元東大生による予備試験で東大生に勝つ方法の考察
この記事は
司法試験予備試験においてしばしば言及される
「受験生は東大生を筆頭とする優秀層と席の奪い合いをする(んだから相応の覚悟で望みなさい/勉強しなさい)」
という(主に指導者側から)出される意見/助言に対して
①そもそも追い越せ追い抜けする必要があるのか
②勝たなきゃいけないならどうやって勝つのか
ということについて
(一応)大学受験というフィールドで東大志望の受験生の中で合格定員に満つるまでの争いで相対的には浮上できた筆者なりにその後大学等で見てきた"優秀な人たち"の実態を踏まえながら考察していこうと思います。
以下諸々の便宜上、相対評価の試験を得意とする人達(とされている主に大学受験において合格難易度の高い大学に入学した人々)のことを「優秀層」と定義しますが、それ以上の価値判断を含んでいないことに御留意下さい。
難関大学在籍者ないし出身者を貶める意図は一切ありません。
できれば「本音」の部分で書いたところをお読み頂けるとありがたいです。
そうした経歴を持たない方を侮蔑するような意図も一切ありません。
どんな属性の方でも司法試験系受験生なら皆さんに合格してほしいと思っています。
そのような筆者の意図を踏まえて以下お読み頂けるとありがたいです。
私が言いたいのは、過度に経歴やらに拘って努力の方向性や量や質が不合格に傾いてしまうようなことを避けてほしいということです。
①そもそも司法試験予備試験において、「優秀層」を意識する必要があるか?
それって貴方の感想ですよね??ねぇ、、、答えてよ、、、!!
以下の資料は文部科学省の公開している令和5年予備試験の最終合格者に纏わるデータです。
https://www.mext.go.jp/content/20240227-mxt_senmon02-000033945_4-7.pdf
上記データによると在学既卒含め
東大 130
慶應 56
京大 41
早稲田 38
とこの時点で最終合格者479名のうち、265名と約55%を東大京大早慶出身者で占められていることになります。
もちろんその他の大学も伝統と知名度を誇る錚々たる大学がひしめき合っているという状況です。
大学別に見れば、合格率が二桁に達しているのは東大と京大のみということになります。
このデータがあくまで自己申告に基づくものであることを割り引いても、
「積極的に匿名性のある記入要項で出身大学を偽る人がマジョリティである」
とは考えられないのである程度信憑性のあるデータと言って良いでしょう。
とすると、
客観的には
大学受験において最難関と言われている大学に合格した経験のある人達が合格者のおよそ2/3を占める
と言わざるを得ないようです。(R5に関しては)
なので、見方によってはそうした層と
肩を並べ、あるいは追い越す必要がある
という結論が導かれ、それはとても困難なことのように思えるでしょう。
陥りがちな誤解
しかし、
実はここにも重大な誤謬をはらむリスク
があります。
ここで意識しなければならないのは
司法試験予備試験と大学受験はそもそも関係ない
ということでこれは様々な意味を持ちます。
まず
司法試験系と大学受験は直接的な関連性が一切ありません。
具体的に言うと共通テストの点数が加算されることもなく、東大の二次試験に受かったら短答が免除される訳ではない、ということになります。
これ自体は大した意味を持ちません。
次に、より重要な点として
内容面として重複する要素が少ないと言う点があります。
大学入試は基本的に大きく英数国社理と分類することの可能な科目から出題されます。
これらと重複しうるのは予備短答一般教養のみ60/270です。
難関大学合格者というのは
一つの観点から言うと、これらの科目についてのクエスチョンを解くことが得意な集団に過ぎず、このことは必ずしも法律実務家登用試験で相対的に得点することを何ら保証しません。
例えば、
小学校の間アメリカにいた
↓
∴英語に全く抵抗もなくリスニングも特段対策は不要で、多少受験的語彙や文法などテクニカルなところを詰めるだけで済んだ
というようにその人の固有の属性や環境が科目の得点率に影響を及ぼすことは大学受験科目ではありうることですが、
世界中どこに住んでいても、
親からどんな遺伝的特質を受け継いでいても
幼少の頃から
論証を誦じることができた。
事例問題を高速で処理できた。
要件効果を検討できた。
などという人は存在しない(はずです)。
そのような意味でどのような大学入試を突破したかということ自体が、司法試験系の合否に影響を及ぼすことは考えにくいといえるでしょう。
とはいえ、データから言えば集団として予備試験合格率が高いということは言えそうです。
それがなぜか?という点について以下考えてみましょう。
合格率の高さはどう説明するの?
