予備試験って結局どうしたら受かるのか考察してみた
0章初めに
予備試験とはこれいかに?
我が国には予備試験(正式には司法試験予備試験)という試験があります。
東大生の合格率が約10%、全国平均で約4%。
あまり数字に拘っても意味はなく、単純比較できるものでもありませんが、東大入試(1次の結果を踏まえた上での出願者の)そのものの合格率は約30%程度あることからしても
「簡単」ではない(狭き門)ということにおそらく異論はないでしょう。
その試験に受かるとロースクール/法科大学院を修了した扱いになり
司 法 試 験 を 受 け る こ と が で き る よ う に な り ま す 。
読み間違いではないですよ。それだけです。本当にそれだけ。
それでも毎年1万人くらいの人が自分の人生をかけてこの試験に挑んでいます。
多分理由はいろいろです。そこは文章の論点が拡散するので言及しません。
自分の人生がかかっている以上、当然こんな疑問が浮かびます。
「(そんな試験)どうやって受かるの???」
本記事はそうした疑問に一受験生としてずっと考えてきた筆者が最終的にたどり着いた結論について記述したものです(が、論文の結果待ちをしている段階で、正直合否いずれでもこの考えが根本から覆ることはないと思うのですが、あくまで信憑性のない考察に過ぎないという立場です)。
執筆のきっかけ
これをネットの海に放流しようと思ったのには以下のような事情があります。
予備試験もH23年から毎年開催され、毎年450人程度の合格者が誕生します。
よくXでは合格者や一部講師の方が質問箱のようなフォーマットを利用して受験生の質問に答えているのをよく目にします。
そこで定期的に登場するのが
「予備試験にどうすれば受かりますか?」という質問です。
これはいくつかの理由で答えるのが非常に難しいだろうと思います。(私の観測範囲では出力100%で答えられたものは存じ上げません)
誰しもが喉から手が出るほど欲しい情報なのに、、、なぜ😢
と質問した方は思うかもしれません。
これには理由があると考えます。
まず最初に、これに関して合格者の方を非難する意図は一切ありません。
本記事はあくまで考察に過ぎませんが、実際書き終えてみると3万字を優に超えており、書き上げるのに2週間以上かかったので、物量的に言ってそりゃ質問箱やらで答えるわけがないな、、、とも思ったのですが(物理的に極めて難しいという理由。)
実は、質問箱という匿名性あるフォーマットでは
「予備試験に受かるにはどうすればいいか」という質問がそもそも回答できないもう一つの理由がある
というのが筆者のたどり着いた結論です。
実は予備試験合格法を考えるうえで重要なポイントとこの質問に受験生にとって”有益な”回答がなされない実態は同じルーツを有している
ということが本記事を通じて筆者がたどり着いた結論となります。
そこがミソかな?なんてちょっと思ったりして。うひゃらうひゃら
記事全体の流れ
一応記事の特徴として
予備試験は資格試験の一種であり、ペーパーテストの一種であるという観点からマトリョーシカのように章を追うごとに話が各論的に具体化されていく構成で書いています。
*とりあえず太字の部分だけ目で追っていけば概要が分かるようにしているので、面倒でかつ時間もないという方はそれだけ見ていただくのもよいかと思います。
*あらかじめお断りすると、あくまで一個人の見解に過ぎず、これに全面的に依拠することによって何らかの結果を生じることを一切確約しないものであることにご留意ください。そのため、それによって生じたいかなる事態についても責任を負いかねますのでご了承ください。
1章 ペーパーテスト対策の視点
1ペーパーテストは様々な観点から分類を試みることができますが(それは何事においてもそうですが)、当該試験の(本記事が主軸とする予備試験も同様)の受かり方を考えるうえで重要な分類方法として、「その試験は絶対評価か相対評価か」というものがあります。
【相対評価と絶対評価】
以下、絶対評価相対評価を以下のように解釈することを前提とします。
絶対評価:試験問題に対する配点そのものに合格点が設定されているもの。学校の定期試験などが該当
例:40点を基準としそれ以上なら合格それ未満なら不合格となる。
相対評価:受験者を得点に応じて上から順番に並べ、定員数に満つるまでを合格者とするもの。
中学高校大学入試、予備試験、司法試験など
相対評価試験のポイント2つ
2今回は相対評価試験の対策に絞って話を進めます。
相対評価試験の場合、2つの重要な観点が存在することになります。
一つ目
は本番では満点(完全解)を目指す必要はないということ。
これはある程度「勉強」を得意とされてきた方からすると
「そんなの当たり前だろ」と思われるかもしれません
しかし、予備試験のような長期的に対策せざるを得ない試験を数年単位で学習し続けているといつの間にか自分でも気が付かずに完全解を追い求めてしまう傾向にあります。(主に熱心さや真面目さと言った美徳や不安という人間の生存本能からと筆者は考えます。)
予備校という試験対策の講座や教材を売ることを生業としているプロの集団組織が、実際の試験時間とは異なり制限時間の制約もなく、日常的に数多の文献を読んでいたり学習の蓄積度合が受験生の比ではないプロの講師が文殊の知恵どころではない規模で総力を挙げて作り上げた(と私は信じている)完全解(模範答案)とほぼ遜色ない答案を作り上げるのは受験生の大多数にとっては不可能と割り切ることが重要であると考えます。
市場に出回っている予備校答案や合格者の方が文献で緻密な裏付けをしながら書いた答案については多かれ少なかれそのような観点で見ていく必要があるように思います。
後述しますが、具体的な試験対策もこの観点から一貫して考える必要があります。
では、完璧でなくてもよいとして、どの程度できていれば合格するのか?という疑問が浮かんでくるでしょう。それを決めるのに重要なのが2つ目の観点です。
二つ目
の観点は、本番で他の受験生よりも相対的に得点が取れていて、順位が合格定員以内ならば合格するということ。
これもこのように言語化してしまうと、この記事は何の中身もない読む価値のない記事と化してしまいます。既にこのような情報発信は日々なされているからです。
言い訳をすると厄介なことに、”相対的に他の受験生よりできる”という状態の具体的な意味を定義することは困難です。
ここからは多少具体的な話に踏みこみます。
私の昔話で恐縮ですが、自分が受けてきた試験のうち主たるものは、①県立高校入試、②大学入試、③予備試験です。
例えば
①県立高校入試では400/500(80%)が私が受けた高校の安全圏と言われ、まずはこの点数を取るよう指導を受けました。(実際の合格最低点は例年380点台、、、のはず)
②大学入試でいうと、私立/国公立、前期/後期、センター試験(現共通テスト)/二次試験など話は少しややこしくなるので、私の受けた東京大学の2次試験前期日程に絞って話します。
科類にもよりますが、私が所属していた文科三類でいうと、二次試験科目に限れば、260/440(センター試験900点満点を110点に圧縮して加算して350/550)(約60%程度)くらい得点できていれば例年合格すると言われていたかと思います。
このように相対化された試験であっても世代間で大きく能力差が出るということも通常考えられない以上、ある程度合格ラインの点数というのが具体化されています。
よって常識的な判断としては合格最低点よりも少し上のラインが現実的に目指す到達点となります。
(弱輩ゆえ、合格最低点というギリギリ狙いだと本番はもっとうまくいかないので受からないという受験界通説の根拠を見いだせずにいますが(本番が想定通りいかないことも想定して対策するとなると理想的な到達地点として最低点を取るようにコントロールするという発想は出てこないと思いますしそのような趣旨でしょうか)、これも論じる実益が見いだせないので割愛します。)
その次元に達したのち、さらに上を目指すことととなるでしょう。(所謂上位合格)
(私見を述べれば大多数の人はいきなり上位合格を目指して”応用的”と受験生各々が考えていることを実践すべきではないと考えました。この”応用”という発想それ自体は”基礎(基本)”や”標準”というものを前提としていますが、これらの分類について最難関と称される試験群の対策がうまくいかなくなってしまう陥りがちな誤謬が隠されています。それについては予備試験に限り後述します。)
では③予備試験ではどうでしょうか。これは法務省から例年発表されるデータか、その推移をまとめた各予備校のサイト等で確認することができます。
それによれば例年合格最低点は
短答は160~170点/270(約60%)
論文は概ね240~250台/500(約50%)で推移していることが分かると思います。
そこで合格最低点のやや上一例にすぎませんが
短答180点
論文265~270点
などが「「「形式上は」」」目指すべき到達目標となります。
*ここで形式上という留保を強調した理由としてはとりわけ論文式試験は採点基準が全くのブラックボックスとなっており、おそらく極秘事項ゆえどんな見解もリークされたものでない限り(強弱の程度はあれど)推定にすぎないということになる点(これについては後述)と、そのような性質上点数ベースで考えることにあまり実益がないという点が挙げられるでしょうか。(おそらく素点と実際の点数の間にも何らかの調整がなされている可能性が高いからです。)
とここまでだと結局予備試験の合格ラインとはいったいなんなのかわかるようなわからないような煙に巻いた記述となっているかと思います。
これをもう少し具体化させていくにあたり予備試験は資格試験というジャンルに属するという新たな分類が意味を持ちます。
次章では資格試験という観点から予備試験について掘り下げていきます。
2章 資格試験対策の視点
そもそも予備試験はラスボスじゃない。トラウマ中ボス。
1予備試験はそもそも司法試験の受験資格を認定されるための試験であり、司法試験が延長線上にあるということを意識する必要があると思います。
司法試験についての説明はこれを読まれている方にあえて説明するまでもないですが、所謂法曹三者になりうる適性のある人間を選抜するための試験であり、学術研究をする研究者ではなく実務家登用を目的とする試験であってそれ以上でもそれ以下でもないということ、その前段階としての予備試験という位置づけに注意を要すると思います。
*これはとある実務家の方に、この「”実務家を発掘する試験”ということを踏まえて試験を見れているかどうか、という認識が、受かる答案を書けるかということに実は直結している」(筆者要約)と有難いお言葉を頂いた経験から来ていますが、この意味について敷衍して後に記述します。
予備試験には司法試験の趣旨が妥当する?
