ランダム戦で考えている事 vol.2

はじめに

この記事は全5回のにわたってランダム戦の考え方を説明しています。今回はvol.2「割りに合う撃ち合いをしよう」になります。前回の記事をご覧になっていない方は、先にそちらから読むことをお勧めします。

想像以上に多くの方に読んでいただいて嬉しいです。


vol.1の振り返り

  • ダメージと勝率の両立
    「ダメージを稼ぐこと」と「勝率」は反比例の関係にあると一般的に言われていますが、考え方次第ではそれらを両立させることが可能です。

  • 車輌同士の相性を考えよう
    車両の装甲配置・単発火力・機動力などを、マップ構造や有利なポジションの知識と組み合わせ、どのくらい有利に撃ち合いができるかを戦闘開始前に想定し、試合の方針を決めましょう。

  • 試合中に守るべき2つのルール
    1. 不利な撃ち合いは絶対にしない
    2.「自分はこれがしたい」という先入観で方針を決めない

2-1.割りに合う撃ち合いをしよう

前回は大局的な方針の決め方と、その具体例を説明しました。しかし、ダメージ量と勝率を同時に伸ばすには、大局的判断だけでなく細かな撃ち合いの技術も必要です。適切な大局的判断は撃ち合いを有利にし、逆に高い撃ち合いの技術は大局的判断の選択肢を増やしてくれます。つまり、どちらか一方だけではなく、両方の力を高めることがポイントとなります。

こうした「判断力 × 撃ち合い技術」の組み合わせが、このゲームを難しく、同時に奥深いものにしている要因でしょう。本記事では、これら二つの要素が相互に作用する考え方を導入していきます。

"割りに合う"の意味 と HP管理

 前回の記事から何度か登場した「割りに合う」という言葉、気になっていた方もいるかもしれません。ここでは、「自分のHPの消耗量 < 相手のHPの消耗量が成立している状況」と定義します。特に断りがない限り、本記事ではこの意味合いで使います。

そして、撃ち合いの中でどれだけHPを使ってよいかを決めるのが、前回扱った「試合の方針」です。例として、自分と敵の車輌相性を考えたうえで「この試合は終盤まで慎重に行く」「相手が不利なポジションを取ったタイミングで撃ち合う」などの判断をしていましたが、それに加え「HPをいつ、どれくらい使うか」もセットで考えていたことに気づいたでしょうか。

要するに

  • “割りに合う”撃ち合いができる状況になったら、どの程度HPを消費していいかを試合の方針に応じて調整する。

  • たとえ“割りに合う”状況であっても、事前に決めていたHP消費の許容値を超える撃ち合いは控える。

後者については「どうしてダメなのか?」と疑問に思うかもしれません。次項で詳しく解説します。

"割りに合う"の別の解釈

 「割りに合う」の捉え方としては、「自分が与えるダメージ > 自分が受けるダメージ」と考える人もいるでしょう。しかし本記事ではあえて「自分のHPの消耗量 < 相手のHPの消耗量」という視点を採用しています。

理由は、このゲームはHPが1でも残っていればダメージを与える事が出来るため、HPをできるだけ多く温存できるほど長く試合に貢献できるからです。仮に「与ダメはある程度稼げたけど、自分のHPが少なくてリスクを取れない」場合、後々の追加ダメージや試合への影響力を失ってしまいます。

したがって、「自分のHP消耗量 < 相手のHP消耗量」を実現しつつ、HPをうまく温存することが、結果的にダメージと勝率の両面で良い数字を出せるのです。

割りに合わない状況

 一番シンプルな状況を考えてみましょう。画像ではE3と60TPしか存在しませんが、残りの28枚はあなたの印象にある配置で構いません。

60TPで8ラインの土砂を使って対面のE3と撃ち合っている状況です。E3は大口径かつ高貫通力を持つ車輌です。土砂を使ってハルダウンをしているE3に対しては、60TPの貫通力ではダメージを与える事が出来ません。

