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病棟カムバック

いよいよ病棟のコロナのゾーン分けが完了したとのことで、僕はVIPルームから4人部屋に戻ることになった。結局ICU におよそ3日いた感じ。

ICU のナースさんに別れを告げる。
「思いのほか長居しちゃってごめんなさい。』
とね。一番偉そうなナースさんが言う。「長居しちゃってだって、かわいい。」僕はかわいくはない。
思えばICU に長居したお陰で僕はもしかしたらかなり痛みとかから救われていたのかも知れないね。本来なら2日目の途中で病棟に帰って、それからは自力で何でもやらなきゃならなかったところを、ナースさんに手伝ってもらってたんだから。
すごい監視の目の中にあったことをのぞけば、それはそれで幸せだったのかもしれない。

病棟の元のベッドに帰ってきた。
と言うことはだよ、トイレが遠いんだよな~

相変わらず寝汗がすごい。
病棟に戻った日の夜、汗だくで目覚めた僕はパジャマの着替えを探した。レンタルでお願いしていた着替えがベッドサイドに積んである。
ICU に長居している間に僕は術後の寝巻きからパジャマに進化していた。
積んである着替えを見ると全部寝巻きだ。う~ん、これは着れないな。
仕方なくナースステーションに聞きに行ってみることにした。ちなみに、ナースステーションは遠いトイレの前だ。
ベッドから立ち上がり歩き始める。
「ぐぬぬ、痛すぎる。」左の腹を左手のひらで押さえながら1歩また1歩と歩いていく。
まるで無差別殺人犯に刺された人みたいだ。でも、グッと押さえていないと痛くて歩けない。そう、飛び出しそうな内蔵を押さえて押し込んでいるような状態。
もっと無駄な汗が出た。
なんとかナースステーションにたどり着いて「すみません、汗をかいちゃって着替えたいんですけど、術後の寝巻しかなくて、パジャマって無いですか?」と。
「ちょっと待ってて」とすぐに探しに行ってくれるナースさん。「はい、これどうぞ。」
「ありがとうございます」と受け取って部屋に戻る。
いや待てよ。腹痛い。パジャマ持って腹押さえて歩くのヤバい。パジャマは重い、はず無いけど重い。
もうね、何あの人あんなに痛がって嘘でしょ?な~んて思われるぐらい腹を押さえてヨチヨチ歩く。
ベッドにたどり着き着替え始める。痛い痛い😖
ほんまに、何をしても腹筋って動きやがる。
僕の左腹に開いている穴は全部で6つ。そのうち5つはダ・ヴィンチ君の指が腹を貫通したやつ。あと1つはドレーンを入れてた穴。
まぁそのどれもが筋肉をも貫通しているわけで、そりゃ皮膚の切り傷とは違うもんね。

なんとか着替えた。
やれば出来る。

ん、今気づいた、ベッドにラバーシーツが敷いてある。僕は漏らさないよ、きっとね。術後だからかな?がんばってトイレに行くから。その歩行が1番のリハビリなんだ。

ベッドで天井を見つめる。
「あぁ、終わったんだ。」
ねえ、不安だったよ、怖かったよ、そして痛いよ。2度とこんな目に遇いたくない。僕の左腹には、小学校の雑巾みたいな分厚くて大きなガーゼが当てられていて、まだその中身は見ていない。
今僕の痛みを和らげているのは、500mgのカロナールだけだ。カロナールて!そう、もうロキソニンは飲めないんだな…

術後始めてかな?ベッドの上で静かに時をすごし思いにふけったのは。
スマホの液晶が眩しい。
「帰ってきたよ」LINEした。
「おかえり」返事がきた。
そして、眠った。

尿意を催すまではね…

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