2ここで司法試験法5条には以下のような記述があります。
司法試験予備試験(以下「予備試験」という。)は、司法試験を受けようとする者が前条第1項第1号に掲げる者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養(太字は筆者による強調)を有するかどうかを判定することを目的とし、短答式及び論文式による筆記並びに口述の方法により行う。
また、前条第1項第1号に掲げる者とは
法科大学院(学校教育法(昭和22年法律第26号)第99条第2項に規定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識及び能力(太字筆者強調)を培うことを目的とするものをいう。)の課程(次項において「法科大学院課程」という。)を修了した者 その修了の日後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間
を指します。つまり法科大学院(いわゆるロースクール)を修了した者と同程度の学識及び能力を備えているか否かを認定する試験が予備試験ということになる(はずです。)、というのが原初の定義と言えるでしょう。
*このロースクールと予備試験の関係性について色々な方が色々なことを言っているのを見聞きしますが本記事の目的から逸脱しこれ以上は実益がないため一切踏みこみません。
寧ろ筆者は
司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。
とする司法試験の目的のうち、「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定」する試験であるという制度趣旨は予備試験においても妥当すると考え、そちらにウェイトを置く立場です。これらを前提に次章から本格的に内容に立ち入っていきます。
3章 予備試験対策総論導入
1予備試験に受かるためにはどうすればよいか。
ズバリ結論から身も蓋もないことを言ってしまえば、、、
短答式試験→論文式試験→口述試験でそれぞれ合格点を越えればよいということにつきます。
では問題はどうすればそれを達成できるのか。
導入では「間違った対策」をしてしまうことを避けるためにどのような戦略方針で臨めばよいかということについて記述していきたいと思います。
【とある名将、かく語りき】
なぜこのようなことを記述するに至ったかということについては
一言で言ってしまえば
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。」につきます。
言い換えるなら
合格要因は不確定な面がありつつも不合格要因は比較的はっきりしている
ということになります。
【果てなきネットサーフィンと聞き込みの成果】
一般になぜ合格したのかを特定することはおそらく容易ではないと考えています。
理由としては
これも少し私自身の話になりますが
予備試験を受けると決めたときに、
どうすれば合格するのか
ネット上や書籍の合格体験記、予備校講師が書いた解説本を読み漁ったり、直接複数の予備校に聞きに行った結果として
合格の仕方は実に多様性に富んでいる
という結論に達しました。
少しネタバレになりますが
合格者の勉強方法のマジョリティ(あるいは厳密性を捨て去って「最大公約数的」と言ってもいいかもしれません)は
短答は
・過去問を演習教材とする。
・(逐条形式の)予備校テキストで一元化して暗記する。
論文は
・短文事例問題を解く
・過去問を解く
・論証を覚える
口述は
・要件事実を覚える
・刑法各論的な内容を覚える
・模試等を利用し口述の実践的な練習をする
等とまとめることができます。
(実際はもっと仔細にわたり様々な違いがありますが、大まかな輪郭としてはこのようになると思います。)
これに対し極端だと思った例を一つ上げるなら
「問題演習は一切せず、予備校テキストを暗記しただけ。
ペーパーテストは東大受験に至るまでずっとこうしてきた。」
といった内容の合格体験記を目にしました。(うろ覚えですが)
*詳しくは後述しますがこのような方法は再現性が高いとはいえないと推測します。おそらくこの方は日本語の運用能力(≒抽象的/具体的に物事を考えることができ、文章読解、思考、記述する能力)が極めて高い水準にあり、具体的な問題演習を経ずとも、未知の問題に対して既存の法的思考の適用(今まで経験したものと厳密には異なるものでも当意即妙に応用する能力を含む)
やそれに基づく第三者に評価される記述を作成することが非常に長けてらっしゃるのだろうと思われます。
私の経験上という限られた範囲でもそのような方は稀有だというのが肌感覚としてあります。
(このような(不)合格要因を特定することの可否について、100%正しいとは私も思いませんが、ある程度確定的であるとはいえると思います。本当に要因を特定するには因果関係を認定する必要があり、それには本格的な学術研究を要するのではないでしょうか。そこまで考察を厳密に掘り下げずとも方向性の正しい戦略に則り、ある程度の「学習」を「質」「量」の両面で確保できていれば後は当日の土壇場でのふるまい等の不確定要素に多少左右されつつも合格する人が大半のような印象を受けるので、過度に方法論に踏むこむことは筆者は回避します。)
ここまででだいぶ話が逸れてしまいましたが、
要するに数多いる歴代合格者の多種多様な「合格要因をすべて満たそうとするということは難しい」と考えています。
【逆転の発想】
そこで逆に
(最大公約数的な合格要因を可能な限り満たしつつ)不合格要因を全部つぶしてしまえば
必然的に合格可能性はかなり高まる(落ちる要因がないので落ちない)のではないか。
→では「①不合格要因とはなにか、②それを潰すにはどうすればよいかということを③当該試験の特性に照らして明らかにする」というのが当座の内容です。
2不合格要因とはなにか
不合格要因にはいくつかのグラデーションがあると思います。
大きく分ければ方向性と量と質という分け方が一つの見方になるかと思います。
2-1 方向性
方向性が正しいとは
①試験対策としての具体的な日々の学習が
②当該試験に合格するという目的に照らし
③合理的な戦略に基づく合理的な戦術によりなされている
というように私は定義しています。
①②の予備試験verの具体的な内容については4章以降に譲るとして、ここでは特に③についての説明をしたいと考えています。
合理的な戦略とは
当該試験対策として(a)有益な学習方法の確立と(b)計画の立案、(c)それに基づく実行、(d)必要に応じた修正がセットになったものと考えています。
(まぁ要は使い古されたPDCAサイクルってやつですね)
予備試験対策として、
(a)自身の合格に寄与する学習方法であるといえるか
(b)自身の合格に寄与する学習計画であるといえるか
(c)普段行っている学習は(a)(b)に基づいているか
(d)実行中に得られた知見やフィードバックに応じて改善されているか
と言ったことを満たしているかを考えることになるかと思います。
これに対し
合理的な戦術とは
よりミクロレベルでの対策を指すと考えます。
これに関しては抽象度を上げたまま定義することが私の力量ではできないので、予備試験に即して具体的に考察します。
例えば予備試験の対策として民法の対策を例にあげましょう。
民法という科目は学習経験者の方ならお判りいただけると思いますが、科目の学習量が他の科目に比べてべらぼうに多く、忌避すべきとの見解もよくインターネットで見かけることも多いです。
ここで、極めて単純化して考えて、総学習時間を科目ごとに均等に割り振ると仮定します。
論文が最多の10科目あるので、学習時間を10等分することにします。
各科目の成長度合いが仮に同一であったと仮定した場合、一番試験範囲の広い民法が一番成長が進んでいないということになります。(ゲームのレベルのイメージです)
予備試験が全科目で高得点を取らなければ合格できない試験ではないので、成長が比較的鈍くなってしまう民法は後回しにすべきで、試験範囲の狭い選択科目、刑訴、行政法や、出題パターンの限定的な会社法に多くの時間をベットするのが「コスパがいい」ということになりそうです。
これは戦術的には正しいということになります。試験特性を加味して考えれば、費用(この場合はかける労力と思われます)対効果の悪い科目は優先度を下げるべきということになります。つまり、民法の学習時間を減らすないし、後回しにして、先に合格水準に達しやすい刑訴等の科目を優先的重点的に学習しようという発想になりそうです。
ところが、もう一歩踏み込んで考えることと、同時に俯瞰して考えることをしてみましょう。
学習がある程度進むと、受験生の皆さんは民法という科目が商法・民事訴訟法・民事実務基礎科目(場合によっては倒産法?)と関連性を有すると気づくと思われます。
・商法は、論文は限られた基本(≒司法試験予備試験における出題頻度が高く、学説実務上の関心も高い)条文を中心とする出題がなされる傾向にあり、かけた労力が報われやすいとされている。
・民事実務基礎科目は合格者で低評価を取る人が少なく、範囲もそこまで広くない、民法民訴の理解があれば、要件事実をしっかり暗記すれば得点しやすいなどと言われている。
・民訴は内容が難しく、出題パターンも存在しないコスパが悪いと言われるのをよく目にします。
あくまで私見ですが、一定の出題パターンにもとづいて出題されていて、範囲も広いとは言えず、一般に言われている以上に対策しやすいと考えています。
こうした「コスパのいい」科目の実力養成をする効果が同じ演習時間/量なのに、民法の習熟度によって異なってしまうという事態が生じてしまうことになります。(非現実的な単純計算をベースとするなら)
つまり、
民法についての一定程度の知識理解がなければ、
これらの他の複数科目の学習をすることが非効率になる
ということを意味します。
(あくまで単純化された計算を前提としています。)
このように科目特性に踏むこみ(よりミクロに)つつ、科目間の関連性を考慮する(マクロに俯瞰する)と、民法を極端に手薄にしたり後回しにすることで生じる弊害に気が付くことができます。
これは戦術的には正しいが、戦略的には得策ではない
ということになり、修正することになるでしょう。
戦略ベースで考えるとは
戦術レベルの細かい学習や対策を詰めていく過程でバランスを欠くなどにより、合理性や有益性を喪失していないかを俯瞰して検討するということ
と言い換えられるかもしれません。
学習の過程で、例えば
民法を後回しにしてみる(PD)→民訴の勉強をしていると民法の理解が必要と気づく(有益性の誤解と修正点の発見)→民法の学習量を増やす(具体的改善)→民訴の学習によい影響を与えているかを確認するため問題演習をする(効果の測定)(CA)
のようなサイクルを回転させることを長期中期短期的な計画によって進めていくことが正しい方向性の学習といえるのではないでしょうか。
2-2 質と量
定義
質とは主に学習効率と学習効果と考えます。
量とは演習量や学習時間などで測定可能な学習量と考えます。
量の話
【問題集を20周して、不合格】
この節の主題テーマは質にまつわる問題なのですが、「量」というのも注意が必要です。
例えば、問題集を20周した(あるいは1万時間勉強した)から予備試験に受かるかというと必ずしもそうとは限らないと思います。
一切問題演習をしていなくても受かる人もいれば、20周しても受からない人が存在するでしょう。
又は学習時間と学習量が同一でも受かる人と受からない人が登場するでしょう。
なぜ?
これは遺伝がどうのなどという論じたところで何ら実益のない話ではありません。
多くは
・方法論(学習(≒努力)の方向性)が間違っている
・時間や演習の不足
・最低限の学習環境の不備(自己規律能力等も含む)
などによって
知識・理解・答案作成能力(法的思考含む)などが合格水準に到達していない
ということの方が殆どなのではないかと推測しています。
*法律のラマヌジャンっていますか?
