
【IR分析 #84】 大塚ホールディングス(4578)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考える
「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益傾向など、興味を持つに値する企業をピックアップし、「どんな会社で何がいいのか」と、「買うならどのくらいか」を考えます。
これらは企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で量も多いので要点だけまとめました。多くの銘柄を時短で知り、ピンとくる銘柄を見つけて、安い時があれば検討することが目的です。
私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。
2023.12期 (2023/01/01~2023/12/31)
Q1 どんな会社?
医薬品や健康食品を扱う総合ヘルスケア企業。医療関連事業、ニュートラシューティカルズ関連事業、消費者関連事業の3本柱を展開。売上の約67%を占める医療関連事業では「エビリファイ メンテナ」などのグローバル4製品が成長を牽引し、健康食品事業では「ポカリスエット」「ネイチャーメイド」が主要ブランド。医療と栄養の両面から健康を支える独自モデルが特徴。
Q2 どんな状況?
高齢化や医療費抑制の影響を受ける一方、AIや遺伝子治療の進展で医療のデジタル化が進んでいる。健康志向の高まりで市場が拡大するが、競争激化により新製品開発が課題。これらを成長機会と捉える一方、特許切れによる売上減少などの課題にも直面。そのため中期経営計画では「新規事業の拡大と次世代成長の投資促進」を掲げる。

有価証券報告書等から作成
Q3 業績は?
2023年12月期実績:増収減益
医療関連事業はグローバル4製品が好調で、米国市場の伸びが顕著だった。ニュートラシューティカルズ関連事業も「ポカリスエット」などの海外展開が成功し売上は+10.6%。利益率の高い製品成長や原価改善が寄与し、当期利益の減少は一時的要因によるもの。
2024年12月期予想:増収増益
医療関連事業ではグローバル4製品の成長と新規製品投入が主な成長要因。腎デナベーションシステムの米国販売や認知症治療薬の普及が期待される。ニュートラシューティカルズ事業では「ポカリスエット」などが成長を牽引し、研究開発費増加や新市場開拓で持続成長を目指す。

Q4 予想の信ぴょう性は?
売上予想の前年実績比+6%は、過去5期の予想範囲(+0%~+8%)内にあり、平均達成度は105%以上と堅調に推移しているため、現実的で信ぴょう性が高いと評価できる。直近は予想を上回る実績が続いており、控えめな予想を提示する傾向が見られる。
一方、純利益予想の+106%は、過去の変動範囲(-1%~+33%)と比較して非常に積極的な水準。ただし、過去の達成度は直近3年間で下振れ傾向が強まっており、信ぴょう性はやや低いと判断される。純利益予想は過大に設定される傾向があるため、慎重に見る必要がある。

達成度は期初予想の達成率。決算短信等から作成
Q5 市場の評価は?
EPSの変動に対してPERは一定の相関を示しておらず、EPSが増加した際にはPERが低下し、EPSが減少したにもかかわらずPERは上昇している。市場は利益成長よりも将来の成長期待を重視していることが分かる。5期前と比較すると、直近期はEPSが減少しているにもかかわらずPERが上昇していることから、利益成長が市場でやや過大評価されている傾向がある。
直近期のPERは23.6倍で、過去5期の高値PER平均21.7倍を上回っているため、直近の市場評価はやや割高感があり、成長期待が高まっている兆しがあると考えられる。

平均は異例値を除く。有価証券報告書等から作成。
Q6 リスクをどう見る?
売上予想の達成は安定しており、収益基盤は堅実である。しかし、純利益予想は過去の達成実績にばらつきが見られるため、慎重な評価が必要となる。特に、直近期のPERがEPSの減少にもかかわらず上昇している点は、市場が短期的な利益よりも中長期の成長を重視していることを示している。
一方で、PERが20倍を超える水準で割安感はないことから、市場の成長期待はすでに高まっていると考えられる。このため、業績が期待を下回った場合、株価調整のリスクがある。成長期待はあるが、過大評価のリスクも含んでいる点に注意が必要。
最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。
過去の市場評価から、相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るために、リスク許容度に応じた3つのシナリオを提示します。これにより現在の株価位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。
この先は有料ですが、全銘柄が読み放題のメンバーシップは初月無料ですので、ぜひご覧ください。
Q7 買うならどのくらい?
過去の市場評価の範囲から、相対的に低い水準を特定すると、投資を検討する際の目安として有効と考えられる。同社の場合、直近5期の安値PERの平均(15.3倍)〜高値PERの平均(21.7倍)を概ねの評価レンジとすると、
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