能登地震から見る液状化の被害
1月1日の能登半島地震で、震源から約100km離れた内灘町が液状化の影響で道路がめくれ上がったり電柱が傾いたり酷い状況です。
どうやら、液状化に伴い、液状化で地盤が緩んだ低い土地に向かって土が流れ込む現象が起きていたようです。
地震後に内灘町で行われた建物の応急危険度判定では、1679棟中1/4に当たる430棟余りが危険(赤)ということです。建物が一度傾いてしまうと、直すのに数100万円、下手すれば1000万円超えることもあり、建物を直すことが金銭的に難しくなってしまいます。
今回は、この液状化の事前にできる対策について解説します。
※筆者は、建築に関する業務を25年ほど行っている構造設計一級建築士です。
【目次】
はじめに
(1)液状化とは
(2)液状化しやすい土地か調べる
(3)液状化しやすい地盤とは
(4)液状化対策
(5)被害が生じた場合の修復
はじめに
現状、建築物の液状化に対する安全性の検討を行わなければならないという法令上の明確な規定はありません。
ある程度の規模の建築物では、地盤調査を行った際に液状化の可能性がある地盤であれば、液状化になった場合の建物の安全性について検討して設計するのが通常ですが、一戸建ての住宅程度の小規模建築物では、液状化の検討がされていないケースがかなりの割合であるのではないかと想定されます。
また内灘町の様に、液状化で地盤が緩んだ低い土地に向かって土が流れ込む現象が起きた場合、現状の液状化対策で完全に対策できるのか疑問も問題も残ります。
しかし、被害を抑えるために、まず、液状化やその対策について知ることは重要だと思い解説することにしました。
(1)液状化とは
液状化とは、地震が発生して地盤が強い衝撃を受けると、互いに支えあっていた土の粒子がバラバラになり、地盤全体がドロドロの液体のような状態になる現象です。
液状化が発生すると、地盤から水が噴き出したり、また、それまで安定していた地盤が急に柔らかくなるため、その上に立っていた建物が沈んだり(傾いたり)、地中に埋まっていたマンホールや埋設管が浮かんできたり、地面全体が低い方へ流れ出すといった現象が発生します。
(2)液状化しやすい土地か調べる
例えば、液状化の被害が大きかった内灘町のHPでは、液状化マップが公開されています。
このようにハザードマップ等で、液状化の危険性について多くの自治体で公開されているので、事前に調べておくことが大切です。
内灘町の液状化マップを見ると、赤色の区域が液状化しやすさ「大」、黄色が「中」、青が「小」で、液状化しやすさ「大」の区域がかなりの範囲を占め、もともと液状化しやすい地盤の区域が多かったことが分かります。
(3)液状化しやすい地盤とは
①砂地盤である こと(地下 2~3mの浅い位置に砂の層が存在すること)
②砂の層が締 めかたまっていない(N値が低い)
③砂の層が地下水で満たされている
(4)液状化対策
①建物を建てる時に地盤改良をする
(深層混合処理工法、浅層混合処理工法、注入工法)
②建物周囲の地盤を囲いこむ
(格子状地盤改良工法、壁状締切工法)
③杭基礎とする
基礎と一体化した杭(小規模建築物なら小口径鋼管杭など)で、液状化層以深の地盤で支持させる。(液状化が起こっても建物に被害がないようにあらかじめ検討する)
④べた基礎とする
不同沈下といって、建物を支えている地盤が、部分的に沈下してしまうと、建物が傾いてしまいます。その傾きを防いだり軽減できるのが建物直下の全面に鉄筋コンクリートの基礎を配置するベタ基礎です。つまり、液状化が起こった時に傾きにくくなるという対策です。
完全に液状化を防ぐためには、液状化層の地盤を砕石などで置き換える必要があります。
(5)被害が生じた場合の修復
被害が生じた場合の修復について「東京都建物における液状化対策ポータルサイト」のフローが参考になりますので、掲載します。