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【機動戦士ガンダム 水星の魔女】アニメ本編外のいざこざ、解釈の余地騒動まとめ

 機動戦士ガンダム 水星の魔女は2022年10月~2023年7月に放送された『機動戦士ガンダム』シリーズの一つです。令和初のシリーズ完全新作アニメ、そしてシリーズ初の女性主人公ということで大きな注目を集めました。国内外に大好評のまま最終回を迎え、本記事を執筆している2024年7月現在にも新作グッズが出るなど高い人気を誇り、多くの人に長く愛される作品になる事は間違いないと思われます。
 各種配信サイトで視聴可能であり、ガンダムシリーズが初めての方にも是非お勧めしたい作品です。全24話と決して長くはないので長期連休の視聴にぴったりです。


 実はこの作品、放送終了直後に一度X(旧Twitter)において炎上トラブルを起こしています。タイトルにある「解釈の余地」という文言に関する出来事です。もうじき炎上騒ぎから一年となりますが、配信元であるバンダイナムコフィルムワークス(以下BNFW)は炎上以降沈黙を続けており、事態の風化を待っているのではないかと受け止められます。しかし投稿者個人の主観として、この事件に関しては未だに思うところもあり、後に「こんなこともあったね」と笑い話に出来る事を祈りつつ、備忘録として炎上騒ぎの一連の流れを記したいと思います。
 予めお断りしますが、本稿は『水星の魔女』製作スタッフ様、キャスト様、その他あらゆる関係者様を貶める意図はございません。あくまでもBNFW社に対する一視聴者の不満と不信感の表明であるとご理解下さい。
 また、炎上騒ぎは作品の外で生じた出来事であり、この件によってアニメ本編の素晴らしさが損なわれる事は決してありません。既に視聴された方、今から視聴される方は本編を純粋にお楽しみ頂ければ幸いです。

※以降はアニメ24話まで、および2023年8月2日に開催された『アスティカシア全校集会』のネタバレを含みます。未視聴の方はご注意下さい。


「解釈の余地」炎上までの一連の流れ

 まずは時系列で状況を整理します。2023年7月2日に最終回の24話が放送された水星の魔女は、X(旧Twitter)で感想や今後の展開が予想されるなど、放送ごとに大きな反響がありました。
 最終話のエピローグではラバーマスコットのホッツさんに入ったエリクトが自ら小姑と名乗ってミオリネと行動を共にし、左手の薬指に指輪を嵌めたスレッタとミオリネが寄り添い合う姿が描かれました。当時Xには挙動に不具合があったものの、タイムラインはスレッタとミオリネの結婚を祝福するコメントで溢れていました。
 最終後の興奮も冷めやらぬ中、同月26日に発売された『月刊ガンダムエース9月号』には、最終回を記念してキャスト様のインタビューが掲載されました。このインタビュー内に「結婚した二人の~」という一文があり、ファンの間で大いに盛り上がりました。
 しかしここから事態が一転します。同月29日、『月刊ガンダムエース9月号 電子版』のバージョンがアップデートされ、インタビューから”結婚した”の文言が消えていたのです。
 気づいたファンの間で騒ぎになり、翌30日に公式ホームページに本件に関するお知らせが掲載されました。

月刊ガンダムエース2023年9月号に掲載されているインタビュー記事につきまして、紙の雑誌と電子版において一部記述が異なったことで、作品を応援してくださる皆様に混乱を招いてしまい、誠に申し訳ございません。

当該記事において、ガンダムエース編集者の憶測による文面が存在し、校正時に修正依頼を行ったにも関わらず、該当箇所の修正が反映されないまま責了となり、7月26日に発売されることとなってしまいました。

作品側としては、本編をご覧いただいた皆様一人一人の捉え方、解釈にお任せし、作品をお楽しみいただきたいと考えておりますので、ガンダムエース編集部とも協議の上、修正可能な電子版の記述は、本来の依頼通りに修正し、現在は配信しております。