(*最小限の言及をするとすれば法律的素養が生まれ持って身についている天才という存在が存在しているのか訝しんでいます。
どうやら数学や物理学などは先天的才能と形容しなければ説明がつかないような能力を持つ偉人(ノイマンとか)がいることは調べればすぐに分かりますが、法律においてそのような人物を見聞きしたことがありません。
私見に過ぎませんが、主にインターネット上で「遺伝」と呼ばれている「能力」についてはおそらく言語の運用能力(≒情報処理能力)(や同一量の努力での長期記憶の形成量?の差)を指していて
おそらく受験生の共通の体験として
[0]そもそも法律についての知識がない段階
↓
予備校の講義ないし書籍で
[I]法的知識
や
(最終到達地点たる予備試験司法試験への配慮がかなり行き届いていれば)[II]それらをいかに活用して、
II‐①短答式試験で
合格点以上得点できる程度に肢を選べるようになる法的/受験的思考をするか
II-②論文式試験で
合格水準の答案を作成しきるようになる法的/受験的思考をするか
という汎用性ある再現性高い思考そのもの
更には
II-③その「思考→答案作成」に至るプロセスで必要となる技術ないし能力を鍛える具体的方法論など
を学ぶ
↓
[III]それらに基づいて過去問・問題集で演習する
↓
[IV]そこから得られた自分自身の現状の能力と合格水準の能力との”差”を埋めるために必要な処置(例:思考プロセスの改善・暗記事項の暗記)をする
[V][III]に戻る(以下繰り返し)
という一連の流れの中で、
1聞く読む(講義視聴含む)という形で受動的に日本語に晒され、その他人が紡いだ文章の意味内容の理解(記憶)をする。
2考える→書く(選ぶ)という形で能動的に日本語を操り、自ら解答を作成する
3このプロセスから得られた答案がどのような評価をうける≒自分がどのような水準にいるのかという反省や改善点の発見考察等を日本語で行う。
といったように、試験対策の中で必然的に日本語を運用する(≒情報処理)必要に迫られますが、その正確性と速度には差があるように思います。
こうした能力は大学受験等の試験においても要求される能力であるため、そうした試験に向けて投じてきた努力量や時間などの差としての経験値の違いが予備試験において現れてしまうというのが実際のところではないかと推測しています。)
【ここまでのまとめ】
さて、脇道に大分それてしまいましたが、話は学習量の話に戻ります。
()の前のところでは要するに、
・試験委員は予備試験において受験生のある能力を評価しようとしていて
・(先天的に備わってはいないので)その能力を鍛えるうえで意味のある対策をしていなければ
・いくら「僕(私)の考えた最強の勉強法」を猛烈に本気で死に物狂いで一切をなげうってひたむきに一心不乱にやっていたとしても徒労に終わってしまうリスクがある(世界公平仮説的な?)
ということを危惧しているというお話でした。
【「どれくらいやれば受かりますか?」】
「どれくらいやれば受かる=そこに達したら何もしなくていい」みたいなラインは理論上存在するかもしれませんが、時間的な制約が多いのに試験範囲がべらぼうに広い予備司法ではそこに達する人はごく一部だと思うので
ここまでできたら終わり!みたいなことを最初から考える必要はあまりなくて、自分の能力を本番ギリギリまで合格する方向に向けて近づけていくという方針で客観的、計画的、合理的に、最大限演習とそのリカバリーとしてのインプットをするというのが「量」にまつわる結論になりそうです。
あと先取りして話すと予備司法は似たような問題すら一切解いたことがないという意味での初見問題を一定数出題し、予備知識を排した現場での法的思考(「裸の法的思考」と勝手によんでいます)を見ようとしているきらいがあるので、
現場で結構揺さぶられる
≒持っていた武器や防具を剥がされ、上裸で殴り合いのタイマンを要求される(〇が如くが如く)
という試験において、試験対策が「完成」=不確実性の完全排除される日は来るのか(反語)。
この意味で、おそらく受験生が従来体験してきた試験種(学校の定期試験や中学高校大学入試、英検などの民間試験)とは性質に違いがあると言えそうです。
2-2-3質の話
【勉強方法と書かれた蟻地獄】
質の問題はいわゆる「勉強方法」という題目で人口に膾炙することの多いテーマです。
ところが
今回のテーマ、話は単純ですが、実はここにある落とし穴にはまっている人が実は結構多いのではないか危惧しています。(杞憂キボンヌ)
文部科学省が公表している令和5年予備試験受験生の所属大学のデータ(あくまで自己申告であることに注意)をみると錚々たる大学名がズラッとならんでいることが分かります。
つまり全国的に見て予備試験受験生は所謂「高学歴」と称される大学群の学生(卒業生)が多いため、全体的な傾向として多かれ少なかれ「勉強」「試験対策」が得意であるという自負がある受験生が多いということになります。(それ自体を揶揄する意図は一切ありません。)
ところが悲しいことに「量」の箇所でも言及していますが予備試験と10代の間やってきた試験とは別物です。
別物ということは、対策も異なってくるはずです。
これについてもハッキリさせていきましょう。
まず些末なことは無視すれば
共通点
・新しい概念を理解しなければならない
・そのうちの一部は記憶しなければならない
・記憶するものも、完全に文章単位で暗記するものと、暗記したキーワードを用いて同趣旨の説明ができればよいものとがあり、グラデーションになってる。
・決まった期日に受ける試験に配点があり、書くべき内容が(ある程度)定められている。
etc.
相違点
・範囲が広すぎる
・現場で初見の問題を思考することが必然的に求められ、答えを知らないなかでその場でたった一人で答えを出さないといけない
・どこかの本に書いてあるセンテンスがそのまま答えとなっていて、それを書けば満点がくるのではなく、①一定の思考に基づいて検討し、妥当な結論を導いているかというプロセスが評価されている。
などでしょうか。他にも色々とありそうですが、大きな対立点となりそうなのはこんなところではないでしょうか。
予備試験はフリーザ。界王拳じゃたおせない。
この節で一番言いたいのは
従来的な学習方法(界王拳)
→先生から知識を伝達される
→これをノート等に書き写す
→それを覚えたり、定評のある(or学校で渡された)問題集を解く
→そこでやったことが(せいぜい数値を変えたくらいで)そのまま出題される
→既視感を抱いたまま、問題を解いた記憶をたどりながら、クリアな導線が見えた状態で解く
→点数(いい成績)が取れる
というやり方が通用しないということです。
(ざっくりと言ってしまうと、殆どの知名度が高い大学の入試問題も上記の方法で突破することができると考えています。)
ところが予備試験はこうした従来の「勝ちルート」通りにはいきません。
特に後半のようにはいかない問題が必ず出題させる点に大きな特徴があります。
まずこの事実を認識することが、適切な対策を講じるうえで重要なステップとなります。
ではどうすればいいのか?
これに関しても結論は後に(予備試験対策編)述べていますが、まず大前提として抑えておきたい話をさせてください。
前提
まず抽象的に根差す観点の話からすると
「間違った方法」を取らないという視点が重要かと思われます。
これに関して市場には様々な書籍やら情報発信やら溢れかえっていますが
筆者は
科学的知見に裏付けされた再現性の高い学習法を予備試験に適用するというのが穏当であると考えます。
色々な本がありますが、
◎再現性ある実験結果を掲載した論文をソースとして丁寧に記載しているもの
△一個人の学習方法を解説したもの
の順でお勧めします。
△なのは、この世の理として、受験生がある日突然合格者になると、自分がやってきたことの全てが正しいかのような錯覚をしてしまいがちで(やってきたことのうち一部が合格に寄与し、その他は無益ないし有害だったが、総合的には合格できた場合に、そのすべてを正しいと思ってしまう)、なにもかも鵜呑みにすべきではないという注意点があります。(自戒を込めて)
論文を引用して説明しているという点で以下の2冊をとりあえずお勧めします。(アフィリエイト非提携です。)
これを
予備試験にアプライするなら
ば
・分散学習(一度解いた問題は時間を空けて再度解く)
・想起学習(記憶の定着のためには何もヒントがない状態から思い出そうとする=脳に負荷のかかる学習をする)
などをお使いの教材で実行するということになるかと思います。
この辺は拘泥しすぎると勉強法に詳しいだけの人になってしまうので、ほどほどにして脳に負担のかかる勉強をさっさと実行したほうがよさそうですね(雑にタイトル回収)(でもここも大事なポイントだと思ってます)
先取りで具体的にいうと(後述していますが文章の流れからここで)
事例問題や過去問はk回目とk+1回目の間は連続せずにある程度の期間を空ける(量が多くて勝手にあくと実感)
想起学習のため、テキストや基本書を一文字一文字そのまま読み込むという作業はしない。
記憶すべき箇所を暗記マーカーを引いて隠しながら脳内で穴埋め問題として解く
Ankiなどの学習ツールにまとめて一問一答的な問題集化する
など
次に具体的な話、
特に全く似たような問題を解いたこともなく、合格水準の答案像を一切知らない状態で、極めて切迫した少ない制限時間の中で、誰も力も借りずに、最初から最後まで、論述して答えを出さなければならない問題
と
受験生が誰しもある程度は知っているし、類題も解いたことがあって、合格者ならきっとオールウェイズレヴェルの高い解答を作ってしまう(?)のに、その中で絶対に書き負けてはいけない問題
からなる試験をいかに乗り越えるか、という方法論についての話に移ります。
4章 予備試験対策
予備試験は前述したように短答→論文→口述という3段階の審査を経てやっと合格が認定される試験です。それぞれのステップはおよそ20%→20%→96%と合格者が絞り込まれているので、論文までをいかに乗り切るかに心血が注がれる(≠口述は軽視してよい)し、筆者も現状口述対策について詰め切れていないのでひとます論文対策までについて、書いていきます。