E3のハルダウンに勝負を挑む60TP

このような極端な状況ならば、恐らく殆どのプレイヤーがE3と撃ち合いをしない選択肢を取るでしょう。

割りに合わない状況でとる行動は、別の戦線に移動するもしくは、その場で何もしないで留まるの2通りの選択肢があるでしょう。前者の選択は、味方が既に敵と撃ち合いをしているか、負けていて味方が敗走している状況で判断することが多いです。しかし、試合の中でそのような場面が起こることの方が少なく、結果として後者の選択に落ち着く事が多いです。

2-2.割りに合わない状況が続くと…

 相手に分がある状況では、相手は当然何かしらの行動をしようとします。たとえば「有利なうちに詰め切ろう」「ここで詰めたらポジションを取れる」などが一般的な思考です。今回の例なら、「8ラインで顔を出してくる敵を味方のE3が抑えているから、7ラインを使って敵の目前まで行って撃ち合おう」と考えるでしょう。

しかし同時に、「敵の60TPから750ポイントのダメージを受けるリスクもあるな」とも考えます。その結果、「今は有利だし、そこまでしてダメージをもらうのは割に合わない」と判断し、膠着状態に陥るわけです。
その間に、ほかの味方がいる戦線が崩壊すると、マップ占有率に差が生じて自分のポジションも維持が困難になってしまいます。結果としてダメージを稼げず、試合にも負ける展開は高ティア帯でよく見られるパターンです。

割りに合う状況を作り出すには?

 相手が有利な状態ということは、「味方(自分を含む)が何かしない限り、この不利な状況は覆せない」と捉えられます。ここで相手の最適行動は、「有利な状態では何もせず、相手(こちら)が動くのを待つ」ということになるでしょう。

しかし、もし相手にその最善行動を取らせず、自分にとって有利に撃ち合えるポジションへ誘い込むことができれば、盤面を盛り返すチャンスが生まれます。では、その状況を作るにはどうすればよいのでしょうか。まずは「あなたが前線を詰める/詰めない」と判断する要素から考えてみましょう。

あなたが詰めることが出来ると判断する要素

試合中に「もう一つ前のポジションまで詰めよう」と思うタイミングは、ざっくり次の2つに分けられます。

  1. 対面の車輌が発砲した

    • この瞬間は相手がリロード中で、被弾リスクが下がるから詰めやすい

  2. 別のポジション(あるいは戦線)で相手の車輛がスポットされ、こちら側にはいないと分かった

    • その結果、「今なら枚数的に有利(または安全)だから詰められそう」と判断

要するに、「自分が安全に詰められる」と認識できたとき、プレイヤーは前線の位置を変えやすいのです。

この思考は相手にも当てはまります。つまり、こちらの立ち回り次第で「相手が安全だと勘違いし、詰めてくる状況」を作ることができるかもしれません。そうなれば、割りに合う撃ち合いに持ち込む展開が期待できます。

相手に安全だと思い込ませる

くどいようですが、このゲームで敵味方の動きを完全に予測するのは不可能です。そういったランダム性こそが、異なる状況を作り出し、さまざまな戦術を生み出しているとも言えます。

ただし、相手の行動は一切確定していない一方で、「先の展開を予測するための情報」は常に見えているとも言えます。その主な情報源が「車輛編成」と「ミニマップ」です。このゲームの面白いところは、“相手に見せる情報”をコントロールできる点にあります。具体的には、マップ上で自分の存在をあえてスポットさせたり、逆に隠したりできるわけです。

スポットされている状態は、相手は最も確信度の高い情報を得られます。逆に、スポットが消えて時間が経つほど、相手にとってはその情報の確信度は下がっていき、行動を取りづらくなります。
つまり、「相手に安全だと認識させる」ためには、「相手に与えるスポット情報を意図的にコントロールする」ことが基本となるのです。(*1)この点については、次の具体例で詳しく見ていきましょう。

