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【実用的IR分析 #52】 "日本新薬(4516)" のIR情報から、「買うならどのくらい?」を時短で読み解く
この記事は、「いい銘柄を、安いときに買う」ために「増益傾向の中小型銘柄」をピックアップし、知っておくべき「どんな会社で何がいいのか」と、最も知りたい「買うならどのくらいか」をまとめたものです。
これらは上場企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で難解で量も多いので、要点だけを時短で読めるようにしました。ざっと読んで、ピンときた銘柄をストックしておき、安いときがきたら投資を検討することが目的です。私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。
2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)
Q1 どんな会社?
医薬品と機能食品を製造・販売する企業で、血液内科や難病・希少疾患領域に強みを持つ。売上の約90%が医薬品事業で、核酸および低分子創薬技術を活用して治療薬を開発。機能食品事業では「WINZONEプロテイン」など高付加価値製品が成長中。品質管理と安全性を重視し、医薬品のノウハウを機能食品にも応用している。
Q2 どんな状況?
医薬品業界の価格競争や高額な研究開発費が課題だが、難病や希少疾患市場の成長が期待される。機能食品業界は健康志向で需要堅調だが、原材料高騰が課題。同社は2028年度までに売上収益2,300億円を目指し、核酸創薬や新製品開発を推進。「NS-087」などの革新的薬剤開発や研究提携により市場拡大を目指している。
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有価証券報告書等から作成
Q3 業績と予想は?
2024年3月期実績:増収増益
医薬品事業では「ウプトラビ」や「ビルトラルセン」が売上を牽引し、ロイヤリティ収入が収益増加に貢献した。機能食品事業では「WINZONEプロテイン」を中心に、プロテイン製剤やサプリメントの売上が堅調に推移した。
2025年3月期予想:増収減益
医薬品事業では「ウプトラビ」や「ビルトラルセン」の売上増加とロイヤリティ収入の伸長が見込まれている。一方で、機能食品事業は一部製品の価格低下が影響するものの、新製品投入と重点品目の強化により下支え。
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Q4 予想の信ぴょう性は?
売上予想の前年実績比+1%は、直近5期の範囲内ではあるが保守的な水準。達成度は過去5期で一貫して100%以上を示しており、信ぴょう性は高いと評価できる。会社予想は控えめな傾向。純利益予想の-5%は例年の範囲内だが非常に保守的な水準。過去の達成度は高く、上振れの傾向が強いため、信ぴょう性は高いと評価できる。
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達成度は期初予想の達成率。決算短信等から作成
Q5 市場の評価は?
EPSが上昇する局面でPERが低下する逆相関があり、市場は成長を慎重に評価している。5期前と比較してEPSは大幅に増加したが、PERは低下しており、利益成長が過小評価されている可能性がある。直近期のPERは割安感が強く、直近5期の高値・安値PERの平均を下回っており、市場評価は低調で、期待が高まっている兆候は見られない。
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平均は異例値を除く。有価証券報告書等から作成。
Q6 リスクをどう見る?
株価を決める利益(EPS)と市場評価(PER)の分析(Q4・Q5)から、この企業への投資リスクを想定すると、EPSの成長に対して市場評価が控えめで割安感が強い一方、慎重な市場期待が見られる。安定した収益と信ぴょう性の高い予想は魅力だが、成長を期待する積極的な投資にはリスクを伴う。全体として中立的な印象を受ける。
最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。
過去の市場評価から相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るために「リスク許容度に応じた3つのシナリオ」を提示します。これにより現在の株価の位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。
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Q7 買うならどのくらい?
異例値を除く直近5期の安値PERの平均(18.2倍)〜高値PERの平均(28.7倍)を概ねの評価レンジとすると、
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