4-1 短答編
4-1-1 短答総論
まず予備試験短答式試験がどのような実態を有するか(所謂「傾向」)について話し、次いで、ではどのような「対策」をすればよいかということについて書いていきます。
予備試験の短答式試験は現状H23~R6まで
基本7科目と一般教養科目についての出題実績
司法試験を含めるとH18~H26までが基本7科目(行政法刑訴民訴商法はこれ以降出題無し)、H27~R6までは上三法(憲法民法刑法)のみのしゅつだいじっせきがあります。
司法試験と予備試験は出題が共通する問題も多いですが、全体的な傾向として司法試験の方が比較的マイナーな知識を問う出題がなされています。
予備試験の短答の全体的な傾向としては
まず形式面については
条文・判例・学説を素材にして
①条文や判例の文言(の一部)をそのまま出題し正誤を判断させる。
②具体的な事実関係が記載され(事例)、それが条文や判例が規定する要件を充足しているか検討させ、設問の問いに応じて、正誤や適否の判断をさせる。
③ある程度限られた範囲の学説対立を素材に、様々なタイプの問に応じた正誤や空欄補充をする問題
そしてこれらの問題には再帰性(とかってに名付けている性質)があります。
つまりH18~一度出題された問題が①そのまま②問われ方を変えて再び出題される傾向にあります。
とすれば過去問を(せめて解かないにしても、何が基になって出題されているか≒条文や判例の出題実績の把握する)解くことが自分が受ける予備短答の対策として重要になるでしょう。
*ここで一点指摘しておきたいのは、H18~H22までの出題とH23以降の出題はその傾向が少し異なります。
H18~H22(おそらく予備試験の開始による新制度の開始としてH23~現行の制度として均質な出題がなされています)までは条文や判例についてのストレートに問う出題ではなく、論理パズルのような様相の出題になっており、おそらく本番に近い演習をする素材としては不適切と言えるかもしれませんが、現行の出題形式に沿った実質的な焼き直し問題が出題される可能性があるので、一切関知しないというのはリスクがあるように思います。
次に問題となっているのが「
【過去問を解くだけでよいのか?】
」というクエスチョンで、過去問を解くだけで対策が完結するという立場を「武蔵理論」と呼称するようです。
これについて筆者の立場としては(論文と共に)演習素材は過去問だけでいいのではないかと考えています。
まず予備司法含めて毎年相当数の問題が蓄積しています。
単純に考えていつか物理的にこなせなくなる年が来るでしょう(もう来ているかも)
また、
資格試験という観点についてお話しした箇所でも申し上げましたが
予備試験は法曹たる資質を有する者を選抜する試験(司法試験)の受験資格があるといえるものを選抜する試験なので
毎年新作の問題が出題されていても
求められる素養は同じはず
(なぜなら同じ「弁護士・検察官・裁判官」という仕事ができそうな人を選ぶ試験なので、求められる水準が変わらないはず)
なので
「令和N年よりも令和N+1年の方がより多くの知識を、より深く難解で複雑な法的思考能力を問われる」ということは考えにくいです。
ただ、全く同じ問題を出してしまうと、差をつけることができないので
実務家と学者の両先生の粋を集めた試験委員による練られた問題が表面的には新作問題として毎年出題されるというのが実態でしょう。
しかし、その内実としては、毎年同じ目的で同じ水準の問題が出題されているにすぎないはずです。
これは論文については結構指摘されているところですが、実は短答もかなり考慮の行き届いた問題群からなっているというのが反復して解いていてたどり着いた結論です。
とすると過去問以外の何らかの問題を解く必要性は、蓄積している過去問があまりにも多く、その水準も高いことから、ない
というのが当面の結論になるでしょう。
しかしながら、短答に関しての特殊性として一切出題実績の無い条文(〇)判例(△)が出題されやすい傾向にあります。
(後述しますが、出題された全知識を全て暗記しなければならない訳ではなく、論文式対策によって得られる法的思考とその経験が蓄積して得られた相場観と読解力、論理的思考を駆使することで、未知の判例を基にした出題を攻略することができ、そうした出題は元ネタが未知条文であることよりも未知判例であることの方が多いのでこのような〇△で表記しました。結局細々とした知識は専門家が調べれば探り当てることができるので、そうした知識をストックしている人間よりも実際の具体的事件において妥当な法的構成を思考で導ける人間を選抜しようとしていると考えれば、知っているから解けるが知らないなら沈黙するという態度になってしまうことは短答においても求められていないのではないでしょうか)
↓
それゆえ、過去問だけでは対応できない?という疑問がわいてくるのは当然でしょう。
↓
一方で六法を開けば条文だけでさえ、有限なれど、とても暗記しきれるような量ではないことにすぐ気づくでしょう。
↓
とすると一体何をどこまで覚えればよいのだ?ということに受験生の関心が集中するのは必然です。(ところが「一部」の指導者にこれを聞くとなぜか激高するという話を聞いたことがありますが、、、)
ここからはなんとも断定しにくい絶妙な領域になってしまうので歯がゆいのですが
まず、シンプルな話から始めると
過去に出題された条文判例だけで相当数に上ります。
いくら大学生が比較的時間があるとはいえ、個々人によって様々な事情があり、既出事項を完璧にするだけでも相当数の時間を要するので容易ではないでしょう。
↓そこで
出題回数毎に知識に優先順位を割り振っていくことを推奨します。
その際、複数回出題されるものについては、二回目以降の出題のされ方にも注意すべきです
具体例
会社法では831条1項各号の文言(要件or効果)について
そのまま出したり、シャッフルして誤答を出したりする出題が
少なくとも3回以上の実績があります。(途中からデータを取らなくなったので曖昧ですいません。)
実際に解き進めながらカウントしていくと分かりますが3回出されているのはかなり多いですし、そもそもこの条文は論文でも頻出とされ、重要条文としての地位があります。
とすると例えば
1この条文はかなり重要条文であり、A⁺ランクor☆☆☆/☆☆☆(優先順位の確定)だ。
2出題のされ方としては
文言がそのまま出されるので、
どのような事実関係においてその条文が適用されるかということまでは把握しなくてもよさそう。(全出題傾向の分析とそこから対策の方針確定)
(仮に事例形式で出題されてもこの条文の要件該当性の判断はできそうだ)
3(これはてきとうですが)これまで1、2号は問われていて、3号はない。(余裕があれば3号も覚えれば確実だろう。)
4よって、条文の要件を各号それぞれ丸暗記で覚えよう。
といったように
過去問を解くということで
単に知識理解を増やすにとどまらず、
自分が受ける未来の予備試験に向けてどのような具体的な対策をすればよいか
ということを絞り込んでいく→それが確定したら愚直に反復して、完璧を目指す。
というのが短答対策の戦略になるかと思います。
問題はこのようなやり方をするにあたって、過去問とそれの予備校の解説からなる市販の過去問集では少し作業効率が悪くなってしまいます。
そこで逐条形式の市販テキストをこうした分析結果を書き込みつつ(つまりどこまで理解して、どこまで覚えるのかということとその対象知識がセットになっている状態を目指す)、ベースキャンプとして整理するツールにする(と同時に、暗記ペンを使って記憶対象を想起学習(active recall)で記憶に効率的に定着させる、とデバイス(ankiに課金したりipadを持ち歩いたり)が減って一石二鳥かも)。
あくまで脳内に情報ネットワークを作るための補助輪なので、過度に拘るのは非推奨です。
あと明らかに思考で解く問題も元ネタの細かい知識を掲載してしまうなど情報過多な傾向にあるので、最初に既出か否かで優先順位を決めているのはそのためです。
ぶっちゃけたシンプルな話をすると
①{既出の(条文+百選判例)+既出の非百選判例(のうち、実際に解いてみて知らないとその設問の正答を選べないと思い、その設問が解けないと他の設問との難易度の比較からして合格点が取れないと思ったやつ)}の中身の理解と知識暗記
+
②学説対立の主たる立場の内容的理解と理由付け・批判のざっくりした理解
があれば、
+
③論文対策の過程で身に着く法的思考能力
で、その場で思考してある程度悩みながらも(不安を感じながら)こっちのはずだというように選択ができるようになっているはず。
で、そうすると満点とはいかなくとも、再帰性の強い刑事系・民事(商法の除く)では8割くらいにはなるはずです。
4-1-2 短答各論
憲法
過去問解きまくるだけで対策した場合の得点しやすさ(以下「再帰性」):中⁻(マイナス)(人権:低./統治:中)
特定の判例(百選掲載)の特定の箇所(その判例が最高裁にまでもつれ込み、学習素材として重要な位置を占めるに至った画期的な、ある争点(問題点)についての判断の部分≒規範やその理由付けの全部ないし一部)が出題されやすい傾向にはあるが、そうするとやりつくされた感があり、非百選から出したり、百選判例の有名(≒受験生ならだれもが知ってる)ではない部分から出題されたりする。
ところが、当該判例についての、所謂問題の所在(≒その判例が最高裁にまでもつれ込み、学習素材として重要な位置を占めるに至った画期的な、ある争点(問題点)についての判断の部分≒規範やその理由付けの全部ないし一部))や事案の概要から、論理的に考えて正答を選ぶこともできなくはない。
そのような不確実性と、各設問の小問=肢の正誤判断(大抵3つ)を完答する必要があり、対策がしにくい。
統治分野は条文からの出題が多く、対策しやすいようにも思えるが、直近では結構マイナーなことを聞いてきているので、かつてのように「条文を全部暗記すれば」というのは修正を余儀なくされる?