月刊ガンダムエース2023年9月号掲載のインタビュー記事についてのお詫び

 このお詫び文面だけでは何を修正したか分かりません。前情報なしに見た人には、修正したという事実のみが伝わる内容となっています。この修正内容は”結婚した”という文言の削除です。他にある”末永くお幸せに”など結婚を想起させるフレーズはそのまま残っているので、本当に”結婚”の文字を消しただけの状態です。そして、『解釈にお任せする』の文言。
 一連の流れから、スレッタとミオリネはお揃いの指輪をして、ミオリネには小姑がいて、二人は末永い幸せを築いていく最中ではあるものの結婚しているかどうかは皆様の解釈に委ねます、と捉えられます。
 これに激怒したファンの間で次々にBNFWへの不満が飛び交い、公式Xのリプライ欄には多言語で否定的な意見が送られ、「いいね」よりも「リポスト」数が多くなり(大抵の場合「いいね」が多いです)、炎上がトレンド入りし、国内外のネットニュースで記事にされるという事態に発展しました。
 以上が、炎上騒動の一連の流れです。因みにこの炎上が「解釈の余地」と呼ばれるのは、当時タイムラインに流れた「スレッタとミオリネの結婚に解釈の余地なんてないだろう」という主旨のポストから来ていると考えられます。

なぜ「結婚」削除だけで炎上したのか?

 結婚削除とは言ったものの、インタビューの他の文はそのまま、状況的にもスレッタとミオリネが結婚しているのは明らかであり、わざわざ消す意図は今現在も不明です。それもあって一連の騒動に関しては困惑が大きですが、一方で「結婚」のたった二文字で事態が大事になったもの事実です。
 投稿者もリアルタイムで視聴しており、当時Xでタイムラインを追っていた感覚では、最終話以前からもともとある程度ファンの間で本編の描写や、水星の魔女専門のラジオチャンネルである『アスティカシア高等専門学園 ラジオ委員会』(以下魔女ラジ)でのキャスト様の反応に違和感を持つ方々が散見されたように思います。それが公式発表の「解釈」の一文で爆発したような印象でした。
 この項目はそうした放送当時の背景を踏まえた炎上原因の推測であり、事実と異なる可能性がある事を留意して下さい。

本編の恋愛描写に非対称性があった?

 炎上(の薪になった不満)の原因の一つ目として考えられるのは、男女間の恋愛描写と同性間の恋愛描写が必ずしも同一ではなかった、と捉えられる点です。この印象は見る人によって異なると思いますので、あくまでもX上で散見された意見の一つであるとご理解下さい。
 水星の魔女における恋愛描写で分かりやすいのは、グエルからスレッタへの「結婚してくれ」というプロポーズ(3話)や、「好きだ」「大切なんだ」という告白(17話)でしょうか。また、恋愛というよりハニートラップでしたが、エラン(強化人士5号)がスレッタとミオリネの関係を「心がない」と否定し、スレッタにキスを迫るシーンがあります(10話)。これに対し、スレッタとミオリネの描写は非常に抽象的で、11話で抱き合うシーンこそありましたが、それ以上の身体接触はなく、キスなどの描写もありません。
 では二人は恋愛関係ではないのでしょうか?これに関しては限りなく恋愛と捉えてよいと投稿者は考えています。
 そもそも、制度上ホルダーの花嫁となる事が決まっているミオリネが、「ずっと側にいて」「決闘も負けないで」と同時に言うことは「結婚して」と同義です(11話)。父親の定めた制度に抗って地球に逃げようとしていた彼女が、むしろ制度の内側での結婚を望む理由はスレッタに対して恋愛感情を抱いているからではないでしょうか。
 また、これに対しスレッタも「はい、います」「負けません、絶対」と応じ、ミオリネを抱きしめるシーンは結婚を承諾すると受け取れます。エランのキスを拒否し、デートを断ったことをわざわざミオリネに報告し(10話)、ミオリネに褒めて欲しいと思っていることからも、10話の時点では『ミオリネの花婿』という立場に拘っていたと見えます。更に、17話では決闘中に「隣にいたいって、今度は私から言わなくちゃ。一緒に指輪選んで、式も挙げて、二人とも最高のドレス着て」と結婚への強い願望を口にします。エラン(5号)の「心がない」に動揺したシーンからも、ミオリネとの結婚=恋愛結婚と認識しているだろう、と考えるのが妥当です。
 にも拘わらず、どちらも「好き」という面と向かった告白も、キスに類するシーンもありませんでした。こうしたことから、「男女の恋愛は描けても、同性の恋愛ははっきりと描けない理由があるのか」という憶測が流れました。

