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【展示会レポ編】ルーヴル美術館展 愛を描く@京都京セラ美術館
2023年7月某日。
2018年の「ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか」から始まった4年に1度のルーヴル美術館展の第2弾。前回は大阪市立美術館での開催でしたが、改装工事中なので、京都へ。明らかにコロナの影響で若干、日程がずれているが、無事開催されてよかった。
テーマは愛
さて、今回のテーマは愛。京都市美術館が、京セラ美術館になって初めての2つのギャラリーをつなげた特別展。
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268x368cm カンバス/油彩
INV 2715
入場口の目録を手に取り入ってすぐに目に入るのは、この巨大な絵。
主催者はあえての絵を1番最初に配置したに違いない。
良い展覧会には、あらすじがあり、物語がある。この絵から感じ取られる主催者のメッセージ、つまりこの展覧会の主役はアモルであるということ。今回ブーシェは特に引き立っていた。あと、今回の作品のほとんどが神話画である。
神話、嫌い、難しい
神話は難しい。たくさんの要素によって神話を難しくしている。
神話というとまずギリシャ神話かと思ったらローマ神話とかいうのがでてきて登場人物の名前がほぼ違うのでまじで誰だかわからん。
アモルって?
神話が難しい原因のひとつは、登場人物が多く、いろいろな理由で名称が変わるということ。
ギリシャ神話ではエロスと呼ばれ、”アフロディーテの従者とも、息子ともいわれる男神。ローマ神話ではアモル、クピド(キューピッド)と同一視されている。青年の姿で描かれることもあれば、羽の生えた幼児として登場することもあり時代によって解釈が変わる”【引用:マンガ 面白いほどよくわかるギリシャ神話/かみゆ歴史編集部より】
国が変わったことで名称が変わるのは理解できるが、ローマの中で理由もなく別名があるのは本当に意味不明である。
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128×125cm 板/油彩
INV 8050
アモルは母ヴィーナス(=アフロディーテ)とその愛人である軍神マルス(=アレス)の間の子供として生まれた。
アモルの物語
ヴィーナス(=アフロディーテ)にはウルカヌス(=ヘパイストス)という夫がいました。ウルカヌスは、その母であるユノ(=ヘラ)から醜いという理由で不遇な待遇を受け、海に投げ捨てられたことを恨み見えないヘラに拘束機能付き玉座をプレゼントし、ヘラを玉座に縛り付け解放条件として天界一美しいされるヴィーナス(=アフロディーテ)との結婚を約束し、みごとに成功させました。
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径:121cm カンバス/油彩
RF 1983 77
ウルカヌス(=ヘパイストス)は、ヴィーナス(=アフロディーテ)とマルス(=アレス)を自分の鍛冶場に連れ出し、そこで不倫現場をおさえ、上の画像の状態で動けなくして公開処刑にして、「こんな素行の悪い妻はいらん!」と言い放ち去っていったのでした。
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97×197cm 板/油彩
INV 8051
その後、アモル(=クピド、エロス)が生まれました。ユピテル(=ゼウス)とユノ(=ヘラ)の息子がマルス(=アレス)なので、アモルのおじいちゃんとおばあちゃんです。
ネプトゥヌス(=ポセイドン)はユピテル(=ゼウス)の兄弟なので、大叔父さんです。ディアナ(=アルテミス)は、ユピテルと他の女神の子なので、関係ないですね。たまたまいただけですね。きっと。
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62.5×90cm カンバス/油彩
INV 7935
アモルは、ヴィーナスの能力を色濃く引き継いだ神で、矢を当てた相手は相手の意思に関係なく恋に落ちるというとんでもない能力を有する。もちろん、それは、種族を越えることも可能という。上の絵を見る限り、普通に狩りをすることもできるのか。鹿に矢を打っても鹿が発情するようなカオスな状況にはならないらしい。アモル自体が能力を使っているか、矢がすごいのかは、謎である。
アモルとプシュケ
アモルとプシュケという矢がすごいんじゃないかと思ってしまうストーリーがある。
とある国にプシュケという人間の娘がおり、ヴィーナスより美しいと巷で噂になっていた。これを許すはずもないヴィーナスは、アモルを呼び出し、アモルの矢で卑しい男と結び付けるように仕向けた。
下界に行き、プシュケの寝込みを襲うアモル、神様をも超える美しさを持つ人間に興味を持ったアモルだったが、すぐに仕事を終えようと矢を準備していた。
すると、それは、ほんのふとした一瞬であった。プシュケが寝返りを打ち、その美しさに見とれてしまったアモルは、自分の足に矢をかすめ負傷してしまった。—アモルは、プシュケに恋に落ちた。—
こうしてアモルはヴィーナスに内緒でプシュケを妻にするためにプシュケを西の果てにある宮殿へ連れ出した。姿を見てはならないという約束をして会うことにした。
—毎回暗闇の中でだけ会える夫。しかし、「その豪華な暮らしをうらやむプシュケの姉たちは、姿を見せない夫をきっと化け物みたいな身なり」だとか、「ブオトコだから見せない」とかいうのでした。
その夜、姉たちの言うことが気になってしまったプシュケは、一度でいいから姿を見たいとロウソク片手に近づいてみる。
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径:121cm 油彩
RF 1983 76
—そこには美青年の寝顔があった。プシュケは、ロウソクの蝋をその腕に落としてしまい、アモルを起こしてしまった。
約束を破られてしまったアモルは、プシュケのもとを去った。
どうしてもアモルに会いたいプシュケは、アモルをあちこち探しまわりようやくたどり着いたのが、ヴィーナスの宮殿だった。
プシュケを気に食わないヴィーナスは無理難題な試練を与える。
それでもプシュケは、試練を次々乗り越え、最後の試練、プルート(=ハデス)の妻であるプロセルピナ(=ペルセポネ)から『美しさ』の入った箱をもらう事を言い渡される。
しかし、不審に思ったプロセルピナは、『眠り』の入った箱をプシュケに渡した。箱を持って帰る途中、少しだけその『美しさ』を分けてもらおうとしたプシュケは箱を開けてしまい、眠ってしまった。
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186cm×132cm カンバス/油彩
INV 4739
こっそり後をつけていたアモルは駆け付け、キッスをするとプシュケは目ざめた。
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93×130cm 油彩
RF 1988 16
アモルはプシュケとの結婚をユピテル(=ゼウス)に認めてもらいプシュケは永遠の命が得られるという神の酒ネクタルを飲み女神となったのでした。めでたし、めでたし。
ブーシェ?
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フランソワ・ブーシェ(1703.9.29-1770.5.30)
フランスのロココを代表する画家。『ロココの帝王』とまで呼ばれるロココ全盛期の巨匠。
そんな『ロココの帝王』も現代では、多くの後進のジャンルに淘汰され『○○美術館展』などでは、最後まで見てブーシェの作品が一番よかったという人が見られるのは極めて珍しいが、今回に関しては本当にブーシェがよかった。《アモルとプシュケの結婚》も脚にピンクを入れるところなどは、他のロココ作家の追随を与えないテクがみられたので是非本物を見て確認してほしい。
おみやげ
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今回は、アモルをフィーチャーさせていただきました。
おみやげは、鎌倉の銘菓BENIYAのクルミッ子のルーヴル美術館展コラボである。ルーヴルッ子を買いました。
中身はクルミッ子なのでおいしい、今期の主役であるアモルに扮したリスがかわいいですね。
長いブログを読んでいただきありがとうございました。
探求者あっくんとしての活動は、展示会レポだけで終わりません。
次回予告
【NOTION編】ルーヴル美術館展 愛を描く【有料部分あり】