64%という数字は決して無視できるものではありません。
優秀層は前述したように、英数国社理の問題を解くことにおいて優秀な集団です。
法律の事例問題とは関係がないはずです。
ではなぜ、このような現象が起きるのか、、、
これについては
わたしの記事で触れていますが、予備試験は「相対評価のペーパーテスト」という点で大学受験と符合しています。
よって相対評価のペーパーテストにおいて有益なことは、予備試験対策においても有益となりえます。
共通する要素として①能力②経験値③環境の観点から敷衍していきましょう。
1理解と記憶
大学受験に限らず特定の能力技術知識などを備えているかを書面で確認する目的で試験を課す場合に、そのテストにおいて合格点を取ることを目標とすると、その過程の試験対策(勉強)において必然的に「新しく知ること」が発生します。
(1)まずこの新しい概念について(自身の既存の知見と照らし合わせたりしながら)”理解をする”というプロセスが必ず介在します。
この”理解をする”という行為は言語を介してなされる以上、
言語を読み取り意味を解釈するという処理が行われるはずで、
・どれだけ言葉を知っているか(特に抽象的な表現)
・未知の言葉を理解するという行為をしてきた経験とそれによって鍛えられた思考回路
・日本語を読み内容を正確に把握する能力
など
の有無ないし、その程度によって、この処理の難易度が変わる可能性があります。
個人的には「分からないものを問題演習等による試行錯誤を経て理解した」という経験を重ねてきたことによる理解の及んでいない事項に対する扱いの巧拙は差がつくところではないかと推測しています。
特に試験範囲の広い司法試験系においては「分からないこと」については以下のようなプロセスを経て情報処理を行うべきだと思います。
I「分からないこと」は当該試験の合格ラインを越えるうえで必要な知識か
II必要だとして、必須レベルか、可能なら抑えるべきものか
IIIその知識は内容を把握していればよいものか、解答するに際して答案に明示しなければならないキ-ワードが存在していてそれは覚えなければならないのか、丸暗記しなければならないのか
IVそれはいつやらなければならないのか、どのような方法でやるべきか
を判断する必要があります。
おそらく優秀層はこの判断の相場を見極める能力が高いように思います。
彼らは経験値から自分がどこまで覚えていればどこまで求められている水準の答案を作成できるかを経験から感覚的に又は客観的にメタ認知して把握できているないし、把握するのが速いと思います。これは今までの受験経験の豊富さないしはその過程で自己分析が済んでいるからこそ高速で行うことができるのではないかとおもいます。
本音を言えばI~IIIは予備校がやるべきですが、明示的に言及する講座があればぜひ教えてください。
(X(旧Twitter)上ではレックの矢島先生の速修インプット講座がそのようなところまで言及しているとの投稿を見ましたが、直接見たわけではないので明言は避けます。なおリンクはアフィリエイト非提携です。)
IVの計画立案の部分についてもその経験値の差によって巧拙あるように思います。
(2)次に、こうして一度理解した概念を(なお、無理解のまま丸暗記することは筆者は非推奨です。)、覚えるということが必要になります。
”覚える”という行為については
・短期記憶と長期記憶の存在や科学的な裏付けの取れた効率的な暗記の方法という知識ないしその体感の有無
・そこから合理的かつ自分自身にあった学習方法を確立できているか
といったことでも、同じ試験の同じ範囲を対策するのにかかる労力やコストが変わってくるでしょう。
