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感情システム2
私たちはプラス、マイナスの感覚や感情の対比によって考え行動している。
仕事をするのも勉強するのも嫌だし苦痛。でも上司や先生に怒られたり、家族に心配掛けたくないから仕事をし、勉強をする。人によっては仕事や勉強をすることが自己実現につながっているのかもしれないし、お金を稼いで大きな家に住みたい、余裕のある暮らしがしたいと思っているのかもしれない。
それは結局のところ、上司や先生に怒られることが自身にとってマイナスな感覚、感情を感じることになるから。自己実現すること、大きな家に住むこと、余裕のある暮らしをすることがプラスの感覚、感情を感じることになるから。
頑張って仕事をすれば、勉強をすれば怒られないし、自己実現や大きな家、余裕のある暮らしにつながるということを経験的に知っている。それは感覚や感情を伴う記憶として保存されており、無意識的にそうした記憶が想起される。
逆にいえば、私たちがマイナスの感覚や感情を感じることがなければ、プラスの感覚や感情を無限に引き出すことができれば、私たちは何もしないはずである。
嫌な記憶が思い出されるのなら、そうした記憶をすべて消し去ってしまえばいい。痛みや苦痛、悲しい思いをするのなら、そうしたものを意識的に取り除いてしまえばいい。反対に毎日がつまらないのなら、無限に幸福を、嬉しさや楽しさを引き出してしまえばいい。
言うまでもなく、そんなことは現実的には不可能である。嫌な記憶は消せないし、苦痛を瞬時に取り除くことはできない。ひたすらに幸福や快楽を引き出すことなどできない。
痛みや悲しさのように、私たちにとってはない方がいいはずのものを脳はつくり出しているし、一方で嬉しさや楽しさのように私たちが欲するものもつくり出している。
そうした感情システムによって動機付けすることで生存競争を勝ち抜こうとしている。私たち意識はその存在理由から自由を制限されており、その自由は感情システムが成り立つ範囲でしか許されていない。
私たちが全知全能であるなら不幸を消し去り幸福を引き出すことができてしまい、あらゆる行動に対する動機付けがなくなる。幸せな夢の中で生きられるのなら、私たちは夢の中で暮らしてしまう。