魔女ラジでのリアクションに違和感?

 薪の2つ目は、番組放送後に行われた魔女ラジ内でのキャスト様のやり取りです。グエル(エラン)とスレッタ、あるいはシャディクとミオリネといった、異性間の話題では、告白をストレートに「告白」「恋愛」と表現していたにもかかわらず、スレッタとミオリネの関係性においては一貫して「恋愛」、或いはそれに類する言葉が使われませんでした。
 また、最終話である24話放送直後には生放送が実施されましたが、ここでもハッピーエンドである事ばかりが強調され、スレッタとミオリネの関係への言及はありませんでした。
 二人は結婚したんじゃないのか?これが男女であれば確実に結婚を祝福するコメントがあるはずでは?そんな疑問がファンの間で渦巻いていました。

フラストレーションが積もった中?での「結婚」削除

 上述2件の背景があり、ガンダムエース9月号のインタビューで『結婚』の文字が見られたことで、ファンは胸を撫で下ろした訳です。スレッタとミオリネは結婚した事は間違っていない。気兼ねなくお祝いしようと(既にしていましたが)大いに盛り上がりました。
 削除はそのお祝いムードに冷や水を浴びせ、更に『解釈にお任せ』という発表によって「二人が結婚していないとする解釈って何だよ」と総ツッコミが起こる流れになりました。
 それまでに積もり積もった違和感と不信感の爆発がこの度の炎上であると考えられます。一度書いたものを消したことによって「結婚というワードはBNFWからNG指定されていたのでは」「スレッタとミオリネの描写に規制がかけられていたのでは」「二人の関係に言及しないようキャスト様が言い含められていたのでは」と憶測まで呼ぶこととなりました。

バレなかったら発表しなかったのではないか、という疑惑

 時系列として、削除が確認されたのが7月29日、お詫び文の掲載が7月30日でした。お詫び文の方が後に出されています。これに関してはXで結婚削除について騒がれたから後から出したのではないか、という見方が大勢です。炎上拡大の原因とまでは行きませんが、延焼の要因にはなったかもしれません。やましい事がないのであれば修正と同時に発表すればよかった筈です。気づかれないとでも思ったのでしょうか。スクリーンショットで証拠が撮れ、SNSで話題はすぐに広まる現代において気づかれない筈はありません。ましてや雑誌発売から日も浅く、オタクは嬉しい記事は何度でも見返します。
 BMFWはオタク相手に商売している割にはオタクへの理解が浅いと言わざるを得ません。

「削除」と「解釈にお任せ」する事の問題点

 一連の流れについて、日本よりも海外からの反応が過激でした。フィクションに現実のいざこざは無関係であることが理想ですが、商業展開している以上、現実の問題や視聴者の評価は避けて通れません。まして、今作では同性婚という、現代社会でもセンシティブなテーマを扱っています。
 この項目では、「解釈の余地」の何が問題だったのかについて述べます。

