金融庁、外貨建て保険にメス 販売体制を問題視 リスク説明が不十分 人事・給与評価巡り改善要請も
・金融庁が銀行・証券会社の外貨建て一時払い保険の実態調査に乗り出す
・具体的な問題が見つかれば、金融機関側に販売や評価体制の見直しを促す
・販売時の比較説明の不十分さや営業担当者の評価体系を問題視している
外貨建て保険は顧客から預かった保険料を米ドルや豪ドルなどの外貨で運用、海外の金利が日本より高ければ資産運用の効果も大きくなる半面、為替変動でリターンが減ったり、円換算後に元本割れするリスクをはらむ
外貨建て一時払い保険は銀行窓口での販売が大半を占めており、米欧の金利上昇を受けて22年度の銀行窓販は前年度比8割増だった一方、預かり資産残高はここ数年横ばいで推移
金融庁は「運用目的で販売したが、他のリスク性金融商品とのリターン・コストなどの比較説明がなされていない」などの販売・管理体制や、円貨に比べ2.5~4倍の業績評価が設定されるといった、顧客より自らの収益を重視するような業績評価体系に懸念を抱いている
苦情件数はピークだった19年度に比べ減少しているが、足元では「解約返戻金が想定していた水準を下回っていた」との苦情が増えており、今後為替が円高方向に向けば、苦情がさらに増える可能性も
【所感】
外貨建て一時払い保険の販売が増えながらも、預かり資産残高が横ばいなのは、目標到達型の保険を販売後「目標に到達したので」と顧客に保険を解約させているからだ。
販売手数料を得る目的で、解約後に再び同様の商品に加入させている可能性もある。
運用成果を得るのが第一の目的であれば、外貨建て保険を通じて運用される米ドル建て債券や豪ドル建て債券へ直接投資する方が利回りは高い。
為替変動などのリスクは直接だろうが保険だろうが同様で、ましてや証券会社であれば間違いなく債券自体の販売ができるにも関わらず、保険販売だけにノルマが設定されるほど外貨建て保険は優遇されている。
もちろん、債券を販売するより販売手数料が良い以外の理由もないのだが、つまりは顧客の資産から支払う手数料が増える一方、資産は増加しにくくなることを指す。
また、銀行は自行顧客の預金残高を把握している点も忘れてはならない。
現実的な預入額の提案を行うのはいたって容易だ。
昨年冬に亡くなった祖父から多少の株式を相続した母へは、案の定外貨建て保険の提案が現在進行形でなされているけれども、「アメリカやオーストラリアはとても金利が良い」「今、加入すればこの良い金利がずっと保証される」などと説明されているらしい。
減らないのは“ドルベース”の資産である事実をそれとなくかわし、将来的に円高に振れて元本割れするリスクには触れもしないのが、日本の金融機関による手数料目的の保険販売の実態である。
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