具体例でどの様に情報をコントロールするのかを見ていきましょう。

*1 LTはまた別です。

具体例

マップ:Pilsen 1~3ラインの一部分
状況: 敵味方3枚ずつ存在する単純なシーンを想定した配置

 この配置で接敵したとしましょう。すでにお互いの配置は把握できている状況です。もし自分の対面がIS-7やE3といった硬い車両であれば、こちらはダメージを与えられず、また詰めることも難しい。こうした膠着状態で、相手に「安全に詰められる」と思い込ませることは可能でしょうか。

①初期の配置

はじめは、敵も自分も対面しているポジションにいます。互いに「相手がいる」と分かっているため、安易には動きづらい状態です。

①初期の配置

②一度1ラインへ移動し、あえてバレる

 次に、①の位置から1ライン方向へ自分が移動し、わざと相手に見られる(スポットされる)ようにします。ここで、相手側の視点を想像してみてください。

②あえて一回1ラインに移動する

③ 相手が詰めてくる段階でスポットを消す

③の状態では、敵からしたら「さっきまで対面で睨みを利かせてきた相手(自分)が移動したから、安全に敵の目前まで詰めることが出来る。」と判断することが出来ます。この相手が動いてきたタイミングで自分のスポットを消します。次の画像に行きます。

③この段階でスポットを消す

④ 相手が味方を撃ちに来たところを攻撃する

④の状態では、相手が目前の味方を撃ちにきたタイミングで、自分は敵の側面を撃ち、ダメージを与えている状況です。ポイントは、自分が撃ちに行くまでは、相手が認識している配置が③のままである。ということです。

④味方を撃ちに来た敵の側面に1発入れる

相手からしたら不意打ちでしょう。重戦車同士の撃ち合いでは、弱点を狙うエイムに意識が集中しやすく、横から不意にピークされると対応が間に合わないのです。

自分が移動してスポットされることで、相手は「この配置は弱いから詰められる」と認識させることが出来ます。自分が強いポジションや有利に戦えるポジションを取れたからといって、相手からしたらそんな分の悪い戦いをしようとは思いません。あえて配置の隙を作ることで、相手に行動を促す事が出来ます。この考えはダメージと勝率を出す上で非常に重要になります。

味方を活かそう

 相手に与えるスポット情報を意図的にコントロールできるようになると、味方の配置を最大限に活かす立ち回りが可能になります。

たとえば、

  • 自分の周囲の味方がどの位置にいるか

  • その味方がバレているかどうか

  • 味方を見つけている敵の位置や視線(射線)

これらを正確に把握することが、いわゆる「ミニマップを見る」という行為です。同時に、相手のミニマップの見え方を想像し、「相手はいま、この状況をどう判断しているのか」を推測するのが“予測”の段階になります。

こうした一連の流れを意識できれば、味方に見捨てられる状況が減り、逆に味方をうまく活かして立ち回ることができるようになります。たとえ自分で味方の配置そのものをコントロールできなくても、相手への情報の与え方を操作することで、有利な状況を作り出すことは可能です。

抽象的な話に聞こえるかもしれませんが…

実際、味方がどこへ行くかを直接制御する術はありません。そこで、自分が及ぼせる範囲内で「どうやって相手に情報を与え、どうやって相手に勘違いをさせるか」を考えることで、自分に有利な状況を生み出そうというわけです。

この発想があれば、ゲーム中の選択肢が格段に広がり、より楽しくゲームをプレイ出来ると思います。

2-3.知識と経験値が撃ち合いを制する

 この記事の最終パートです。

 戦車(WOT)の弱点と言えば、車体下部、キューポラ、天板が一般的です。装甲配置だけでなく、自分の戦車の口径や貫通力によっては、強制貫通そこ抜けるの!?みたいなものが有ります。その知識が有ればあるほど、相手との駆け引きや立ち回りをより簡単に行うことが出来る様になります。

