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【IR分析 #100】 ミスミグループ本社(9962)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考える

「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益傾向など、興味を持つに値する企業をピックアップし、「どんな会社で何がいいのか」と、「買うならどのくらいか」を考えます。

これらは企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で量も多いので要点だけまとめました。多くの銘柄を時短で知り、ピンとくる銘柄を見つけて、安い時があれば検討することが目的です。

私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。

(※)有価証券報告書 決算短信 決算説明資料
2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)


Q1 どんな会社?

FA部品、金型部品、工業用部品の流通を手掛け、部品調達プロセスを効率化する。FA事業が売上の約50%を占める。オンライン調達サービス「meviy」は国内シェア57%で、3D-CAD連携ツールやAI活用により短納期対応を実現している。グローバル物流基盤を活用し、高品質な納品で競争優位性を確立している。

Q2 どんな状況?

中国市場では需要停滞が続くが、製造業全体ではデジタル化や自動化が進み、設備投資需要が中長期的に拡大する見通し。デジタル技術を活用した「デジタルモデルシフト」を推進し、オンライン調達サービス「meviy」の拡充や物流ネットワークの最適化を進める。2030年までに売上高1兆円が目標。

【図表1】有価証券報告書等から作成 数値は作成日時点


Q3 業績は?

2024年3月期実績:減収減益
中国市場の需要停滞や、グローバルな設備投資需要の低迷が影響。特にFA事業やVONA事業が減収減益となった一方で、金型部品事業ではアジアや欧州での堅調な自動車需要により増収増益を記録した。減益の背景には、原材料費や物流費の上昇、需要減少に伴う収益性の低下がある。

2025年3月期予想:増収増益
半導体や自動車関連の設備投資需要が下期以降回復する見込みであり、FA事業での高成長が計画されている。さらに、「デジタルモデルシフト」を通じた効率化や短納期対応力の進化が利益率改善に寄与する見通し。

【図表3】決算短信等から作成 (単位:億円)


Q4 予想の信ぴょう性は?

売上予想の前年実績比+7%は、異例値を除く過去5期の予想範囲(+6%~+10%)内であり、現実的な水準。過去5期の達成度は平均97%で、100%を超える年もあるが未達成の年も多く、信ぴょう性は中程度と評価できるが、やや下振れ傾向が見られる。

一方で、純利益予想の+22%は、過去5期の予想範囲(▲10%~+60%)内で、やや積極的な水準といえる。過去5期の達成度は平均94%で、達成率のばらつきが見られることから、信ぴょう性は慎重に見るべきと考えられる。達成度はブレが大きいため、会社予想は積極的だが不安定な傾向があると考えられる。

【図表4】決算短信等から作成


Q5 市場の評価は?

EPSが増加するとPERも上昇する正相関が多く見られ、市場は利益成長を一定程度評価しているが、慎重な評価の期も見られる。また、5期前と比較してEPSは大幅に増加したがPERは低下しており、市場が利益成長を過小評価している可能性がある。

直近期末のPERは20.7で明確な割高感はなく、過去5期の安値PERと高値PERの範囲の下限に位置しているため、市場の成長期待は慎重な評価にとどまっていると考えられる。

【図表5】有価証券報告書等から作成。
高安値PER=各期の高安値÷各期EPS


Q6 リスクをどう見る?

利益予想がやや積極的な水準で設定されており、上振れの可能性も考えられる。さらに、直近期のPERが過去5期の中で低めの水準であることは、将来的な市場評価の改善余地を示唆している可能性も考えられる。

一方、利益成長が十分に市場で評価されず、過小評価が続くリスクがある。加えて、市場の慎重な期待感が株価の回復を抑制し、予想の信ぴょう性に対する不確実性がリスク要因となる可能性がある。


最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。

過去の市場評価から、相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るために、リスク許容度に応じた3つのシナリオを提示します。これにより現在の株価位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。

この先は有料ですが、全銘柄が読み放題のメンバーシップは初月無料ですので、ぜひご覧ください。

本記事は開示情報等を基にした客観的な分析を提供するもので特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また期中の業績修正等は反映しておらずリアルタイムの情報ではありません。記載の数値や分析結果は参考情報であり将来の価格や投資成果を保証するものではありません。内容には十分注意を払っていますが誤りが含まれる可能性があります。また情報は予告なく変更・修正される場合があります。有料部分の「買うならどのくらい?」は、過去の業績データや市場評価の傾向を基に理論株価や目安を提示したもので、これらは一般的な投資手法に基づく参考値であり特定の価格や投資行動を推奨するものではありません。また市場環境や業績修正のなどの影響により変動する可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任で慎重に行ってください。投資はリスクを伴いますのでこれらをご理解の上でご利用ください。


Q7 買うならどのくらい?

過去の市場評価の範囲を基に、相対的に低い水準を特定すると、投資を検討する際の有用な目安となる。同社の場合、直近5期の安値PERの平均〜高値PERの平均を概ねの評価レンジとすると、

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