【IR分析 #17】買うならどのくらい?を読み解く "丸井グループ"(8252) 2024.3期
はじめに
有価証券報告書や決算説明資料などの開示情報(=IR情報)を読み解くことが、株式投資成功への近道だと考えています。投資にあたって重要なポイントがほぼ網羅されているからです。ただ情報量が多く専門的で難解なため、要点だけを簡潔にまとめました。
「いい銘柄を、安いときに買う」ことを前提に、増益予想などの銘柄に絞り、投資水準を探る内容です。株価は「利益(EPS)×市場評価(PER)」で決まるため、それぞれの要素を読み解きます。
多くの銘柄についてざっと読んで、ピンとくる銘柄を効率よく見つけてください。
丸井グループ(8252)
「増益予想」であることを根拠に、この企業をざっくり「いい銘柄」として取り上げ、投資水準を探っていきます。この情報は以下のIR情報を基にしています。
Q1 どんな会社?
【概要】小売事業とフィンテック事業を主軸とし、未来投資を加えた三位一体のビジネスモデルを展開し、企業価値向上を目指している。フィンテック事業はクレジットカードとキャッシングサービスを主要な収益源とし、エポスカードの会員基盤拡大に注力している。売上は小売セグメントが30%、フィンテックセグメントが70%を占める。
【特徴】金融サービスと小売の融合を促し、継続的収入の拡大に取り組んでいる。これにより、安定したキャッシュフローを創出し、事業の成長基盤を強化している。エポスカードのネット入会を促進し、会員獲得を加速する戦略が効果を発揮している。
Q2 どんな状況?
【経営環境】消費動向の変化や競争の激化、金融テクノロジーの進化、決済手段の多様化、環境規制の強化、再生可能エネルギーの導入推進に対応している。フィンテック事業では資金需要の増加が課題であり、資金調達とリスク管理の強化が求められている。小売セグメントでは、未稼働区画の縮小と賃料収入の増加が引き続き課題となっている。
【取組み】「人的資本経営」に注力し、共創経営で企業価値向上を目指す。サステナビリティ経営の一環として再生可能エネルギーの活用を進め、成長基盤を強化。中期経営計画ではEPS200円の達成を目指しており、資本再配分と自己株式取得を推進。最大200億円の自社株取得枠を設定し、株主還元を強化。人的資本への93億円の投資を通じた社員への株式付与も実施。共創投資の貢献利益28億円が収益向上に寄与している。
Q3 業績は?
2024年3月期の実績:増収増益
主要要因はクレジットカード事業の成長と不動産賃貸収入の増加。会員獲得が、安定的な収益を生み出す一因となっている。小売セグメントでは、テナント収入の増加が利益に寄与し、イベント収入とECの成長も確認されている。
2025年3月期の予想:増収増益
小売事業での新規テナント導入とイベント収入の増加を計画。フィンテック事業では、「家計シェア最大化」を掲げ、カードクレジット取扱高の成長を見込んでいる。エポスカードの新規会員拡大にも注力し、グループ全体の取扱高は5兆100億円に達する見込み。
Q4 会社はどう見てる?
直近5期の予想水準と達成度
予想の積極性
今期の売上予想+8%は、例年と比較して積極的な水準。純利益予想+7%も、異例値を除けば一貫した成長が見られる。純利益率は全体として10%台を維持しており、高い水準を保っている。会社の利益見通しは中立からやや強気の姿勢と評価できる。
予想の信ぴょう性
売上予想の達成度は、概ね96%から101%の範囲内で推移しており、高い信ぴょう性がある。純利益の達成度は、ばらつきが見られるものの概ね100%前後で安定している。これにより、今期の予想も現実的な範囲で達成可能と考えられる。全体として、売上・純利益の予想に対する実績のブレは小さく、会社の見通しは堅実かつ信頼性が高いと評価できる。
利益がブレる要因
ポジティブな要因としては、既存のテナントの賃料引き上げや新規テナントの導入、EC取扱高の拡大、カード利用増による手数料収入の上昇。一方で、ネガティブな要因としては、金融市場の不安定さが挙げられる。金利上昇や景気の減速が消費者の信用リスクを高め、貸倒費用が増加する可能性がある。
Q5 市場はどう見てる?
直近5期のEPSとPERの推移
値動きの幅から考察
直近5期の異例値を除いた高値PERの平均は23.9、安値PERの平均は17.1で、その差は約39.8%。値動きは大きくはなく、市場の成長性への期待は慎重であると考えられる。
EPSとPERの相関性から考察
EPSの増減に対してPERの反応が一貫しておらず、明確な相関性は見られない。市場は成長性への期待を控えめに持っていると考えられる。
5期前との比較から考察
2020年3月期と比較して、2024年3月期のEPSは上昇しているが、PERは小幅な変化に留まっている。これは、企業の成長そのものは見られるものの、市場の期待が控えめであることを示している。
市場の姿勢
全体的にPERの変動幅は小さく、EPSとの相関性も明確ではない。成長性への強い期待は見られず、市場は慎重かつ中立的な姿勢を保っていると評価できる。
Q6 買うならどのくらい?
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