強制貫通を活用する例:60TP vs 60TP

たとえば、60TP同士で対峙している場面を想像してください。多くのプレイヤーはキューポラを狙うことに注力しますが、実は60TPの砲塔天板は、60TPのAP弾で強制貫通させることができます。キューポラよりも狙いやすく、貫通の確率がぐっと高まるわけです。

  1. 砲塔天板をAPで強制貫通

    • これに驚いた相手は天板を隠そうとします。

  2. 砲身の付け根や操縦席をHEATで狙う

    • 天板を隠した結果、別の弱点が露出するという連鎖が起こります。

もしこの知識を持たない場合、キューポラ同士の「抜きあい」に終始し、不毛な撃ち合いになりがちです。しかし、天板貫通を知っていれば相手の動きを変えさせられます。その結果、タレットリングや操縦席など、さらに抜きやすい部分を露出させることが可能になるのです。

60TPのAPで砲塔天板を抜いてる画像

これに驚いた敵は、次に砲塔天板を抜かれない様に隠す動きをします。しかし、今度は砲身の付け根か操縦席をHEATで抜ける様になります。

砲身の付け根を抜いている。ただ確率的には操縦席を抜いた方が良い。

スパコンの砲塔天板も同様に60TPのAPで強制貫通です。

バグでレティクルは赤だが実は強制貫通。

経験も大事

ただし、実際の撃ち合いでは相手がどれだけ露出しているか、どの角度で当たるかなど、知識だけでは把握しきれない要素も多々あります。結局は、実際にプレイして経験を積むことで、どこまで撃ち合えるかの感覚を養うしかありません

どこまで撃ち合えるかの技術を向上させるには、教えてもらうか動画を見るしかない

 あなたが初めて乗る戦車で「どのポジションならどう撃ち合えるか」を最初から最大限に引き出すのは至難の業です。数万戦という長いプレイ時間を重ね、ようやく体感的にわかってくるかどうか、といったレベルでしょう。

しかし、そこで上手いプレイヤーの配信や動画を見ると、普段あなたが使っているのと同じポジションでも、彼らは2倍近いダメージを稼いでいることがあります。これは偶然ではなく、どのマップでも似たような差が生まれがちです。

細かい撃ち合いの駆け引きは、立ち回り研究よりも習得しやすい

結局、センスがあって経験豊富なプレイヤーの動画を見たり、アドバイスを受けたりするのが、撃ち合いのコツを学ぶ最速ルートです。立ち回りを深く研究するよりも、視点移動や細かな駆け引きのほうが習得しやすく、短期間で効果が表れる場合も多いのです。

もし「立ち回りや考え方はそこそこ理解しているのに、なかなか戦績が伸びない…」と感じるなら、細部の撃ち合いテクニックや視点移動を見直してみるとよいでしょう。

あとがき

 今回の記事でまだ2回目の投稿ですが、ここまで読んでくださった方は、上手い配信者のプレイを見て新たなに気づける部分があるのではないでしょうか。実際、「彼らの立ち回りや撃ち合いの意図が前よりも理解しやすくなった」と感じていただけたならば、本記事の目的は十分に達成できたと思います。

前回の記事と比べるとより難しく抽象的な説明が多くなってしましました。「分かりやすく親切に」を目標にはしていますが、5回程度書き直してもどこかから感じる小難しさは消えませんでした。おそらく想定している読者層は、記事を読んだだけでは殆ど内容を理解できないと思います。ランダム戦で経験を積む過程で言ってることが理解してもらえれば良いと思います。

次回は前線の押し引きについてとマップ占有率について書こうかなと思います。ちゃんと投稿しますが、時間が掛かりそう;;

協力してくれたBuunioとAiryuに感謝。メチャクチャな接続詞の使い方を修正してくれたChatGPTにも感謝。

最後に何回でも書きますが、プレイ方法は人それぞれです。楽しければそれでヨシ

ありがとうございます。

むらさきさんありがとうございます。

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