Oh!my sisters 第1話
◯あらすじ
小さな島の小さな村で仲良く育った三姉妹。
いつからだったか不思議な事が出来るようになりました。
このお話は、三者三様、不思議な力を持った彼女たちが
悪をくじき世を正す、そんなお話。ではありません。
だって、ここは小さな島ですもの。
草や木や鳥や蝶と、たわむれ遊ぶ毎日が
ただただ今は続きます。
それぞれの思いを胸に、島を出てゆくその日まで。
「ころめ」
ころめは温和で心優しい三姉妹の長女です。
長女だからといって面倒見が良いということもありませんが、とにかく穏やかで、その場にいるだけで雰囲気が柔らかくなり、周りの人を安心感で包みこんでくれます。
そんな彼女ですが、実は、それは例え話ではなく、自身が持っている不思議な力に関係があるのです。
いつだったか姉妹で山に遊びに行った時、彼女は傷ついた一匹の小鳥を見つけました。巣から落ちたのか、それともほかの鳥にいじめられたのか。
小鳥はどうやら羽を怪我していて、跳ねることしかできなくなっていました。この状態で数日何も食べずにすごしていたようで、身体はほそり、目もうつろでした。
急いで駆け寄るころめから、なけなしの力を振り絞って小鳥は逃げようとします。しかし、いくら運動おんちの彼女でも、跳ねることしかできない小鳥には遅れをとりません。
そして、手を差し伸べた瞬間、、、錯覚でしょうか。彼女の手の平からふわりと緑色の光が溢れました。すると、それを浴びた小鳥の怪我が見ているそばから治っていくではありませんか。
そうです。ころめには「ちゆ」の力がありました。
小鳥はみるみる生気をとりもどしていきます。傷はどんどん塞がり、目には輝きが戻ってきました。
この能力こそ、彼女が振りまく安心感のみなもと。何もせずとも、もれ出るエネルギーが周りの人たちの心を癒すのでした。
小鳥は完全に回復し、そればかりか、お肌はつやつや、羽毛はつるつる、クチバシはぷりんぷりんになりました。、、、ん?
これはどうしたことでしょう。
小鳥のクチバシは、文字どおりぷりんぷりんになってしまいました。良く見るとクチバシに限らず、なんだか小鳥全体がぷりんぷりんのふんにゃふにゃになっていくではありませんか。
そうです。ころめには雰囲気どころか物体も柔らかくする力もあったのです。
ころめは慌てました。なぜならば、自分の力は「ちゆ」だけだと思っていたからです。予想だにしない、平穏な日常でのかくせいにとまどうころめでした。
手のひらにいる小鳥は、たしかに、やせ細って弱っていたはじめの姿とはうってかわって、健康で活動的な状態にもどりました。しかし、それをさらに通り過ぎる感じでぷりんぷりんになってしまいました。通り過ぎるという表現が正しいのかもあいまいです。
でも、さいわい元気でした。
良いのか悪いのか全く判断できないころめは、いったん小鳥を持ち帰ることにしました。力のことについて、よく分からないまま元に戻そうとして、また小鳥が傷だらけで飢えたひそうな状態になっては困ります。
小鳥はすっかりころめになつき、肩や頭をいったりきたりしています。ぷりんぷりんの羽でも飛べているところを見ると、どうやら基本的にいきものとしての小鳥であることには変わりないようでした。
家に帰ってぷりんぷりんの小鳥を眺めます。そのフォルムがなんだか可愛くみえてきて、このままでも良いんじゃないかという気さえしてきます。
そうだ。なにか食べものをあげないと。
すっかり元気そうな小鳥でしたが、ころめの能力は栄養までおぎなえるほど万能なものではありません。
パンをちぎって、、どうぞ。
やはり小鳥はおなかが空いていたようで、すぐさまそれを食べようとします。
ぴたんぴたん、むにゅむにゅ、、
!?
クチバシが柔らかくて、とても不自由そう!
それを見たころめは、このままでいいわけあるものか、わたしは何て自分勝手なものの考え方をしていたんだ。と反省し、再び力を使い元に戻す決心をします。でも、いきものにするのはもう怖いので、一旦モノでためしました。
ころめは何度も何度も失敗しましたが、その度に次女まるぷちの言葉を思い出しました。
「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力とは言えない」
ころめはこれをまるぷちの言葉だと思っていましたが、実はサダハルの受け売りでした。
ともかく努力のけっか、この能力についても色々な事がわかりました。柔らかくしたものは同時に少し軽くなるという、なぞの付加価値もありました。
ころめは呪文のように「ヤワラカル!」と叫びながら使う設定にし、、そんな事より早く小鳥を戻さないと。
失敗しないよう慎重に、、
ホァンホァン、、しゅぅぅ、、
小鳥はすっかり元通り。ころめもホッと胸をなでおろしました。
このまま一緒に暮らしてくれると嬉しいなと想像しながら、改めて自分らしさ(?)を取り戻した小鳥をみて思いました。
え、、リアル鳥の脚、怖。
、、、ころめはやっぱり小鳥を元の山にかえしてあげることにしました。もちろん、この子にとってもその方がしあわせだろうと思っての事です。
また会いたくなったらあの山へいこう。そう思いながら、飛び立つ小鳥を窓から見送りました。
おわり
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