入門期の不可避的なインプットや問題演習後の復習段階、ひいては日頃の暗記に至るまで理解記憶ということを絶えず行っていくことになるでしょうが、大学受験までにこうした事項について自覚的に行っていたのせよ、無意識に行っていたにせよ、その蓄積や経験は司法試験予備試験において求められる知識理解において直接適用できるので、その点において優秀層の受験生が極めて不合理不適切な間違った対策をするということは考えにくく、スタート段階で日々の学習の基礎的な盤石が固まっている可能性の方が高いと言えるでしょう。
2国語力
次に優秀層は先天的ないし後天的な経験(多くは負荷のかかった学習経験)によって一般に「国語力」と呼ばれる能力が高いです。
(これは余談ですが東大で教鞭をとる複数の教員が声をそろえて「東大生に共通する能力は国語力が高いこと」と仰っているのを直接耳にしたことがあります。私の実感とも符合します。)
ここでいう国語力とは以下のような能力と考えます。
・文章によって記述された情報の内容を正確に読み取る
論理構造も把握できる(文字情報のみから図表を頭の中で作ることができるようなイメージ)
・言語的思考によって問題を考える
→抽象的なこと具体的なこと及びそれらの関係性を把握できる
・第三者が客観的に理解できる程度に内容が伝達される文章を記述する
これらの動作を高速に正確に行うことができる能力。
他の要素も考えられるでしょうが、司法試験系で関連するのは特に上記のような側面であろうと考えられます。
こうした能力は、講義を聞いたり基本書を読んだりするインプットでも、問題文を読んで答案を作成するないし適する肢を選ぶアウトプットの場面においても必要とされます。こうした能力が高ければ、(特に論文式では答案の構造と思考フローが結びついている状態になっていれば)後は司法試験系特有の知識理解が備わっていれば、その維持ないし向上を図るだけでよくなり、「司法試験系対策」としての総コストのうち、国語力によってカバーされる部分の対策(訓練)をスキップできるのでその意味で有利になると言えるのではないでしょうか。
3メタ認知
「優秀層」の人々はメタ認知能力にも優れている人物が多いように思います。
ここでは、普段対策をしているなかで、その自分自身をも分析対象として認識する能力と考えます。
(自分自身をさらに俯瞰する視点から分析するというイメージです)
これについては具体的なケースの中で説明する方が分かりやすいと思うので以下のような例を考えてみましょう。
例えば
事例問題を解いてみて、模範答案と自分の答案(構成)と比較してみたとき「違う」という判断をしたとしましょう。
(*二つの文章を比較して相違点を見出すのは「国語力」の問題と考えます。)
その能力によって、相違点を見出したとして、
ここでは具体的に論点落としをしていたという結論に達したとします。
メタ認知能力がある場合
なぜ論点落としをしてしまったのかという自己の過去の行為について客観的な分析をすることができます。
例えば
その要因について
当事者の主張を条文を起点に法的構成するところまではよかった
論点自体も知っていたし、規範は覚えていた(理由付けはまだ覚えてない)
(現状の把握)
→要件を検討しているときに充足すると考えてそのまま当てはめてしまったが、
実は問題文記載の事実が当該要件を充足するか否かは最高裁で争われ、学説対立もあるところで百選に載っているものだった。(敗因)
→具体的な事実とその条文の存在が頭に浮かんだ段階でこれを想起すべきだったのにできなかった。(改善点)
→その原因は経験不足にある。(原因究明)
→百選を使って全部読むインプットをすべきか?