1.クィアベイティングではないかという批判

 性的マイノリティを示す「クィア(queer)」と、釣り餌を意味する「ベイト(bait)」を組み合わせた「クィアベイティング(queerbating)」と呼ばれるマーケティング手法があります。詳細は他記事をご覧いただくとして(検索すれば簡単に見つかります)、要は「性的マイノリティを仄めかして世間の注目を集め、売り上げにつなげようとする商売方法」です。投稿者は炎上騒ぎを通じて初めてこの単語を知りましたが、海外ではメジャーなのでしょうか。
 認知度はともかく、スレッタとミオリネの結婚をぼかすことは、これにあたるのではないか、という批判が上がりました。
 水星の魔女は1話でスレッタとミオリネの女性同士で婚約する所から物語が始まります。以降も二人の紆余曲折を描き、公式PVでは「彼女たちの行く末は」「ミオリネの花婿になるのは誰だ」などの煽り文句を入れています。また、EDではスレッタ、ミオリネ、エアリアルしか登場せず、一貫して二人が主人公とヒロインであることが主張されています。
 つまり物語の落し所は「スレッタとミオリネの結末」であり、「ミオリネは誰と結婚したのか」となる筈です。一番肝心な部分を解釈の余地として視聴者に丸投げしてしまうのはいかがなものでしょうか。
 更に、販売されるグッズについても、各キャラ個別販売を除けばスレッタとミオリネをペアにしたものが圧倒的に大多数です。最終話をモチーフにしたアクリルスタンド、一番くじの景品など。ミオリネのフィギュアのパッケージになぜかスレッタがいる、という事までありました。花婿のプレッシャー強し。
 スレッタとミオリネのファン層にフォーカスしたグッズが多いのが実情にもかかわらず、未だに二人の関係は(公式発表では)曖昧なままです。関係性を明言しないまま仲睦まじい二人のグッズばかりを販売する事は、クィアベイティングの定義である「同性愛の仄めかし」に当たると考えることもできます。
 現状ではグレーでしょうか。結婚を”明言していない”だけなので。これがもし続編などで他の異性とくっつくような事があれば即座に確定ですが、そうなったらもう水星の魔女はおろかバンダイナムコホールディングスのIP全般信用できなくなりますね。

一番くじ 水星の魔女vol.3の商品画像。いい笑顔ですね

2.国内と海外で異なる対応

 これまで一貫して公式サイドはスレッタとミオリネの結婚を明言していない、と述べてきましたが、それは日本国内に限っての話です。北米版Xでは「ミオリネはスレッタの妻」と明記されています。日本では解釈の余地を与え、反面北米版では結婚していると断言する。国内と国外で異なる対応をしている訳です。
 北米版Xの説明内容はお詫び文書にある「皆様に解釈にお任せしたい」という意向と矛盾します。何故このような対応になるのでしょうか。

北米版Xの画像説明。スレッタは妻と手を繋いでいるそうです

 これも完全な憶測で、あまり考えたくない事ではありますが、海外の方が性的マイノリティに対する差別に敏感であり、先のクィアベイティングについてもより過激に反応する可能性がある、という危惧が考えられます。要は炎上防止のために先回りしたという事ですね。先のお詫び掲載ポストに関しても日本語以外のリプライが多く見受けられました。今やガンプラの売り上げの半分は海外市場とも言われています。海外視聴者の考え方に合わせて結婚を明文化したのかもしれません。
 それと同時に、国内のみが特殊な対応である可能性も否定できません。日本では今現在同性婚は認められておらず、スレッタとミオリネは(フィクションにも関わらず)あくまで結婚に準ずる形に留めた、という事です。

3.同性愛者への差別に当たる可能性

 差別には様々な形がありますが、この項目ではその中の一つである『透明化』について触れます。NHKの連続テレビ小説『虎に翼』の脚本家、吉田恵里香さんが用いたことで有名ですが、明確に定義されている訳ではありません。本稿では『透明化』を性的マイノリティの当事者から意図的に目を逸らして存在しなかった事にする行為、という意味で使用します。
 スレッタとミオリネは同性愛者か否かは本編では触れられていません。しかし、スレッタとミオリネが互いに結婚を望んだことは事実です。それを無視して「解釈に任せる」というのは、「二人の結婚を否定したければどうぞ否定してください」というBNFWからのメッセージとも”解釈”できます。こうしてスレッタとミオリネの「結婚したいという意思=同性愛」と捉え、それをなかった事として振る舞う事が『透明化』に当たるのではないか、という疑念があります。

