Oh!my sisters 第2話
「まるぷち」
次女でしっかり者のまるぷちは、手先が器用でとにかくものづくりが得意です。
みんなが困った時にさっそうとあらわれ、おやかたゆずりのじまんの工具と、自らの特殊な力をくしして、いろいろなモ(↑)ノ(↓)を作ります。
まるぷちは自分が能力で作ったものを、他の製品と差別化したいと考え、モ(↑)ノ(↓)と呼んでいました。ブランディングも意識する少しさかしい部分があるのはお年頃だからでしょうか。
(※以下、発音記号省略)
能力が先でものづくりが好きになったのか、ものづくりが好きで能力がそうなったのかはわかりませんが、まるぷちがモノをつくるために素材としてとらえたものは、かんごう(嵌合)やこうさ(公差)はもちろん、ふくざつな物理こうぞうを無視して組み立てることが出来ます。
また素材同士を自由にくっつける事ができるため、接着剤やネジ、ボルト、ナットなどは不要でした。
こう書くと、むしろものづくりをなめたような能力です。本職の方々からするとだいご味をはしょった極めて都合のよい能力ですが、美学だなんだとこしつする時代ではない、というあんちてーぜがけんげん(顕現)したぎふてっどがまるぷちなのかも知れません。
ただ、本人が手に持って組み立てることが出来ない大きなものや重たいものはあつかえなかったり、そもそも分からないものは作れなかったり、多少のせいやくはあるようです。
先日、となり町のナキサブロウがラジオが壊れたので直して欲しいとたずねてきました。もちろん、まるぷちにとってはラジオなど朝めし前。修理はすぐに完了しました。
しかし、向上心が高く、サービス精神おうせいのまるぷちは、こんなかんたんな修理だけをして返してよいのだろうか?
より喜んでもらえるようにするにはどうすれば、そしてまた別の有事の際に頼られるためにはどうしたら良いのだろうと、こきゃくの満足度に思いをはせました。
そして、ラジオにキーボードとモニターをとりつけ、ラジオのトーカーにテキストをダイレクトに送れそうな雰囲気のものに作り替えました。
また、スイッチを入れるとモニターに「ON AIR」の文字がこうこうとともり、まるで収録スタジオにいるような気分になれます。
そう、実は自分からも配信出来る機能もついていたのです。
もうあとは時代を待つだけのシロモノが出来上がりました。
実はまるぷちは作っている途中で、ちょっと違うかな、と思っていました。しかし、あとには引けませんでした。
誰だってふいに思いついたアイデアはこんなものです。しかし、結果がどうなるかはやってみないと分からない。もし、ダメならこれをさらに良いものにすればいい。
後悔だけはしたくないという思いが、いつもまるぷちを突き動かしているのです。
後日、ラジオをとりに来たナキサブロウはそれを見てびっくり。生まれ変わったラジオに感動し、喜んで泣きさぶりました。そして、キラキラの目でまるぷちを見つめ、
時代をさきどるニューパワー!といい、少々おかしなポーズを取りました。
まるぷちは、これが「かいこちゅうか」とやや批判を浴びそうな発言をしましたが、ナキサブロウが喜んでくれた姿を見て、せんざい的ニーズを満たせた達成感をしみじみとかみしめ、おのれの能力に感謝しました。
そう、ものづくりのだいご味はここにあったのです。
やはりまるぷちは、いつまでも古いぎじゅつにばかりあぐらをかいたこの国のものづくりに一石を投じるために生まれた、そう、せーの
「あんちてーぜがけんげん(顕現)したぎふてっど」
なのでした。
とはいえ、ナキサブロウに喜んでもらえたことは幸でもあり不幸でもあるとまるぷちは考えます。
なぜならば、失敗や反論こそより学びの多いものだと、おやかたに教わっていたからでした。もしかしたら、その経験を出来なかったことが、後々にライバルとの差を生む原因になってしまうのではなかろうか。まるぷちは心配症でした。
しかし、こんな時もまたおやかたの言葉を思い出すのです。
「まずは喜べ」
ありがとう、おやかた。
そう思いながらも、「うまくいった理由の半分以上は運。かんちがいしておごりとならぬようにがんばります」と、もはや、りっぱだねと褒めたくないほどけんそんした態度のまるぷち。
ともかく、その思いを今一度心にきざみ、泣きさぶったナキサブロウの顔を思い出しながら、ぽつりとつぶやきました。
いろんな人いるなぁ(深)。
おわり
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