代ではなく、就職氷河期時代
に入社してきた、二期下の女の子。
もう30年も前の出来事。
いわゆる大企業だったが、
バブルが弾け、不況が押し寄せていたその年は、一般職(事務職)の採用は確か5人。
どの会社も採用枠が激減した年。
相当光るものか、コネが無いと就職は難しく
そういう意味で、強者(ツワモノ)の1人だった。
彼女は、笑顔が素敵な飾らない美人で、
我が道をズンズン進む、話題の新人だった。
総務に配属され、
来客にお茶を出すことも仕事の一つ。
ある日、彼女が淹れるお茶に苦言が入る
『いくら何でもぬる過ぎる・・・』
応接室にお通しする来客には、高級茶葉を使う。熱湯より少しぬるめの温度でお茶を淹れるように指導していたそうで。
苦言が入った次のお茶出し当番のとき
先輩が念のため確認
『温度、大丈夫だよね?』
すると彼女は
おもむろに自分の人差し指を湯呑みに突っ込み
にっこり微笑んで
『大丈夫です』
と言って応接室に消えていったそうな。
彼女は空気は読んではいなかった。
だけど最強な女の子だった。
時代の風は掴んでいた。