BNFWの対応に関する一個人の意見

 この項目は完全に投稿者一個人の意見表明です。言ってしまえばBNFWへの愚痴と遠吠えです。何の毒にも薬にもならいお気持ちですので予めご了承下さい。

削除という悪手を最悪のタイミングで打ってくださった

 結婚という二文字をどうしても使いたくなかったのは何故でしょうか。それに加えて「解釈の余地」という単語が酷すぎました。単に「消しておきました」だけならばここまでの炎上にはならなかったと思います。
 また、「もともと書いていない事」と「一度書いたものを消す事」では意味が大きく違います。削除とは即ち否定です。BNFWは一人のキャスト、もしくは一人の編集者の解釈を否定したと言えます。多様な解釈とやらを維持したいのであれば、取るべき対応は削除ではなく「インタビュー内容はあくまでもキャストの解釈です」という注釈を付け加えるべきでした。BMFWがどうしても結婚の二文字に拘って否定するおかげで、ファンも頑なに結婚の二文字に拘らざるを得なくなりました。未だに結婚の明言を求める声が上がるのにはこういった背景があります。
 タイミングも最悪でした。2023年は8月に大規模フェス、『アスティカシア全校集会』を目前に控えていました。今回の炎上騒ぎで熱が冷め、水星の魔女ファンをやめるとX上で宣言している方も見られました。制作会社が自ら作品を大切にしないと豪語したようなもので、仕方のない事だったと思います。キャスト様方は心を痛めたと思われます。或いは暴動のようなものが起きないかと不安や恐怖もあったかもしれません。
 蓋を開けてみれば、全校集会は大いに盛り上がり、スレッタとミオリネは互いに『パートナー』であることが表明されて終わりました。………パートナーです。ホルダー(ミオリネの花婿候補)でなくなったと意気消沈するスレッタにミオリネがかけた言葉なので意味はひとつしかないように思いますが、これも解釈の余地はあるのでしょうかね。絶対に結婚と言ってはいけない選手権のなかでスタッフが精いっぱいひねり出した言葉かと思うと涙が出ます。

同性愛差別に関する個人的な見解

 上の項目で差別の疑念に関して記しましたが、個人的には差別に当たると判断しています。
 スレッタとミオリネはアドステラという同性婚可能な世界で結婚しました(しました!)。にも関わらずそれらを”現実の法律や文化によって結論を変える”ことは、フィクションに現実を持ち込んでいると言わざるを得ません。なぜ日本で堂々と結婚を明言しないのでしょうか。政治的な意図を持ち込みたくない、或いは同性婚推進のシンボルのようにしたくないというのであれば、「この物語はフィクションです。そういう世界で結婚しただけで現実とは関係ありません」と言えばよいだけですし、著作権利者であるBNFWにはキャラクターの二次使用を制限する権利もあります。
 逆にどうしても解釈の余地を視聴者に提供したいのであれば、北米版の画像説明も修正し、確固たる信念で視聴者に説明すべきです。このダブルスタンダードな対応が、却ってBNFWの政治的な意図を浮き彫りにしているように見えます。ホント、結婚を言いたくないのは誰なんでしょうかね。
 今回の炎上事件では、ダイバーシティを掲げる企業の割にマイノリティの扱いに鈍感すぎると感じました。透明化については無自覚な差別と思われます。一個人ならばまだしも、世界に影響を持つ一企業からの情報発信である、というこにともっと自覚を持って頂きたいと切に願っております。グループ役員の大多数が日本人男性である事の影響はどれほどあるか分かりませんが、多様な視点を取り入れる努力はしてほしいものです。

