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手術室へ

手術の朝が来た。
白きタイツを履いた病の王子はダサい寝間着を羽織って病室を出た。

えっ?こんな格好で歩きまわりたくないぞ(笑)
と思ったら、何か違うエレベーターで奈落の底へ落ちていく。
ずーん。
案内してくれたナースさんはここまで。何かウスラ寒い廊下で嫁に「行ってきま~す」と最後の挨拶。
昨日説明に来てくれていた手術室のえらいナースさんに引き継がれていよいよ手術室へ。
ドワーン…
大きな自動ドアが僕の目の前で開いた。
何じゃこの広い部屋は‼
何となく薄暗い全てが変な緑色に見える床壁天井。その中に数えきれない(ように見えた)スタッフさんがいるじゃないか。
どんだけの人が関わってんの?
「気分はどうですか?」えらいナースさんが聞く。
「マックス緊張してます」と答える。
「マックス緊張してるそうです~」と言いふらすえらいナースさん。
いやいや、変な帽子まで被らされて恥ずかしい格好の僕を、みんなで励まさないでくれよ。
君たちにとっては半百にんの1人でも、僕にとっては初めての癌の手術なんだよ(笑)

まるで死刑囚のようだ。
気分的には入口から手術台までなかなかたどり着かない。
と思ったら「はい、ここのって」着いたわ。
怖っっわ!
広いスペースのど真ん中に細っこい台が一台ポツンと有る。が、その回りにはなんだか分からないものがわんさか有る。

手術台に腰かけて靴を脱ぐ。
「は~い、横になってね」
横になる。
あっ「めっちゃ温かいですね」そう、手術台の背中がポッカポカなんよ。
「言ったでしょ、ポカポカにしておくからって」なんだよもう、そんな約束。

なんだかんだ言ってここまでのストーリーは、手術室のスタッフの皆さんが僕の緊張をほぐそうとやってくれていたことなんだろうなと解釈した。ありがたかった。

実は「マックス緊張」していたわけでは全然無くて、楽しもうと思っていた自分がいた。

そして、あれよと言うまに支度が整えられていく。もう僕の意思などどうでも良いことのように。

右腕に点滴が繋がれた。これはなんの点滴だろうなぁ?
ん?ん?ん?

病室から手術台までのストーリー。
この後の出来事は目が醒めてからということになる。

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