→ほな、どないせいっちゅうねん
→その設問を取らなければ合格できないのかということを他の科目とのすり合わせでよく吟味して(一般教養次第では細かすぎてやってられんとなったら、無視する選択肢もあるだろう。というか一般教養である程度得点する方が楽かも、、)、それでもやらなきゃいけないなら基本書や予備校講義によって体系的な大枠の理解を前提として、制度趣旨の部分を抑えれば、同一領域で角度を変えて出題されても対応できる(だろうけど難しい)。
「受かること」だけに特化するならどこかではっきりと割り切ってしまう方が最終合格(論文口述まで一気に駆け抜ける)する意味では有益かもしれません。
行政法
再帰性:やや中(判例:高/条文:中)
行政法は判例と条文の出題が大半を占め、憲法のような学説問題が出てくrことはない。しかし所謂総論部分(判例+学説?)も一定程度出題される。
しかし、判例は百選判例でも数が多く、条文も種類が豊富。
とはいえ、捻った出題はなく、判例に関しては問題文に書かれている判例がどの判例かを100%正確に特定できるなら、結論だけ覚えていれば正誤判断ができるように今のところなっている。
条文は行政手続法・事件訴訟法・不服審査法・執行法・情報公開法からなる。
手続法と訴訟法は論文でも出題されやすいということもあり、よくでる。
条文そのものを暗記しているというのが重要になる設問もあればその適用によってどのような手続きが利用できるかorどの訴訟が選択できるか、ある規定の規則が他の規定にも準用されるかなど、運用面の出題もそれなりになされているという意味で「細かい」という印象があります。
どの制度で何ができるかということを紛らわしいものは相違点を明確にして覚える必要があるでしょう。
その意味では条文も重要だけど基本書的な記述で条文体系が要するにどういう規定になっているかというところまで踏み込んだ記述で勉強する方が効率的かもしれない。
刑法
再帰性:高
一度出た問題の元となる判例条文学説の出題形式を変えただけ、殆ど焼き直しで出題されることも殆どです
条文の文言そのものが出題されることはあまりありません。
必要的任意的減免の範囲は頻出分野ということができそうですが、
その他でいうと
おそらく司法試験のみに限り、没収やら懲役だの条文範囲(6章くらいまで)がちらほらと出題され、予備試験では数えるほどしか出題実績がないので、
優先順位はかなり下がり、放置したまま突入しても、他の出題実績がある範囲が合格水準にあれば問題なく8割程度得点できるのではないでしょうか。
刑法に関しては、あまり難しいことをあれこれ考えずとも、過去問をノーヒントで本番のような環境で解いた際に、明確な根拠を以て解答でき、その思考過程が、本番でも活用できる程度に汎用性正確性があるならばそれ以上の特段の対策をせずとも高得点が期待できるのではないでしょうか。
刑訴
刑訴は論文出題範囲+手続規定条文というのが出題範囲の大部分だと思います。
こちらも刑法同様特定の判例や条文学説対立が繰り返し出題されているので、
その分野の関する知識理解に加えて
再度出題される際にどのように出題されているかという変更点から、出題の幅が推定できると思うので、それに基づいて対応できるようにしておけばよいのではないでしょうか。
既出範囲が仕上がってきたら、決まってよく出る章・節の条文知識を付随して記憶しておくと新出問題で的中する可能性もあるので有益かもしれませんね。
民法
民法に関しては判例条文のみで出題されます。
一番重要というかあまりまだ指摘されていない(はず)のコツみたいな話として
商法(というより会社法)についても同じ話がいえますが
今までの公法・刑事系と異なり出題形式が一種に統一されます。
ここは地味に大事だと思っているので、具体的に説明します。
正誤or最高裁に照らして最も適切
ア文章
イ〃
ウ〃
エ〃
オ〃
1 イエ 2イオ 3エオ 4アイ 5アウ
という出題形式です。
先に結論からいうと私がH18~R5までの司法試験予備試験の全ての問題を検討して得た結論としては、
基本的な条文(=民法の規定する各種法的制度の主たる部分を規定する条文)と百選判例(◎重要なものは既出)又は重判(△既出のものに限る)についての肢の正誤を適切に判断することによってすべての肢を検討しなくても答えを一つに絞ることのできる設問が大半です。
逆に言うと、そうした知名度の高い条文判例以外で構成されている肢の正誤判定をするのは難易度が高いです。
それ以外の設問だと、すべての肢の元ネタの知名度が低い場合もあります。
それは現場で比較によって結論としての妥当性の吟味によってエイっ!と選ぶ(という論文答案作成においても求められる能力の一つ)ことが求められていると考えます。
よって試験当日までの対策としては
すべての肢を網羅的に等しく扱って潰そうとするのではなく
肢の元ネタに応じて肢の価値づけを行い、重要と言える肢を起点にして、未出の条文の出題が予想されるものの要件効果を覚えること
(既出条文で捨て肢でないものを覚えているのは大前提)
既出判例のうち、百選掲載、重判掲載(かつ出題実績が複数回)、論文対策でよく見る野良の判例について内容を理解して(理由:事例形式や言い回しを変えて出題されたときに丸暗記では対応できないし、覚えるコストも大きく膨らんでしまう。)、記憶する(一語一句諳んじるというよりも、肢の記述から規範の要件を抽出し、充足性を検討して判断できる程度に要件効果を覚えている)
というのが中心的になっていくのではないでしょうか。
商法
商法=会社法+商法+手形小切手法です。
設問が15題あって、11or12題が会社法、2,3題商法、1,2題手形小切手法です。
範囲の広さや理論的難易度を総合すると
会社法(配点高/範囲広/部分的に難しい)
商法(配点低/範囲狭/難しくない)
手形小切手法(配点低/範囲そこそこ広い/難しい/数年後廃止)
となっており(私見)
手形小切手法は理論が難しく、配点が低く、論文出題可能性が低く、捨ててもいいのではないかと思い、捨てましたが、受かりましたので、捨てたほうがいいと思います。
全体的には、条文が中心の設問で、百選判例は民法と同様ですが、重判の出題は現場思考の出題となており、そこまで抑える必要性を解いていて感じませんデした。
厄介なのが会社法の条文で、新しい条文ということもあり、長く入り組んでいて、準用規定も多く、とっつきにくい(=読んでいるだけでは理解が深まらない)のでわかりやすい講義なり基本書なりを利用したほうが良いと思います。似ている制度の違いが好んで出題され、物量からいって全条文を把握するのは不可能なのに
「〇〇は△△できる」→〇〇にそんな制度はない。◎◎にはある。
みたいな出題がされるので、逐条テキストなども併用して紛らわしい領域は緻密に暗記する必要があると思います。
理想論をいえば制度趣旨的な部分から必然的にそのような規定になっているのでそこから考えて当然のものとして抑えればいいのでしょうが、それを解説している決定版的な講義やら書籍やらの情報について基本刑法の如き知名度を誇るものがなく、筆者はどうしたものか困り果てています。
逐条テキスト(早稲田出版)の図表まとめには命を救われました。
何もない人はとりあえずあれと赤白会社法(高橋)でどうでしょうかね。
民訴
民訴は刑訴に似ていて
論文出題範囲+手続き条文という構成から出題されます。
しかし、民事系としての特性もあり
誰も知らないような野良判例を元に出題されます。
こうした設問は正答率が低いので、一旦後回しでいいのですが、再度出題されることもあり
出題形式の中に完答系もあったりと、実は難易度が高めです。
基本的には論文的な知識理解思考があれば刑訴とやり方は似てきますが、
条文の規定が実際にどのように運用されるかまでしっかり意識した方がいい設問もあります。(特に移送とか)
一般教養
よく言われるのは
人文系で得点する、英語は難しい
などですが、かならずしも一概にはそういえないと思います。
人文系ですが、
例えば最初に出てくる世界史日本史の箇所は受験生が頭を悩ます、マイナー分野や人名やら国名が錯綜して間違いやすいところが多いように思いました。
ここ数年はあまり得点しやすいとは思いませんでした。
英語でもパズルというか、その場で該当するものを探し当てて比べてあてはめるだけの作業感の強い問題もあれば、確かに選択肢のどれもが該当するようにも思える微妙なニュアンスの違いから選ぶ難問もあります。
数学も年によっては高校数学1A2Bの標準的内容が出たかと思えば、多分数学3かもしくは大学の内容?と思しき問題が出たこともあり、
理科も知識が不要な簡単な計算問題や、結構精度の高い知識がないと解けない問題、おそらく高校大学レベルの問題など難易度にばらつきが大きいです。
全体的に
ここが狙い目という絞り込みができないような作りになっていると思います。
基本方針としては
全部の問題に先入観を持たずにフラットに問題と選択肢を見ていって
①パズル的に解ける(=知識を要せず、簡単な比較や計算をすれば答えが出る)
≧②常識的な「判断」から選択肢を絞り込める
>③義務教育の範囲で解ける>④高校の学習範囲>⑤大学の学習範囲
の優先順位で解いていく方が期待値が高いように思います。
事前にインプットをもしするとしたら、③だけかな?と思います。
④⑤は習得済みでも時間経過によって記憶は薄れる割に膨大なので余裕はないかと
ただし、これらはその人固有の事情によっていくらでも変わりうると思います。
ちなみにですが、私は特段のインプットなど対策をせずとも
安定して模試でも本番でも36点くらいです。
知識の試験ではないと考えています(知識で瞬殺した設問も過去にはありますが受かったR6予備ではないです)がそれ以上、もっというと
42~48点(7、8割)以上を取れるような戦略は力量不足でわかりかねますが、これが分かれば短答対策に革命が起きそう。。。
総括
短答は受からないのは単純に努力が足りないからだと言われますが、そのような趣旨の発言をされる合格者の方は、自覚なさっているかは別にして、天才肌というか経験豊富というか又はそのいずれもというか
実はここまで書いてきたステップを軽々と又は大変な苦労をなさって超えているからこそ、このような発言が出てくるのかなと推察します。(そのような方を非難する意図は一切ありません。)
私は凡人なので、努力をする、といってもそれが得点率向上につながりにくい努力であり、それを正しい方向を見いだせなかったため、比較的時間のある大学在学中にも関わらず大敗を喫しました。
「私の努力不足」と簡単に片づけずに出題傾向と私の対策の”ズレ”を分析したからこそ、それでもやっとの思いでなんとか突破できたのかなともおもいます。
不合格要因は必ずあるとしてもそれは人それぞれです。それをなんとか見つけて潰していくとよい、その意味で知識の穴なり必要な理解の欠落なりを潰していくだけのステージに入ったらあとは「努力」次第かもしれませんね。
試験範囲を知るために過去問を解く
出来ること出来ないこと出来るようになったことを見極めるために過去問を解く
アクティブリコールの一環として過去問を解く
過去問を解く→解説を読むor基本書で調べる→理解が促進される
タイムマネジメントなど、事前準備の予行演習として過去問を解く
解くべき問題が減ってきたら、記憶事項を徹底して想起学習で記憶する
4-2 論文編
特に全く似たような問題を解いたこともなく、合格水準の答案像を一切知らない状態で、極めて切迫した少ない制限時間の中で、誰も力も借りずに、最初から最後まで、論述して答えを出さなければならない問題
と
受験生が誰しもある程度は知っているし、類題も解いたことがあって、合格者ならきっと”レヴェルの高い合格点を超える解答をアールウェイズ出してくる”(?)のに、その中で絶対に書き負けてはいけない問題
からなる試験をいかに乗り越えるか
論文式の対策としては、一貫して予備試験も法曹選抜試験(≠学者養成試験)であるという立場から、百科事典的に少しでも多くの法的知識があればあるほど合格しやすくなるという法的知識量(あるいは深度)と合格可能性が比例関係にある試験ではないということは再三述べておきたいです。
4-1-1 総論
①まず試験側の話(傾向)をし、②その後受験生がどのような対策をすればよいか(対策)について記載する流れは短答編と同じです。
①傾向
H23~25くらいまでは黎明期特有の出題形式や設問の内容分量などに振れ幅はありますが、H26~は比較的一定水準で安定しているといえます。
あくまで総論という枠組みで言及するならば
A4見開きで1ページに収まる分量の事例を記載した文章が書かれていて、何かしらの法的紛争の前提事実や登場人物間の関係性に加え、予備試験では訴訟の当事者となる人物の主張が記載される傾向にあります。(設問である程度当事者の主張をかなえられる法的構成が具体的に指示されることもあります。)
いずれにせよ、なにか人間(法人)と人間ないし国家の間にトラブルが生じていて、双方に言い分があり、どちらかに有利な立場で(弁護士or検察官)又は中立的な(≒裁判所)法的見解を記述することが求められます。
例えば
Aさんは、OOという権利が侵害されているものとして、これを取り返したい/賠償を求めたい/どうにかできないかと弁護士に相談してきた。
のような前提がある。
ここでは論理必然的な流れとして
①依頼人のかなえたい願望があり
②それは実現するのか(法的に認められるのか)を検討するにあたり
③六法全書を手掛かりに
④思考し、結論を出し、それを記述する。
というプロセスを経る。
書いてしまえば当たり前ですが、実はこれが全てと言っても過言ではないのです。
記憶力の極めて優れていらっしゃる受験生の皆さんなら私と違って覚えていらっしゃるかもしれませんが、本記事の冒頭で実務家の先生から頂いたお言葉について言及しました。
それを私なりに要約すれば
「旧司時代から一貫して、司法試験は条文を起点とした紛争解決処理能力の有無を確認しているに過ぎず、知っている/知らないという低次元の問題で合否が決まるわけではなく、(知らないと言って”撤退”すればもちろん点数はつかないでしょう。)
何か使えそうな条文はないか、
使えそうな条文は、本当にその場面で使えるのか、
を制度趣旨から考える。
そして条文の全要件に問題文の事実が該当するかを検討しきるだけでいい。
あくまで条文の適用上の不都合性を処理するために判例が用いられているに過ぎない。
実務家は相談を受けた際、①まずどの条文だろう?→②直接適用できそうな条文なさそうだ、判例はどうだったかな?
