脱出1
少年は息を切らせながら、狭い通路を駆け抜けていった。背後から聞こえていた兵士たちの足音は、徐々に遠ざかっていった。しかし、彼の心の中では、倒れた仲間の最後の言葉が鳴り響いていた。
「美奈のことを...」
通路は突如として広い空間へと開けた。少年は息を呑んだ。目の前には巨大な石棺が横たわっており、その周りには数々の黄金の装飾品が並べられていた。しかし、彼の目を引いたのは、石棺の蓋に描かれた不思議な図形だった。
それは、七つの星が円を描くように配置され、中心には見たことのない文字が刻まれていた。少年は思わずその文字に手を伸ばした。
突然、石棺から青白い光が溢れ出した。少年は驚いて後じさったが、光は彼を包み込むように広がっていった。そして、彼の耳に不思議な声が響いた。
「来たれ、選ばれし者よ。時の狭間へ...」
光が消えると、少年の姿も消えていた。石棺の蓋に刻まれた星座は、かすかに輝きを放っていた。
その瞬間、遠くで銃声が響き、兵士たちの叫び声が聞こえた。彼らが部屋に駆け込んできたとき、そこにあったのは空っぽの石棺と、床に落ちた一枚の写真だけだった。
写真には、少年と美奈が笑顔で写っていた。その隅には、「1940年、夏」と書かれていた。
兵士の一人が写真を拾い上げ、不思議そうに眺めた。「これは...未来からの写真か?」
その言葉が空気中に漂う中、石棺の蓋に刻まれた星座が再び輝き始めた。物語は、時を超えた新たな章へと進もうとしていた。