![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/76689230/rectangle_large_type_2_636e394dc9036149be90fb98f0ab5711.png?width=1200)
ある晴れた朝、終わりは突然やってきた
『もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?』
この言葉は、皆さんも聞いたことがあるとおもいます。
有名なスティーブ・ジョブズの言葉で、スタンフォード大学で行った卒業の祝辞だそうです。
でもこういう名言の類を聞いて、なるほどその通りだ、と思う人は実はそう多くはないでしょうし、もっと言ってしまえば、その通りにする人などほぼ皆無でしょう。
正直に言っちゃいますが、私自身もまったくいい言葉だとも、その通りにすべき、あるいは明日からそうしようとも思いませんでした。
だって偉い人の言葉というのは得てして成功バイアスがかかっており、そのことはちょっとばかりの成功を収めたこともある私レベルでも十分知っていましたから、あーはいはい、そうですよね、ぐらいの受け止め方だったわけです。
そもそも、いくら仮定の話だとしても、今日が人生最後の日、なんていうのは設定として無理がありすぎるというか、リアリティがなさすぎるのです。
そんな仮定を毎日して、日々決断のたびに自身に問いかけるとか、ジョブズにはできても、日々を平凡に過ごしている凡人には絶対無理。
突っ込みどころ満載です。
![](https://assets.st-note.com/img/1650265731328-Qyd9h9oQqS.jpg)
しかし、そう思っていた私に、日々を平凡に過ごしている凡人と自分自身で思っていた私に、そしてちょっとだけビジネスでは成功していた私に、終わりは突然やってきました。
永遠にも思えた平凡な日々の連続は、ある日突然、なんの前触れもなく終わり、私はそれまで築いてきた地位も、名誉も、職業も、交友関係の多くも失いました。
私の身の上に起こった出来事がなんであったかは、今はとりあえずおいておくとして、それまでそれなりの会社の経営者として、平凡ながらも充実した毎日を過ごしていたと思っていた私の脳裏に浮かんだのは何故かこのジョブズの言葉でした。
実はこのジョブズのスピーチはこんな言葉で〆られています。
『君たちはもう素っ裸なんだ。自分の心の赴くまま生きてならない理由など、何一つない。』
実はこの『君たちはもう素っ裸なんだ(You are already naked)』という言葉の意味が私にはずっとわかりませんでした。
いや、意味自体がわからないというより、実感できなかったのです。
それが本当に不思議なのですが、地位も名誉も全てを失ってみて、何故か急に実感としてわかるようになったのです。
何がわかったのかって?
実は自分が身に纏っていたものは、すべて”社会のしがらみ”だったのだと。
そのしがらみを、どんな形であれ失くしてしまえば、実は自由に生きられない理由など何もないのだと。
言葉にすれば陳腐なことなのですが、失うこと、失ったことを自分自身意識した時、初めてすっと心の中にこの言葉が入ってきたのです。
このスピーチの時ジョブズは既にガンを患っていました。
死によって人生の全てを失うことを意識した時、彼もまた改めてそれをまだ社会に出ていない、社会のしがらみのない学生たちに伝えたいと思ったに違いないと、今の私は思います。
そんなわけで、このノートは強制的に社会のしがらみをはぎ取られた、ある元経営者の雑想の日々をつづるものです。
基本的に個人に忘備録なのですでなんらの参考にもならないとは思いますが、せっかく目にとめていただいたなら、お暇な折にでもご笑覧くだされば幸いです。