結婚以外の解釈をする要素はあるか

 折角余地を設けて頂いたので、BMFWが推奨する他の解釈候補、スレッタとミオリネが結婚していないと仮定した場合について考えてみましょう。

 本編で描かれた事実として、
・スレッタ、ミオリネとも結婚の意思が明確(11話、22話)
・ミオリネがプロスペラに”家族になる”と手を差し伸べる(23話)
・エリクトの小姑発言(24話)
・スレッタとミオリネがお揃いの指輪を薬指につけている(24話)

 ここまで揃っていれば解釈の余地としてはせいぜい「籍は入れているのか」「苗字はどうしたのか」など結婚が決定している状態で、かつ細かな箇所だけのように思えます。
 一部では”真の恋人(誰?)と結ばれるまでの虫よけの指輪”、”親友であり家族(恋愛ではない)”という説もあるそうですが、それが本当ならスレッタはなぜ17話で必死に指輪や式について叫んだのでしょうか。友達とお揃いの指輪をつけて卒業式に参加でもするためですか?勝てばミオリネとの婚約が確定する状況で叫ぶことですか?ミオリネと結婚したかったと考える方が自然です(というか友情指輪も卒業式も決闘結果は関係ありません)。
 ミオリネが7話で人生を大転換するような会社設立を行い、16話で人生を大転換させるような総裁選出馬を決めた理由は何でしょうか。どちらもスレッタを守るためです。自分の人生を賭けてまで守りたいのはなぜでしょうか?17話でスレッタを「大切」と表現しているのはミオリネもグエルも同じです。グエルは「恋心」でミオリネは「友情」ですか?どちらも等しく恋でしたよね。

 仮に結婚以外の選択肢を考えるなら、
・スレッタ、ミオリネとも結婚の意思が明確
 →エピローグまでの3年で気が変わった、
  もしくは互いに別の相手がいる状態で当人同士の結婚指輪をしている
・ミオリネがプロスペラに”家族になる”と手を差し伸べる
 →エピローグまでの3年で気が変わった(又はプロスペラと結婚…?)
・エリクトの小姑発言
 →エリクトの妄想(?)
・スレッタとミオリネがお揃いの指輪を薬指につけている
 →虫よけペアリング(?)

 最終決戦からエピローグまでにそんな大幅な変化があるなら、エピローグ以前が全くの茶番になります。
 グエルにせよシャディクにせよスレッタ、ミオリネとの恋心には決着をつけています。彼らが再び二人にアプローチしたのか、実は本編で恋愛模様を描かれていない第三者男性と真の(?)結婚でもするのでしょうか。いずれにせよ男女で指輪をしている状況では決して挙がる事のない想像ですね。
 物語として破綻するし、スレッタは3話で「不倫はダメです」と言っていたにも関わらず不倫状態になるし、スレッタとミオリネの意思はどこへ行ったのとなるし、グエルとシャディクはしつこい男になるし、登場人物全員が不誠実になってしまいます。
 これらを「同性だから」「異性だから」で倫理観やロジックを変える事は最もやってはいけません。それは透明化という差別そのものですから。グエルはスレッタとミオリネの相思相愛を知っているからこそスレッタにホルダーの権利を返し(22話)、シャディクはスレッタを恋敵と認めて決闘しました(9話)。水星の魔女の世界において異性愛と同性愛が対等であることは、1話から物語を通して明確に描かれています。
 自分達で作った世界観やキャラクターを貶めるような発言をしないで頂きたい。

おわりに

 本記事のまとめです。
・2023年7月に起きた炎上騒動の概要
・炎上騒動の原因の推測
・炎上で挙がった問題点の抽出
・投稿者個人の感想
 について記載しました。

 冒頭でも述べましたが、いつかこの話が笑い話として語られるようになることを祈っています。
 ここまで長々とお読みいただきありがとうございました。