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摂食障害25周年!⑤

「過食autoな人生」

autoというよりoutだが。
誰が上手いことを言えと。

突然だが、あなたはトイレに手を突っ込んだことはあるだろうか?
自慢じゃないが私は毎日何回も突っ込んでいる。
そうしないとリリースしたものが上手く流れないからだ。

過食嘔吐系女子になったのはありきたりな理由である。
思春期にダイエットをしたからだ。

私の思春期は食べても食べなくてもとにかく体重が増える成長の仕方だった。様々なダイエット法を試してもみるみる増える体重。
ピークは60キロを超えた。

私はチョコレートが食べれない。
アレルギーだからだ。
私はスナック菓子が食べれない。
何故かわからないが喉が痛くなる。
なので、学生時代も教室で友人たちと菓子をシェアしながら過ごすなんて状況は発生しなかった。
ケーキは誕生日とクリスマスくらいしか食べたことなかった。
元々スイーツを摂取する家庭ではないし自分自身進んで食べる習慣がなかった。

しかし増える。
なにしても増える。
日に日に増える。
そんな地獄の思春期だった。

毎日菓子を貪るスマートな友人。
自分よりもたくさん食べる細身の男子たち。
早弁してるスレンダーな部活生たち。

毎日他人と体型を比べていた。
「あんたは尻がデカイね」
ある日母親にそう言われた。
「神崎は顔がアンパンマンだな」
クラスの男子がそう言った。
「ご飯それだけで足りるの?」
昼食時間に誰かが言った。

もうたくさんだった。
運動しても、ご飯残しても、お菓子食べなくても、何をしたって増えて丸くなる一方なら。

好きなもの食べて。出せばいい。
ただ、それだけだ。
我慢せず食べて。
消化される前に出してしまえばいい。

吐くことなんて病気以外で経験がないので最初は苦痛だった。
意図的に吐くのはできそうで中々難しかった。
出そうで出ない。でも出さないと。
毎日毎日食べてはなんとかして出す作業を繰り返した。
数日、数週間、数ヶ月、数年。
今では下を向くだけで出てくる。
吐くことに関してはプロと言っていいスキルを身につけた。

最初は出てこないから手を突っ込んで吐いていた。
手の甲は前歯で削れ、俗に言う吐きダコができるが周りバレたくなかったので吐きダコはハサミで切り取り日々削れて膿んでる傷は凹凸滑らかになるようにハサミとカッターで皮膚を削った。
ある日の夜に、左の薬指と小指の根元に出来た吐きダコを裁ち鋏でちょん切ったら骨が露出して出血多量だったので、タオルでぐるぐる巻にして寝たら朝寝床が血まみれになり発見した母親に朝イチ病院ぶちこまれ手術したのはいい思い出。
見事神経ごと切断してたので前述しているが指の感覚がほぼなくなっている。
感覚もなければほとんど動かない。

わかりやすく言うとじゃんけんができない。

グーもチョキもできない。
パーはできる。なので私は左手でじゃんけんするとパーしか出せないので絶対にじゃんけんは右手でする。

私は自力で吐くが、調べてみると道具を使って吐く人もいるらしい。
チューブ使ったり下剤使ったり。

どちらも試したことないが、私は自分の体ひとつで済んだのでコスパがいい。

最初は苦しかった。
しかしある程度経験値を積むと効率を求めるようになる。いかにスムーズに出すか。手を痛めず出すには?音を立てずに出すには?
いつしかその探求が楽しくなるくらい日々の実験で今のリリーススタイルが完成した。

手も喉もたくさんの血を流した。
顔も浮腫み、口角は切れ、慢性逆流性食道炎、胃炎、カリウム不足、慢性貧血、リンパの腫れ。
胃と食道にガンの可能性大。
生理は一年以上止まった。
食べても吐いても常に起こる渇望感。

それでも私は毎日食べて吐き続けている。

基本的に左手を軸にして過食嘔吐生活をしていた。
一度だけ、事故で左手を骨折した。
「左手使えないなら過食嘔吐できないのでは?」
負の連鎖に悩む私はわずかな希望を見出したが、なんてことはない。
左手が使えないなら右手を使えばいい。
骨折が完治するまで右手を突っ込んで過食嘔吐ライフを送っていた。
我ながら対応が柔軟すぎると感動した。数ヶ月程度だったので、右手に傷が残ることはなかった。
厳密に言うと傷はできたが何故か綺麗に治った。

骨がくっつくとすぐに左手にシフトを変えた。実家に帰った安心感。

「二枚舌」という表現があるが、これは事実である。
物理的に下は二枚ある。手を喉の奥に突っ込んだことある人限定で存在を確認できる。
推奨はしないが。

私は過食嘔吐生活を送ることで人体実験をしている。
どのような角度ならうまく出せるか?
どのようなものを食べれば綺麗に出せるか?

どうせ吐くなら誰より上手に綺麗に吐きたい。

今日も今日とてトイレと向き合う。
様々な御手洗嘔吐ライフを数年行った結果、地元の施設トイレマップが脳内に完成している。
私ぐらいのレベルになれば和式トイレでも、ボットン便所でも難なく吐ける。

そして何事もなかったように清掃をして後にする。

私は食べる→吐く→掃除するまでの一連が楽しくて日々過ごしているのだ。
トイレは私にとって人生のパートナーである。
私のわがままに付き合ってもらったら綺麗にするのがせめてもの礼である。

今思えばスナックで働いてるときもトレイ掃除日課だったし、お客さんがいくら戻してても平気で掃除してたのは自分の立場のおかげだったかもしれない。

悪いことばかりじゃないなぁ。
そう、自分に都合よく解釈した。

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