【IR分析 #14】買うならどのくらい?を読み解く "日本電子"(6951) 2024.3期
はじめに
有価証券報告書や決算説明資料など、IR情報を読み解くことが、投資成功への近道だと考えています。重要なポイントはほぼ網羅されているからです。ただ専門的で難解で情報量も多いので、要点だけ簡潔にまとめました。
「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益予想などの銘柄に絞って、投資水準を探ります。株価は「利益(EPS)×市場評価(PER)」で決まるため、それぞれの要素を読み解きます。
多くの銘柄についてざっと読んで、ピンとくる銘柄を効率よく見つけてください。
日本電子(6951)
「増益予想」であることを根拠に、この企業をざっくり「いい銘柄」として取り上げ、投資水準を探っていきます。この情報は以下のIR情報を基にしています。
Q1 どんな会社?
【概要】電子顕微鏡や分光計などの精密機器の開発・製造を手がける。世界最高水準の技術を追求し、研究開発を通じて成長を加速。科学技術分野でニッチトップ企業を目指している。売上構成比率は理科学・計測機器が69%、産業機器が22%と、科学技術分野に特化。
【特徴】強みは、電子顕微鏡や分光計などの精密機器分野における高度な技術力と製品革新。特に電子顕微鏡技術においては、世界トップクラスの性能を誇り、多様な分野の研究者や技術者から高い評価を得ている。
Q2 どんな状況?
【環境】国内の設備投資需要やインバウンド需要が回復する中、円安や地政学的リスク、中国経済の減速など、不透明な外部環境が影響。同社は安定した売上を維持しつつ、経営方針を柔軟に見直す構え。成長の持続に向け、経営環境の変化を見据えた適応が求められる。
【取組】「Evolving Growth Plan」に基づき、電子顕微鏡や分光計の性能向上を含む研究開発の強化、製造プロセスの高度化、アフターサービスの質向上に取り組み、安定した収益構造と事業拡大を実現。数値目標は、売上高営業利益率を10%以上、自己資本利益率(ROE)を15%以上を掲げている。
Q3 業績は?
(単位:億円) 有価証券報告書、決算短信等から作成
2024年3月期実績:増収増益
理科学・計測機器事業は各国の科学技術投資や半導体の研究開発需要で好調を維持。産業機器事業は半導体市況の影響を受けるも、シングルビームマスク描画装置が堅調に推移。医用機器事業では国内の需要が堅調だが、中国市場の政策影響で海外の売上が伸び悩む。
2025年3月期予想:増収増益
半導体や先進技術分野の堅調な需要と、各国政府の科学技術投資が底堅く推移。地政学的リスクや為替の影響は懸念材料だが、原価改善や新製品投入で競争力を高める。引き続き、計画の達成に向けた成長基盤の強化に尽力する。
Q4 会社はどう見てる?
【予想の積極性】今期の売上予想は、過去5期のうち異例値を除いた平均増減率に照らし、やや控えめな水準。純利益予想も標準的な伸び幅。全体として、控えめな予想にとどまる。
【予想の信ぴょう性】直近5期の達成度を基に、売上予想の達成度は一貫して100%以上を維持。純利益についても、過去5期でほぼ予想を上回っており、今期予想の達成度も信ぴょう性は高いと評価できる。
【予想の傾向】直近5期の達成度から見ると、売上予想は控えめで現実的な範囲が多い傾向。純利益予想も下振れはなく、上振れしやすい傾向が顕著。
Q5 市場はどう見てる?
【評価の傾向】EPSが増加してもPERの反応は一貫して強くなく、明確な相関性が見られない。市場は成長に対して慎重で控えめな評価をしている。
【評価のギャップ】5期前と比較してEPSは増加傾向にあるが、PERは低下傾向。市場は過小評価の傾向が強い。
【直近の水準】直近期のPER水準に割高感はなく、5期平均の水準から見ても、市場の期待に大きな変化はなく、安定した評価が続く傾向。
Q6 買うならどのくらい?
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