→その事実と条文の関係性さえ知っていれば、同じようにその百選判例を題材にした予備論文が出題されても、対応できるだろう。
→他の問題については判例を知らないことを理由に解けないという事態は生じていないのでこの点からも、百選のインプットは今回の対策としては不要だろう。(対策検討)
もし仮にメタ認知できていなければ
知らなかった→百選だ→インプットしっかりしなきゃ
のように短絡的な対策しか想起できず、正確な要因特定ができなかったり
読んでマーカーを引く、百選判旨を写経する、解説を暗記する
といった不適切な原因特定と対策をしてしまったりする可能性があります。
つまり上記プロセス(現状把握→敗因・改善点特定→原因究明→対策検討)のいずれかに誤りが生じるリスクが生じます。
逆に言えばメタ認知能力が備わっていると
上記プロセスに誤りが介在するリスクが低下するので
「自分では分かっているつもりになっているが
客観的には理解できていない/表現できていない/対策できていない」という問題を回避することができるようになると思います。
また、PDCAサイクルを回していく中においても、自分の改善点反省点を正確に客観的に見出すことができるので、勉強の方向性がずれにくいし、複数年度の過去問検討を通じて試験そのものの特質を一般化した形で把握することも容易になるように思います。
これは「分析力」と言い換えることができるかもしれません。
また、優秀層はおそらくこうした経験を大学受験までにしているので、その経験すら把握しているので、そこで得た分析の視点を予備試験において応用することも可能になっているので、最初から間違った対策をしないという意味で短期合格する一因にもなっている可能性もあります。
4分析力・応用力
こうした国語力とメタ認知能力から構成される分析力ないし、過去の経験の応用力は自分に適した対策や試験特性そのものの分析にとどまらず、様々な場面において威力を発揮するものと思われます。彼らの多くはこうした能力を予備試験対策が始まる前から既に備えている可能性の方が高いように思います。
5「学習」経験・克己心
優秀層は「学習」そのものへの経験と耐性があります。
先ほど上がった東大・京大をはじめとする最難関大学に合格するとなると部活などのない完全オフの日は8~12時間くらいは勉強するという生活を1~6(多分3年が中央値と予測)年間くらいは続けている(はずです。長時間学習に充てたことを皆さん中々認めたがらないのですが、流石に東大はそんなに甘くないし、本気であればあるほど焦りや不安から勉強すると思うので)と思います。
とすると
試験範囲の広い予備試験においても必然的に長時間長期間の学習をすることは「必須」といって差し支えないでしょうが
この長時間長期間勉強するというストイックな行為をすることに抵抗はあれど(本心としてしないで済むならそうしたいけど)、やらなければならないと腹を括ったら即・実行するのが優秀層が優秀層たる所以だとも思うし、実際見ててそれはその通りになっていると思います。
これは予備校とか合格者も大きな声では言わないでしょうけど
人間の大半は自分の欲求に打ち勝てないからこそ、
「楽して始めるダイエット」とか
「一日1時間で難関試験合格逆転勉強法」みたいな本がたくさん出る
=売れる
=みんな買う
=みんな欲に負けている
という図式になります。
司法試験受験生も例外に漏れないと思います。
なるべく勉強せずに済むような方法を合格者に聞いている人、そこに関心が集中している様子はXなんかを見ていても気が付きます。
不合格要因が単に怠惰・演習不足・暗記不足という人はそれなりにいるはずです。
そこをどうにかうまいこと付き合っていく、というよりも寧ろ克己心でねじ伏せるからこそ結果を出すのかなと思います。
東大の図書館に行くと司法試験の学習をしている学生はそれなりに見かけることがありますが、(ずっと観察していたことはないですが)朝から晩までいるし、スマホとかいじらないし、継続力・集中力・ストイックさみたいなものはみんな備えているという印象はうけました。(ま、ちゃんと図書館に来るタイプの東大生というフィルターはありますが、、)
別に司法試験受験生の東大生に限りませんが、ここぞというときに本気を出すときには、彼らにはこうした力を発揮する(一部の例外を除いて)人ばかりだと思います。
実態としてはあまり天才型みたいな人は少なく(そう見せようとしているだけで)秀才型なタイプが多いし、その方が試験種が変わっても(英数国→法律)実力をつけやすいのではないかと思います。