という順序で考える。
実務が条文を起点としているのだから、試験でもそうあるべきだ。
それを念頭に置いて学習してほしい」
というものでした。
当然、予備試験においても妥当する話でしょう。
なお、筆者は判例を軽視していません。この点については以下参照
問題類型:予備試験で現場思考しないで済む問題ってなくね?
ここはかなりフランクな話ですが
予備試験の問題をあるたった一つの観点からみると
(A)既視感のある(≒どこかで解いたことのある、素材になっている判例のことも、そこでなされた判断の概要も把握し、その規範も暗記しているし、理由もある程度挙げられるような)問題(一般に典型問題or基本問題)
(B)あまり見覚えのない問題。
(どうせ)争点になるであろう「問題の所在」に対する規範も理由付けも一切知らないか、なんとなくうっすら知っている。
結局カギを握っている条文ないし、元ネタの判例は短答でちょろっと出てきたか、一応百選(のappendix)に載っていたか、重判だったか、アメリカの有名な判例だったとか、試験委員の誰かの最近の論文とテーマが近いとか、スポットライトをあまり浴びてなさそうな上記のどれでもないやつ、等その辺の。(これらが「傾向を変えてきた」「難化した」「論パでは対応できない」「予備校オワタ」「パターン化の弊害」「判例軽視の代償」「Cランクまでやらないとうからないんだ」などと叫ばれる原因になるやつ。多分。)
(ちな「傾向を変えた」っていうのは予備試験R1とかくらいの答案の構成が大きく変動するくらいに、答えるべき「問い」が変わるようなものを指すと個人的には考えているノビ。)
の2種に大別できるでしょう。
(A)と(B)をどう扱うかについては
私が敬愛する4S基礎講座を開発した中村先生とそれ以外の予備校といってもいいくらい均一的な対策が敷かれています。99.9対0.1くらいの体感
(個人的には優劣の問題は生じないかと)
(というか既にこのABの分類自体99.9寄りではある。読み手に分かりやすいことこの上ないもんで)
従来から(ずっと変わらない)の予備校の対策としては
「捻りのない」基本問題と称して
旧司やロー入試(それこそ”捻り”のある一橋ローや事実関係が見かけ上予備よりも複雑だったり制限時間のわりに時間のかかる設問を出したりする慶応ローのような問題も含めて)、なんなら予備試験、オリジナル問題などから構成された問題集を一定の範囲として切り出し、
「この問題と類似の”論点”が出題されていればそれは基本/典型問題です。見た瞬間に答案の一行目から最終行まで何をどのように書くか具体的にイメージができなければなりません。あとはそれをなるべき速く書ききるだけです。”他の受験生に書き負けないようにしましょう”。つまり何回も反復して答案構成して、答案を完璧に覚えてしまうくらい読み込みましょう。」
「この問題集に載っていない問題は現場思考問題です。趣旨からさかのぼって規範を定立し、あてはめをしっかりしましょう。守りの答案です。」
というようにメルクマールとして受験生に提示します。
先に断ってしまえば、その他の要因も当然ありえますが(そもそもぬるま湯につかったような努力しかしていない/帰責性の有無を問わずいろんな意味で準備不足/当日のアクシデント)
実は(A)に該当する問題でも所謂「B」と判断してしまう受験生も存在すると思います。
(例えばこれまでの予備試験行政法では原告適格や処分性{という所謂予備校ランクでは、AAAランクともいえ、King of (A)くらいの地位を占める問題といえます。)が幾度となく出題されてきましたが、この問題に答えるにあたって必然的に個別法の解釈が伴うところ、この個別法は毎回異なりますし、読み解くべき仕組みないし、そこにある問題点自体も決まったパターンがあるとは断言できず(特に令和の設問)、そういう意味では、試験会場で初めて見て、自分一人で考えて、結論を出して、条文以外のアシストなしで、解答しなければならない性質があり、その意味でむしろ従来的には(B)と呼ばれる問題としての側面があるとも言えます。
要するに、
予備試験で現場思考しないで済む問題ってなくね?
ってのがまず一つ(なぜなら要件充足性の検討と効果発生の有無、その他「問い」に応じた)ここで述べておきたい帰結です。
その意味でABの分類は相対化します。
ですが便利なので、以下継続使用します。
次に
(B)のなかでも
【一見手も足もでなさそうなやつはどう対策すればよいか】
という問題が残る。
なぜなら原告適格処分性と違って、思考の枠組みすら事前にはわからないから。
〇び太「ド〇えも~ん。初見の問題でも合格答案が書けるようになる道具出してぇ~」
ドラ〇もん「まったく君はいつもそうやって道具に頼ってばかりで情けない。。しかし頼まれたら嫌と言えないのが僕の性分。。しょうがないなぁ~」
「「「「「「「「「「かこも~ん」」」」」」」」」」
(新旧どっちでもお好きな方で脳内再生してください。私はどっちも好きです)
で、これに関しては
まず
①出題範囲についてのある程度体系化された思考ルート≒処理手順の枠内で対処(大枠の確定)
例:R6の予備刑訴
→まず、処理手順というかある程度の汎用性(∵すべての予備試験を”出来レース”にしてしまう完璧な教材は作成不可能)のある思考フローを明示している教材であれば、
「証拠パターン」などとして317条や自然的関連性→法的関連性に関する諸問題についての体系枠組みをある程度示しているはず
(え?この辺関係してたよね?(´・ω・))
②そこで次に枠内での検討
・当該問題は理論体系のどこに位置するかの検討
・検討を要する条文の有無、要件充足性、必要に応じた現場思考での規範定立
などはその場で自力でやる必要がある。(というかその能力を書面=答案を通じてみようとしている。)
【シュレディンガーの予備論文?】
こういった受験生を面食らわせてSNSを賑わせる問題に関しては出てくるまで分からないというのが正直なところ
何が出てきて、そのうちの何を聞いてきて、その聞かれていることに答える過程で、潜在的に何が問題となるか、は試験委員のみぞ知る。
だからこそ、不明な出題に対して
なるべく同じ水準の問題で
「(;゚Д゚)」
「(-ω-;)」
「(´ε`;)」
「(´・ω・`)」
「(´;ω;`)」
「(@_@)」
みたいな疑似体験を繰り返して不可避的な現場思考の対応力をつけるほかない。(現場での対応が具体的になにかは上で述べてます。規範なり条文なりの要件充足性やそれに付随する法的議論の話だと思ってます。)
その意味で
過去問をなるべく本番に近い環境で解くことが重要
になる
理由:比肩する水準の問題が存在しないから。これはある程度学習が進んでいくと自ずとわかるところなのでピンとこなければ気にしなくていいかもしれません。
言ってしまえば4S基礎講座は上記(A)(B)のような分類はせず、何であれ出てきた問題で条文や理論体系を手掛かりに問いに答えきる法的思考力や種々の現場判断等の総合的能力の習得を目的とした講座だと勝手に考えていたし、そうした能力を過去問と併用することで鍛えることが購入した目的だった。
(そしてその能力を鍛えられるコンテンツが十分にあったと思います。)
*予備校の講座とか書籍とか、利用目的を厳密に定義したほうがいいっすよまじで。
使ってくうちに、あ、これにも使えんじゃん。みたいに用途が拡大縮小することはOKとしても、
「みんな使ってるから(無目的に)買う」→×
「みんなが〇〇(例:百選判例)を××という目的(例:判例ごとの簡潔な事案や問題の所在理解して予備校の論証集を修正する目的)で使ってるから同じ目的で使おう」→◎
みたいにしないとお金がもったいないし、何より消化吸収が受験生相対比でレベルが低いまま本番迎えて失敗するリスクあります。
(こうした思考フローにフォーカスした教材はそんなにないが
講義:私が購入したのは以下の三つ(アフィリエイトなし)(①②のうち、4S以外は①にフォーカスしていた。4Sは①②をこれでもかと丁寧に一緒に検討していく講義であり、強く推奨したい。)
市販教材:一応載っているが、「気づいている」人でないとこれを読んでも習得は難しい気がする。つまり「確認」の用途にしかならない。(②の習得にはある程度有効)
BEXA
・4S基礎講座
・論文処理手順ノート(旧版購入)
アガルート
・答案の「型」講座(旧版購入)
辰巳法律研究所趣旨規範ハンドブック
4-1-2 各論
こっからは具体的な話です。
予備校を利用するなら一般的なルートは
A入門講座→B短文事例問題集→C過去問
となるでしょう。
以下これに準拠しますが、
結論を先取りすると
過去問→入門→X過去問→Yベーステキスト+調べもの(基本書)+暗記→過去問(以下不規則にXYが連続)
というのが推奨というか、初めからこうしてたらなぁ。。なんて思うやり方です。
A入門講座について
・分かりやすい
・理論体系などの科目ごとの大きな枠組みや主要な条文そのものに書いてあることの意味が最低限分かる
なら何でもいいので、ここで肩ひじ張って色々吸収しようとしないほうがいいです。満足感しか残らないので。
ここに拘り過ぎるのはNGかと。
B短文事例問題集について
私見をいえば、過去問の下位互換だとは思っています。
目的としては
・法的思考/手順の習得
にあって、それが分かったらさっさと過去問に移った方がいい(って合格者の多くの方が口をそろえて言いますよね)と私は思います。
短文事例問題から得られることは大抵過去問でも得られます。
【主要な論点を短文事例問題で学ぶのはタイパが悪い?】
ここで主要な論点について網羅的に学ぶという人も多くいるようですが、
主要な論点はもう既に出題されているし
そこから漏れるものについてはほとんど短答既出範囲でカバーしてるので実は短文事例問題固有のメリットってそんなにないんじゃないかと思ってます。
しかしながら
短答以外からも出ているだろというご指摘もごもっともなので、
ではそうした問題についてもどのように対策すればいいか
受験生の属性に応じて場合分けしてやり方を考えてみました。
以下場合分け
[I]答案の書き方が分かっている、かつ、論点の内容さえ理解していれば事例を初めてみても解ける場合
→短答対策として
①過去問集の解説
↓理解が不十分
