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【IR分析 #170】 セイコーグループ(8050)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考える ―利益成長と慎重な市場評価のギャップ、どう見るべきか?―
「いい銘柄を、安いときに買う」ことを目的に、好業績、市場評価が安定、割安水準接近、の銘柄からピックアップしています。
企業が投資家向けに開示するIR情報(※)を基に、要点のみをストーリーで読みやすく整理・分析したもので、予想や銘柄推奨ではありません。
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2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)
Q1 どんな会社?
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セイコーグループとは?
時計、電子デバイス、システムソリューションの3事業を展開する企業。特に時計事業では、「グランドセイコー」や「セイコープロスペックス」などの高級ブランドを展開し、世界中の時計愛好家に支持されている。「グランドセイコー」は、その精密なムーブメントや美しいデザインで、高級腕時計市場において確固たる地位を築く。
1969年に世界初のクオーツ腕時計を開発し、時計業界に革命をもたらした。この技術を応用し、現在では電子部品や精密機器を開発するデバイスソリューション事業を展開。さらに、システムソリューション事業では、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するサービスを提供し、タイムスタンプサービスでは国内市場トップシェアを誇る。
Q2 どんな状況?
現在の市場環境と課題
時計事業は、景気動向や消費者の購買力に大きく左右される。特に高級腕時計市場では、富裕層の消費意欲や為替の影響が大きく、円安が追い風となる一方で、世界的な景気後退が需要を冷やすリスクもある。さらに、スマートウォッチの普及が進む中、機械式時計との差別化が重要な課題となる。
デバイスソリューション事業では、中国市場の景気後退や電子部品業界の在庫調整が業績に影響を与える。一方、システムソリューション事業はデジタル化の進展によって成長が期待されており、特にIoTやAIを活用したDX需要の拡大が追い風となる。2026年度までに売上高3,200億円、営業利益180~200億円の達成を目指し、成長戦略を進める。
Q3 業績は?
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2024年3月期実績:増収増益
ウオッチ事業が堅調に推移し、「グランドセイコー」などの高級ブランドの販売が好調。国内市場では、インバウンド需要の回復が追い風となり、海外市場では欧米を中心に高付加価値製品の販売が伸びた。
一方、デバイスソリューション事業は、中国市場の景気低迷や電子部品業界の調整によって減収減益。システムソリューション事業は、DX需要の拡大に支えられ堅調な成長を続ける。
2025年3月期予想:増収増益
ウオッチ事業では、プレミアムブランドの販売強化に加え、海外市場での展開を拡大し、成長を目指す。特に欧米市場における高級腕時計の需要拡大が期待される。
デバイスソリューション事業は、中国経済の回復や電子部品市場の持ち直しを背景に、売上の回復を見込む。システムソリューション事業は、企業のDX推進に伴う需要拡大が続き、成長を維持すると予想される。
Q4 予想の信ぴょう性は?
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企業が発表する業績予想は、どこまで信頼できるのでしょうか?投資をする上で、この疑問は常に付きまといます。
2025年3月期の売上予想は前年実績比+8%となっており、異例値を除く過去5期の範囲(+3%~+16%)の中に収まっています。この水準は、例年よりやや積極的な見通しですが、過去5期の売上達成率は平均100.2%と安定しており、同社の予測が比較的正確であることを示しています。ただし、過去のデータを見ると、会社予想は実際の結果よりやや控えめ~現実的な傾向があることが分かります。
一方、純利益予想は+9%と、異例値を除く過去の範囲(+3%~+17%)内の現実的な水準ですが、これまでの達成率は平均129.75%と大きく変動しており、過去には予想を大幅に超えるケースも多く見られました。このため、純利益の予想に関しては、会社が慎重に見積もっている可能性が高く、実際にはさらに上振れする余地があると考えられます。
Q5 市場の評価は?
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どんなに企業が利益を伸ばしても、市場が評価しなければ株価は上がりません。それでは、市場はこの企業をどう見ているのでしょうか?
EPS(1株あたり利益)とPER(株価収益率)の動きを見ると、興味深い傾向が見られます。一般的に、企業が利益を上げればPERも上昇し、株価が高まるはずですが、この企業の場合は逆の動きになっています。つまり、EPSが上昇するとPERが低下する「逆相関」が見られます。これは、市場が同社の利益成長を一時的なものと判断し、慎重に評価していることを示しています。
5年前と比較すると、EPSは約3倍に増加しましたが、PERは低下しています。これは、企業の利益成長に対して市場が過小評価している可能性を示唆しています。直近期のPERは17.1倍と20倍を下回っており、過去5期の安値PERの範囲内に位置しています。さらに、高値PERの推移も低下傾向にあり、市場の成長期待が高まっている兆しは見られません。つまり、市場は利益成長に対して「まだ様子見」という姿勢を崩していないと考えられます。
Q6 リスクをどう見る?
では、セイコーグループへの投資は魅力的でしょうか?
プラスの要素
一つの強みとして、同社の利益予想は現実的な範囲にあり、特に純利益については過去の達成度の高さを考慮すると、上振れの可能性があります。さらに、現在のPERは割安な水準にあり、利益成長が続けば、いずれ市場の評価見直しにつながる可能性があります。つまり、現在の株価は成長余地を残している状態であり、「市場が気づく前に投資する」という視点ではチャンスと言えるでしょう。
マイナスの要素
しかし、市場は同社の成長に対して慎重な評価を続けています。EPSが上昇してもPERが低下しており、成長を織り込むまでに時間がかかる可能性があります。また、現在の市場期待が低く、たとえ業績が良くてもすぐに株価が反応するとは限りません。そのため、短期間での大きな値上がりを期待する投資家にとっては、やや忍耐が必要な銘柄と言えるでしょう。
この続きでは、過去の市場評価をもとに算出した「割安水準の目安」がご覧いただけます。ここまでの分析を踏まえ、この目安を知ることで、投資候補に入れるべきかの判断がしやすくなります。
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※プロフィール記事を更新しました。コンテンツの趣旨や使い方、そもそも私が何者かなど書いています。ぜひご一読ください。
※分析記事の目次です。どんな会社かも簡単に書いています。ぜひご覧ください。
Q7 買うならどのくらい?
過去の市場評価の範囲を基に、相対的に低い水準を特定することで、投資判断の目安を得ることができます。
具体的には、直近5期の安値PERの平均から高値PERの平均をこの企業の概ねの評価レンジとし、その中間以下を「概ね安い水準」とみなすと以下のようになります。
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