また、そうしたストイックな学習経験があるからこそ、そこで必然的に出てくるトラブルも大抵は経験済みで、自分なりの対策法も確立していて、学習が止まることがない、あるとしても司法試験特有の問題(短答と論文の学習比率とか)に留まるという意味でも有利になるのではないでしょうか。
よく「人生2周目」のような言い回しで、年齢や経験値の割に達観していたり大局観を備えている賢しい人をそう形容することがありますが、そのような意味でいうと優秀層は「最難関試験二回目」ということになり、難しい試験への成功体験がいい意味で、無駄をそぎ落としてくれるのかなとも思います。
6環境
これ自体はあまり論じる意味をなさないかもしれませんが難関試験に合格できたということは、それを可能にする学習環境があったということを意味します。
今はだいぶインターネットで情報も入手できるようになってきましたが、それも限界があり、やっぱり受験仲間が多い(=目指す人が多い≒難関大学)環境の場合はある人は伊藤塾、ある人はアガルート、ある人はレックとなっていると、他の予備校の情報が入ってきて、何らかのサービスを受ける際に生の情報が入ってきやすいというのは多いとおもいます。
後は忌憚なき意見が入ってきやすいというのも大きいですよね。
ネットで絶賛されているコンテンツのネガティヴな側面とか、対面でクローズドな環境でないと入ってこないとかあると思うし。
この意味でいうと、予備校選びを間違えないとか、具体的な対策についてのあれこれを聞けるのが大きいかなと思います。
後はやっぱり東京近辺か否かというのも地味にですが大きいかなと思います。
東京は徒歩圏内や電車やバスを使えば簡単に図書館にアクセスできるし静謐な環境で勉強しやすいなと率直に思いました。
私のいた田舎では最寄りの図書館も50分くらいかけて移動しなきゃいけないし、マックも車で40分くらいで、カフェなんてないし、家でどうにかやるしかなかったので。
ま、正直
過去問解説含め思考プロセスだけ課金したら(最悪趣旨規範ハンドブックに載ってますのでそれで対応)後は過去問(せめてぶんせき本)と基本書をメルカリなりアマゾンなりで入手すれば後はどんだけやるかですよね
なので環境っていうところはそんなにかな、と思います。
②東大生などに勝つ方法
そうはいっても、、、
とはいえ、合格者にそうした属性の人が多いのなら、そうした背景の受験生と椅子取りゲームをするのは事実です。
なので、問題はどうやって椅子を奪われないようにするか、という話は考えていく意義はあると思います。
具体的な戦略などについては私の記事を参照していただければありがたいですが、戦略が正しい、学習量が必要十分である、学習の素材も間違ってない、絶対に受かりたいという強い気持ちがある、勉強する場所(机とうるさすぎない空間)があるなど心身や環境、道具が最低限揃っていることを前提とさせてください。
資格試験なんてやりたくないなら辞めたらいいのですし、そもそも勉強してません、となったら
勉強しましょう。完。
で終わるので、時間を割いて記事にする必要はないと思うのでそれ以外の部分に絞って話を続けようと思います。
おそらく、優秀層の人たちが学習初期段階から身に着けている能力(①の部分)に限ってそれぞれどうするかを書いていきます。
1理解と記憶
優秀層も一枚岩ではなく、この辺も実はグラデーションもあるのですが、先天的にせよ後天的にせよある程度の水準を有することは違いないと思うのでどうするか
実は彼らのような人たちも、何も幼少期のころから小難しくて分厚い本ばかりを読み漁っているからそのような経歴になっているわけではないと思います。
大学受験までのフィールドは司法試験予備校に比べ参入しやすいということもあり、安くてわかりやすい参考書であふれ、塾も沢山あり、学校の先生の講義も実践的で分かりやすい、なんてことも割とよくあることです。
そういう環境のなかで考えて(又は親に強いられて(笑))手を動かして、鍛えて、以前の自分より得点できるようにしてきたという状況的な前提があると思ってます。
なので、皆さんもなるべくそれに近い素材で始めることをお勧めします。
具体的には
×:最先端の学説や、現場思考の出題の素材となった覚える必要のない判例についても細々とした話をしたあげく、全部覚えてくださいと言ったり、専門用語に対して適切な説明をしないなど受験生の立場や目線に立って講義を作ることのできていない入門講義を”「みんな」(その正体は難関大学の優秀層)が受講しているから”という理由で無批判に受けたりするようなことをする
×:分厚くて難解な基本書を何冊も用意して、通読する。