②基本書(→それでもダメなら判例集の解説→これ以上は時間かけすぎとして戦略上好ましくない)
という流れを経る過程で、
論文未出事項についても短答対策に必要な限度での理解記憶があるはず
→余裕があれば短答後に(趣旨規範等で)想起し直す。
更に短答範囲からも漏れる(≒そもそもの出題可能性がかなり低い点に注意)
→趣旨規範等を用いて規範理由付け暗記
でカバーできるはず
(もっと余裕があれば、百選までなら射程に入れて事案の概要、問題の所在、規範、考慮要素、理由を覚えると多分上位合格が狙えるのかもしれません。
重判>複数の基本書>論文レベルはもう受験生が足を踏み込むところではないような・・・)
[II]答案の書き方は分かっている、かつ、事例問題を通じて知識を吸収しなければ(=一度解いた問題でなければ)、どうしても、本番では合格水準の答案が書けない場合
基本書や判例集等でのインプットを答案上で自分なりの言葉として表現できないということになるので
そうしたインプットをせず、網羅性の高い問題集/演習書(スタンダード100)をとにかくやり続けるということになる。
だが限界はあるので、解いたことがない問題は合格水準の事が書けない可能性がある。
→総合点で合格ラインを上回るようにする必要がある(その割合などは完全に運)
とここまで書いてそれはあまりにも鬼畜なことを課すことになるし、効率は悪いしでなるべく[I]のやり方でできるようにした方がいいっすよね。
多分ですけど、その場合
・①法的思考ができてない
(問題文の事実を見る
→訴訟の当事者=原告or被告の主張を考える
→かなえられそうな条文をまず探す
→必要に応じて判例を参照する
→使えるなら規範として使う
→使えないなら問題の所在に応じて自分なりに条文の解釈か0から規範を作る
→要件充足性と効果発生の有無の検討=あてはめ
→問いに対する結論を出す
のどこかのプロセスを自力で思考する能力が鍛えきれてない)
・②考えたことを採点者が評価できるような文章に変換する答案作成能力がない
(合格者答案や講師答案の意味内容も理解できるし、その文章構造も理解できている、答案を書くに至る思考フローも分かる、だがそれを自分で処理して文字化できない。
又は
自分の答案を客観的に見る視点が養われておらず、客観的には書けていないor不十分なのに、書けていると自己判断してしまっている。
・時間以内で書ききること
・そのためのタイムマネジメント
も含む)
が原因だと思っているので
①なら思考過程をしっかりごまかさずに言語化している解説講義(書籍)を利用し、反復演習する
例:4S基礎講座。書籍は以下のシリーズ(すべてアフィリエイトなし)
*購入したもののみ掲載。
実践〇法シリーズなども市販ではあるので
実際に読んでみて、
思考過程がそのままトレースできそうならなんでもいいと思います。
(≒初見の問題でも真似して問題文の事実から条文や判例を想起したり、問題の所在を発見したり、その他細かい注意点や考えるべきあれこれを真似してできそう。いうなればその講師or筆者ならこの問題こうやって考えそうだな、と自分が上記先達の下位互換として思考できそうか。そしてその思考並びにその結果の言語化としての答案が合格水準になりそうか)
上記対策をやりこんでも②の課題が残る場合
この段階になったら答案添削や個別指導を依頼した方がいいかもしれませんね。
【予備試験で「ここ〇研ゼミでやったところだ!」は来るのか?】
*ちな
スタ100はR6予備でいうと
民法の失踪については事例問題あり
(⇔短答既出かつ、趣旨規範掲載あり)
刑訴はなし(のはず。R2予備一事不再理効は100%なかった)
{短答/趣旨規範共になし(のはずです。)}
つまり事前に「ここ〇研ゼミでやったぞ」の如く、万能感を以て本番を迎えることは不可能
→その場で凌ぐ必要があると想定して事前にできる限り効率的に準備する
と腹を括った方がよさそうですね。
C過去問
過去問演習の量と質が合否を左右するというのが予備試験受験の経験で確信していることです。
ですが
【過去問は万能薬でない】
これは過去問さえやっておけば自動的に受かる≒過去問演習ですべての対策が完結することを意味しません。(このような態度での学習は過去問演習の”質を下げる”と考えます。)
(日本で「最難関」と称される(実際の「難易度」は個々人によると考えているので本当はそんなものはないと考えているが利便性が高いから利用)試験はいくつかありますが、私が実際に経験し、突破しようと分析したことのある「最難関」と称されるこの試験(東大2次と予備試験司法試験)は試験の趣旨から一貫した出題を貫いているため*(争いあり)過去問を分析したり、実際に解いて体感しないと分からない知見を得たりする意義が大きいようです。(以下東大はどうでもいいので略))
では
【過去問とはどのように利用したらよい】
のでしょうか。
主に①最初期②脱入門期以降の二つの時期に利用すると考えます。
時期
①受けると決めた瞬間から
②可及的速やかに≒法律の概要が分かって、答案作成での思考過程もある程度分かったとき
目的
①そもそも予備試験論文式試験の到達点を合格者再現答案から知る
→問題文にかいてあることがたくさん答案に書いてある
→条文を使っている
→なんだかよく分からない部分もある(後に法的理論や規範と知る)
くらいのことを把握して、答案像=最終到達地点を知る
②
・自分の現在のレベルを把握→到達点≒合格者答案のA~C(科目や戦略による)との差異を確認
例
最初に指摘した条文は正しかったが、その後論点の処理が不正確だった。
原因の考察:
問題の所在を理解していないのか?
規範≒論証を覚えていないのか?
それらは分かっているが、事例でどのような事実関係にあるとき、そのような問題が生じるかについて分かっていなかった。
→その差を埋めるためには具体的に何をいつまでにすればいいかを考える
例における対策:
問題の所在への不理解
→即座に予備校テキスト基本書の当該箇所を見る
→それでも分からない
→短答対策と平行して問題演習を周回するうちにわかる可能性がある
→2周(数字は例に過ぎない)する間に基本書を見ても分からない場合でかつ、そこを理解していなければ(伝聞のような重要事項で出題可能性が高い)、不合格の可能性が高い(∵受験生は対策し理解している推定が強く働く)ので、その場合は図書館等で他の基本書で確認してみる
→必要に応じて学習方法/計画を変更する
インプットアウトプットの比率等
使用教材を変えるのは最後の手段
・講師答案等裏付けの取れた完全解(?)的答案で正確な表現も含め知識面の確認をする
→合格者答案も含め、自分の答案をよりよくするための実践的な表現や構成について学び取り入れる
*完全解を神格化しすぎないためにも、複数の完全解を見て、その違いにも留意すべき(辰巳ぶんせき本の答案と予備校の過去問講座の答案など)
・論文式試験そのものへの解像度を上げる
(色んな犬種(チワワ、柴犬、ペキニーズetc..)を1匹1匹見て「犬」という概念を理解し、知らない犬(例:ダックスフンドを知らない)を見てダックスフンドは「犬」と判断できる。「狼」や「狐」ではないと分かる。
これと同じようにH23~Rk年(k:自然数で和暦を表す)までの問題を分析する→「予備論文」がどのような試験か理解する→R(k+1)年=自分が受ける年に向けてどのような対策をすればよいかが分かる=方向性の間違えた努力を回避する。
→この過程で、誤った方向に対策していないか自力で確認できるようにする
過去問は解けるが本番では合格答案が書けないという事態を避ける
・当日までに起こりうる避けるべき事態を列挙し、それぞれの対応策を考える
例
憲法(K)/行政法(G)をまとめて140分で解くことになる
KできそうGできそう
KできそうG難しそう
K難しそうGできそう
K難しそうG難しそう
の4パターンに応じた時間配分や、その時の所感と実際がずれていた場合にどのように修正するか
→途中答案を回避する、他の受験生よりも相対的に得点率が下がらないようにする。など
このほか、想定していたどのパターンにも当てはまらない(ということはまぁないと思う。∵例えば憲法で、憲法上の権利として構成できないような主張=どの判例にもないしどの問題集にもないについて論じさせるみたいな問題は出しても意味がないので、(「保障なし。以上。」)、必ず構成できるはず→憲法ならいざとなった時の13条でどうにか粘る、でいけるはず)ときの対処法など
合格ラインとのギャップの埋め方について
その年の論文のどこが合格ラインかはまさに相対的な問題で、全科目C答案なら受かるとされているところ(一応の水準との名前を冠するし)、その答案(できれば複数で公約数的な共通因数を特定した方がよい)から個別的に推定していくしかないかと思われます。∵採点基準方法はブラックボックス
しかし、法的思考+知識理解には一定の段階があるのでそれに応じて不出来を埋めていくというのは
ある程度汎用性のあるやり方でしょう。
思考例
・当事者が分からない
予備ではあまりないですが、民法や憲法では割を食うのはだれか、つまり損する人を探すと見つかるというのが体感
・当事者の願い=法的主張が分からない
問題文の読解ができていないなら、事例を通じて訓練する
こうした主張をしているときは、実際は法的にはこれを求めている、というのをある程度ストックする
・当事者の願いを叶えそうな条文or法的構成が分からない
知らない
→基本書等の該当箇所を読み、記憶すべき事項があれば、一元化なりの暗記リストに入れる
知っていたが、出てこなかった
→事例問題を解く時の思考回路形成の練度が未熟なので、反復演習すべき
・論証が書けない
丸暗記するものとパーツだけ覚えるものを仕分けする
まずは規範を暗記。
理由付けは理解しているから言語化できるという状態を目指す。
・あてはめがよくない
要件に該当する事実がなにか
典型的なものなら、該当しやすい事実をストックする。
あてはめ=事実の適示+評価(≒なぜ要件にその事実が該当するかの理由)なので、巧拙が出るとすれば、評価の部分
それは、常に他人の答案をみるとき、自分で問題を解いているとき
「なぜ?」というのをつきつめる
甲がナイフでAの頸動脈めがけて切りつけた行為は「人を殺」す行為にあたり、殺人罪(199条)の実行行為といえる。
↓なぜ?
