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【IR分析 #96】 九州旅客鉄道(9142)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考える

「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益傾向など、興味を持つに値する企業をピックアップし、「どんな会社で何がいいのか」と、「買うならどのくらいか」を考えます。

これらは企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で量も多いので要点だけまとめました。多くの銘柄を時短で知り、ピンとくる銘柄を見つけて、安い時があれば検討することが目的です。

私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。

(※)有価証券報告書 決算短信 決算説明資料
2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)


Q1 どんな会社?

九州を中心に鉄道、不動産・ホテル、流通・外食、建設など幅広い事業を展開。23線区、総営業キロ2,342.6km、595駅を運営し、九州の主要交通インフラを担う。九州新幹線や観光列車、駅ビル運営を通じ地域発展に貢献。不動産事業では商業施設やホテル運営で収益性を向上させ、流通・外食事業など多角化経営を推進。

Q2 どんな状況?

観光需要の回復や経済正常化を背景に鉄道旅客需要が増加する一方、人口減少や少子高齢化、エネルギー価格高騰などの課題に直面。中期経営計画では「事業構造改革」「まちづくりモデルの創造」「新たな貢献領域の展開」を掲げ、鉄道事業の黒字化、不動産開発、物流施設への初挑戦で地域発展と収益向上を目指す。

【図表1】※は作成時点、その他は期末現在。
有価証券報告書等から作成


Q3 業績は?

2024年3月期実績:増収増益
観光需要の回復や西九州新幹線の利用促進により、売上高と当期純利益がともに増加。鉄道事業を中心に収益が改善し、不動産・ホテル事業も堅調に推移。一方で、エネルギー価格の高騰や修繕費の増加が課題。

2025年3月期予想:増収増益
海外経済の不透明感や物価上昇リスクも考慮されているが、観光需要や鉄道旅客需要の増加が見込まれる。加えて、不動産事業では新規物件の寄与や、既存物件の収益力向上が寄与する見通し。

【図表3】決算短信等から作成 (単位:億円)


Q4 予想の信ぴょう性は?

売上予想の前年実績比+5%は、過去5期の予想範囲(-33%~+17%)内であり、保守的な水準。過去5期の達成度は平均99.2%で信ぴょう性は高いと評価できる。一方、達成度に大きな上振れ・下振れの傾向は見られないため、会社予想は現実的な傾向があると考えられる。

純利益予想の前年実績比+10%は、過去5期の予想範囲(-190%~+85%)内の控えめな水準。過去5期の達成度の平均値は93%で信ぴょう性は中程度と評価できる。達成度にはばらつきがあることから、会社予想は控えめな傾向があると考えられる。

【図表4】予想は期初予想の前年実績比。
達成度は期初予想の達成率。決算短信等から作成


Q5 市場の評価は?

EPSが上昇するとPERが低下する逆相関が見られることから、市場は利益成長を慎重に評価していると考えられる。また、5期前と比較してEPSは大幅に増加したがPERはやや低下しており、市場が利益成長を過小評価している可能性がある。

直近期末のPERはやや割安感があり、過去5期の安値PER平均(16.1倍)と高値PER平均(22.0倍)の範囲外で低い位置にあるため、市場の成長期待が高まっている兆しは見られない。

【図表5】高安値PERは各期の高安値÷各期EPS。
平均は異例値を除く。有価証券報告書等から作成。


Q6 リスクをどう見る?

これまでの分析を整理すると、利益予想が保守的で高い達成度を持つことから、安定した成長と上振れの可能性が期待される。また、直近期の割安なPERは、将来的な市場再評価による株価上昇の余地を示している。

一方で、市場が成長を慎重に評価し、利益成長を十分に反映しない過小評価の傾向が続くリスクがある。さらに、市場期待の低さが株価の停滞や評価の伸び悩みにつながる可能性が懸念される。


最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。

過去の市場評価から、相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るために、リスク許容度に応じた3つのシナリオを提示します。これにより現在の株価位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。

この先は有料ですが、全銘柄が読み放題のメンバーシップは初月無料ですので、ぜひご覧ください。

本記事は開示情報等を基にした客観的な分析を提供するもので特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また期中の業績修正等は反映しておらずリアルタイムの情報ではありません。記載の数値や分析結果は参考情報であり将来の価格や投資成果を保証するものではありません。内容には十分注意を払っていますが誤りが含まれる可能性があります。また情報は予告なく変更・修正される場合があります。有料部分の「買うならどのくらい?」は、過去の業績データや市場評価の傾向を基に理論株価や目安を提示したもので、これらは一般的な投資手法に基づく参考値であり特定の価格や投資行動を推奨するものではありません。また市場環境や業績修正のなどの影響により変動する可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任で慎重に行ってください。投資はリスクを伴いますのでこれらをご理解の上でご利用ください。


Q7 買うならどのくらい?

過去の市場評価の範囲を基に、相対的に低い水準を特定すると、投資を検討する際の有用な目安となる。同社の場合、直近5期の安値PERの平均〜高値PERの平均を概ねの評価レンジとすると、

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