〇:一読了解ならぬ一「聴」了解できるような極めて分かりやすい講義でさくっと入門を済ませる。
〇:平易な基本書もしくは伊藤塾の『試験対策講座』ないし呉『基礎本』で知識面のインプットやリカバリーをする。
など、教材や講義を工夫して、取捨選択を行い、理解力が高くなくとも基礎基本の入り口に入れるようにした方が良いと思います。
基礎基本も入門講義で完結する合格者はおらず、演習の過程で理解を深めるというところが一番大きいと思うので、それで充分です。
記憶に関しては、人間の脳にとって記憶しやすいやり方を徹底するというのが重要です。
非科学的な自己流のやり方では絶対に勝てないと思います。
自分のやり方を捨てたほうがいいと思います。
これは私の専門外なので以下のような書籍を参照してください。
後はストイックにコツコツやるだけです。必要に応じてAnkiのようなアプリを利用したり、暗記カード・暗記ペンを使ってもいいと思います。
2国語力
国語力を鍛える素材は「現代文対策」と銘打って、高校生向けのものが充実しています。(私見)
しかし、それに限らずその他学問の考え方や分類の仕方などのアプローチの方法などすべてがこうした能力(2,3,4の能力)に寄与する側面もあると思うし、司法試験からしてあまりにも迂遠なので、原則的にはこうした素材を用いることは微妙だと思います。
とりあえず、
・「問い」「肢」「事例問題の事実」が読んで意味が分かる
・「思考の枠組み」に沿って「法的知識」を使って思考できる
・第三者の視点から見て一読了解な文章を作成できる
という三つの技能に限ってその層に肉薄できれば良いと思います。
特に無駄なことをしている余裕はないので、その訓練は過去問を通じて行うことになると思います。
∵過去問の文章の量や質と同じ問題が本試験に出るので、過去問が一番直裁的。
その意味で事例の短い旧司は読解の観点からはイマイチ(思考力を鍛えるには有益)
いきなり難しい過去問は、、、と言って予備校オリジナル短文事例問題をやることは優先度が低いと思います。
予備校の短文事例問題集には旧司や難関ロー過去問が採用されていますが、これらはそもそも難解です。予備過去問で充分です。考え方が分かってしまえばそれらも同じに見えると思います。
3メタ認知、4分析力、応用力
これも2と同様で、過去問演習で鍛えていくのが良いと思いますが、メタ認知というのは問題演習をしていない時にも作用するので
①の例で示したような戦略、戦術の反省や分析の際にも用いられるので、なるべく自分で考えるようにしましょう。不安なら合格者や講師に意見を求めるのが良いと思います。
5学習経験・克己心
経験については全くない人、ご自身なりに経験を積まれている人様々だと思いますが、何であれ自己ベストを更新されるつもりで只管打坐ならぬ「只管過去問」で淡々と学習することになると思います。
やろうと思えば、トイレ、お風呂、移動中、食事中でもできます。暗記物のチェックなど
やはり優秀層はそのような細切れの時間も大切にする人が多いです。
二番煎じどころではないですが
当たり前のことを徹底する完璧にする
これさえできればそんなに高い壁でもないんじゃないか、そう思っています。
本音
誤解しないで頂きたいのは東大を始めとする難関大学出身者を貶めたいとか敵視してるとかそういうことではなくて
予備試験を目指している人が受かりたいという気持ちがある限りは全員に受かってほしいと本気でそう思っています。
自分なんか勝てっこないって卑屈にならないでほしい。それはあまりにも勿体無い。
そういう気持ちで本記事を書きました。
逆に言えば、そのような大学に在籍していても又は卒業しても苦労なさっている方も沢山いらっしゃることかと思います。
そのような方にもなにか気づきのきっかけになってほしいという意味で色々情報発信をしています。
私が言いたいのは、過度に経歴やらに拘って努力の方向性や量や質が不合格に傾いてしまうようなことを避けてほしいということです。
性別とか、学歴とか、年齢とか、そういう使い古された分類に予備試験対策上の意味を特段見出していないです。
本記事で書いたような優秀層の特性がまるっきりそうした人たちに当てはまるわけでもないです。
スポーツでも芸術でも仕事でもきっと、
何かしらの他の人より秀でた成果を出すには
disciplineというか克己心というか自分との闘いに勝たなきゃいけない時が来るはずです。
そうした経験があってもなくても、予備試験司法試験受験においては各々がベストを尽くされることを心から願っております。