①甲は刃渡り15cmと長く、鋭利であり、Aの頸動脈という人体の枢要部めがけて成人男性で力のある甲が思い切り切りつければ、Aが創傷からの出血多量で死ぬ危険性があるナイフでAの頸動脈を切りつけた。この行為は殺人罪の構成要件的結果発生の現実的危険ある行為といえ、「人を殺」す行為といえるため、上記行為は殺人罪(199条)の実行行為に該当する。
↓なぜ?
②甲とAは長年交際関係にあったが、甲は別の女性と結婚し子供が2人いた。
Aは会うたびに離婚するよう執拗に迫るAに日頃から嫌気がさしていたところ、甲とAが令和7年3月20日午後2時にあった際にAは「別れてくれないなら、私たちの事週刊誌に売り込むから。あなたは終わりね。」と告げた。これを聞いた甲は自らの政治生命がAによって絶たれてしまうと考えて逆上し、その場においてあった刃渡り15cmと長く、鋭利であり、Aの頸動脈という人体の枢要部めがけて成人男性で力のある甲が思い切り切りつければ、Aが創傷からの出血多量で死ぬ危険性があるナイフでAの頸動脈を切りつけた。この行為は殺人罪の構成要件的結果発生の現実的危険ある行為といえ、「人を殺」す行為といえるため、上記行為は殺人罪の実行行為に該当する。
ここでは私のこの答案の出来がよくないという問題と実際にここまで刑法でかくかはいったんおいて
まず、
①問題文の事実とは無関係に、説得力を増す記述のつけたしが可能な段階がある。ナイフが云々というのはある程度事例問題では記述されることが多く、刃渡りやら、先端がとがっているだのという情報は類型的に予測されるので、事前にどのように答案で用いるか事前に準備している領域とのいえる(本番での裁量が小さいあてはめの工夫)
一方
②の事実は、問題特有の事情で、ここで使うべきかの当否はさておき(多分故意の認定とかに使う)、刑法に限らず、余裕さえあればこのように可能な限り周辺情報も、説得力を持たせたり、読み手が理解しやすくなる限度で加えていくとよいらしい。
ただ例は多分やりすぎたので、現実の過去問と再現答案で確認してみてください。
手段
・実際に時間を測って(なるべく同じタイムスケジュール=土日の午前9時台から)、解く
→なるべく全部書く(or詳しめの答案構成)
とにかくここはその人の本気度というか踏ん張りどころというか逃げないというか努力というか克己心というかディシプリンというかストイックというか
とにかく量をたくさんこなすのがいいと思います。
やっているうちにここはもう大丈夫(n回解いてもn回とも同じ水準の答案(のパーツ)として吐き出されるし、これ以上向上できないorする必要がない)っていう領域が段々広がって勝手に効率化していくと思うので
ここはねちねち考えるとやらない理由をいくらでも思いついてしまうので頭でっかちにならずに泥臭くやるしかないっぽい
ただ、繰り返しになりますが無目的・無反省で周回することだけを目的とするのはやめた方がいいです。
世界公平仮説に則り、つらい思いをした、こんだけペンを使った、ノートに沢山書きなぐった、手が痛くなるまで書いたから、受かるんだとは考えるべきではないです。
毎回の正確な分析反省改善が施された修正があるからこそ量を重ねる意味があります。そうすればやればやるだけ自分が合格ラインに近づくはずです。(グラフにしたらギザギザで上がったり下がったり急上昇したりと綺麗な線ではないと思いますが)
実際に解いてみて、何が改善点なのか(=合格ラインとの距離)は受験生一人一人異なると思うし、筆者にも予測できないようなエラーは存在すると思うので、その全てを一覧にして列挙できません。必要に応じて個別指導や添削など利用できる方は利用してみるのもよいですが、最終的には自力でできるのが望ましいと思います。
なぜなら本試験現場で自分の思考{ないし答案(構成)}をその場でより得点率が高い方に修正できるのは自分しかいないので
頭の中or答案構成の複数の解答筋のうち、どちらが良いのかを判断して決断するのは講師にはできません。自分でやるしかない。だから選球眼(自分の答案を評価する能力)を養ったほうがいいです。
では
【具体的に評価される≒相対的に得点率が高い答案とはどのような答案?】
現状ある程度の信憑性のあるリソースは
・再現答案
・予備司法試験の出題趣旨と司法試験のみに存在する採点実感
の二つしかないと思います。
・再現答案については
自分もやってみて実感したのですが、意外と何を書いたかは時間が経過しても覚えている(1か月以内に書いていればそれなりに再現できていると思いました)
一方で
本番という極限状態だからこそ出力できたものもあり、細部までは覚えていないという実感もあるので
・答案の構成レベルの枠組み≒答案の全体的な流れ
・規範(常に一定)と主要なあてはめ
などについては原則的には殆どそのまま再現できていると考えてもよいではないでしょうか
しかしこれも当日どこまで想定通りにできていたかなどの事情にもよると思うので、その点に留意が必要でしょうね。
再現答案の検討方法については前述したので重複しますが
A~Cラインの人が何をどこまでどのように書いているかということを把握することも重要でしょう
所謂「基本」分野については合格者というかA~Cくらいだと大きくは変わらないと思いますが、
応用的というか悩みどころの部分(≒本番でどうしよう。何かこう。分からんってなるところ)でどのようにいなしているかなどは個性豊かで参考になる記述が多いような。
同じくらい重要なのは、D~F答案のどこがよくないかを検討することでしょう。
辰巳法律研究所のぶんせき本では低評価答案が載っていないので、あまり言及できませんが、
具体性を欠いていて用意していることしか書いておらず本文に書いてあることを無視している答案がそのような評価になっているのを目にしました。
あとはやっぱりどうしても「論点」はあるので、そこへの記述がないとか、適示すべき条文がない・間違っているなども点数が振るわなくなるということは想像に難くないように思います。
・出題趣旨
これについては詳しさでいうと
司法試験>予備試験
ですが予備試験も年によっては結構求められている答案像が読んでいるだけでわかるような年もあるかな、という感じですね。
ただ、記述かつ相対評価の試験で、試験から数か月後に合否発表があることからして、一度暫定的な(おそらく出題趣旨に沿うような)採点基準でいったん何らかの点数ないし基準を出したのち、その年の合格者数などの調整を経て、修正された採点基準によって採点してるのではないかと推測します。
(どことは言えませんがとある入口が有名な大学ではそのように受験生の答案に基づいて採点が修正されるという話を聞いたので、記述で出題すると極論受験生がなにを書いてなにを書かないかの予測は難しいでしょうから)
・採点実感
これは予備試験にはないです。よって直接関係はないです。
ですが、筆者が司法試験と予備試験は同一趣旨に基づいいている地続きの試験と考えているので、似たような採点がなされているというのが私見です。(受験相場もそんな雰囲気ですよね)
これを全て鵜呑みにしては延々と合格方向からずれてしまうリスクもあるように思いますが
個人的に重視しているのは
「〇〇については十分な記述がなされている答案は
半数(2/3)を越えた」
→相対評価上できていなければならない。
そこの評価分の点数を殆どの上位半分が取っていると推測される
「○○についてできた答案は少なかったができた答案には高い評価を与えた」
→おそらく上位合格ライン
余裕があれば、どうすればそれ記述しようという思考に至るか検討するとよいのではないでしょうか。
あと全体的な傾向としては法律論やあてはめでの説得性が見られていると感じます。
これは
厳密に正確な法的議論をせよということではなく(もちろんさすがにという限界許容ラインはあります)
受験生が持っている法知識と(使えるものがあれば)条文と問題文の事実から発生する法的な問題についてそれらを総動員して一発アウトレベルではない一定水準の議論に説得力がある(筋として成り立ちうる)かどうかというのが見られていて、説得的で法的にも相当程度正確性があるなら評価が高めになると推測しています。
∵それが実務家に求められる素養の一つらしい
このように抽象的にやいのやいの言ってもあまり中身はないので
大事なこと:【過去問を解いて、実際にこれらの資料と突き合わせて、具体的に検討していくしかない】
と思います
そのうち、法則性というか、特徴が分かってくるはず。
皆さんにとっては常識で釈迦に説法かもしれませんが
数学の問題で、確率と数列の規則性が融合した類題がないような初見問題で、与えられた規則に従って具体的に計算したり図表かいたりしているうちに、規則が見えてくるという「アレ」です。おーん。
過去問と自分が受ける年の問題の関連性
これ従来は
実務基礎≧刑訴≧刑法>商法≧行政法>民訴>民法≧憲法
くらいの感じで一回やったことが再度出る可能性があるって言われてたと思うのですが
R6予備が結構変わり種的な出題だったようで
やっぱりどうなるかは分からない
とすると遡って
予備試験が
実務家登用試験の前段階の試験で
知識量の確認ではなくて
実務家くらい専門的知見が蓄積した場合に実務家としての思考判断ができそうかを確認しようとしている試験だ
というところから、
全科目全設問を奇を衒うような
学者先生が「(*´Д`)ハァハァ」としていらっしゃるような出題ばかりになるとは考えにくいです。
やっぱり基本的な学識と法的思考の練度で相対的に合否が変わる状況には今後も変化はないと思います。
受験生が使う道具も大きくは差がないはずです。
予備校テキスト(知識系)
基本書
短文事例問題(私はもし使うならなるべくスリムなやつがいいと思います。もし私のようなスペックなら)
過去問
これらからどれだけ多くの事を吸収して血肉にし、弛まぬ訓練によって事例問題”限定の”思考速度やその正確性をどこまで高められるか
そこで勝敗が決するのではないでしょうか。
総括
ここまで書いてみて、肝心の論文式の部分で、科目ごと分野ごとにここがあーでこーでうんぬんみたいな話を期待していたのにそれが薄いじゃねぇか!とお怒りの方もいらっしゃるかもしれませんが
短答式と異なって、出題変動に幅もあるし、正直頻出部分は司法試験も併せると一巡しちゃった感もあり、R6の動向からするに、なにが出てくるか予想が難しいということもあり、ある程度幅のある記載となってしまいました。これは記述式の出題では、どの段階で躓くかというのが本当に人によって様々で、事前に落とし穴を網羅するのは(今の私の力量では)無理だなと判断したためです。
暫定的なものならまた別の機会に出せるかもしれません。
私は合格者でもないのに、合格するには~みたいな話を考察とはいえ、出してしまったことで袋叩きにあわないか心配していないと言えばうそになりますが、誰か一人にでも、どこかの一節だけでも、役に立てたなら幸いです。
もし、良いと思っても、悪いと思っても、投げ銭制度も使ってないので、拡散して毀誉褒貶してもらえたら喜ばしい限りです。
最後まで読んでくださった方(がいらっしゃれば)ありがとうございました。
華金なのに深夜4:17までパソコンとにらめっこをしながら