
【IR分析 #172】 住友理工(5191)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考える
「いい銘柄を、安いときに買う」ことを目的に、好業績、市場評価が安定、割安水準接近、の銘柄からピックアップしています。
企業が投資家向けに開示するIR情報(※)を基に、要点のみをストーリーで読みやすく整理・分析したもので、予想や銘柄推奨ではありません。
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2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)
Q1 どんな会社?

自動車を支えるグローバルメーカー
自動車の振動を抑える防振ゴムや、エンジン・冷却系統に使われるホース、車の密閉性を高めるシール材など、高機能ゴム製品を開発・製造・販売する企業である。例えば、自動車の快適な乗り心地や静粛性の向上に欠かせない防振ゴムでは、世界トップクラスのシェアを誇る。
住友グループの一員として、高分子材料技術と総合評価技術を活かし、世界23カ国に105の拠点を展開し、グローバルな供給体制を確立している。売上の90.9%は自動車用品事業が占め、環境対応製品の開発にも力を入れながら、世界市場での競争力を高めている。
Q2 どんな状況?
変革の時代、求められる対応
自動車業界は今、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)の進展により大きな変革期を迎えている。特に電動化が加速し、EV(電気自動車)向けの新たな製品開発が急務となっている。加えて、世界的な環境規制の強化やカーボンニュートラルへの対応が求められ、持続可能な技術の導入が不可欠な状況となっている。
一方で、原材料価格の高騰や人件費の上昇など、経営環境の不確実性も増しており、コスト削減や供給体制の最適化が必要となる。こうした変化に対応するため、環境対応製品の開発やコスト削減策を推進し、競争力を維持しながら、原価低減や新規受注拡大、生産拠点の最適化を進めている。
Q3 業績は?

2024年3月期実績:増収増益
自動車用品部門の業績回復が売上高・利益の大幅な増加につながった。顧客の生産回復が進んだことに加え、円安の進行による為替換算効果がプラスに働いた。
特に販売数量の増加と、原燃料価格高騰分の価格転嫁が利益拡大に大きく貢献した。一方、一般産業用品部門は顧客の生産減少の影響を受け、売上減少が続いた。
2025年3月期予想:減収減益
今期の見通しは慎重なものとなっている。自動車用品部門では底堅い需要が見込まれるものの、競争環境の激化やコスト上昇が収益性に与える影響が懸念される。
また、EV市場の成長に伴い、技術革新への対応や新規開発投資の必要性が高まることも、利益の伸びを抑える要因となる。
Q4 予想の信ぴょう性は?

投資家にとって、企業の業績予想がどこまで信頼できるのかは常に気になるポイントです。会社が発表する数字を鵜呑みにしていいのか、それとも慎重に見るべきなのか。過去のデータをもとに検証してみます。
売上予想の信ぴょう性
今回の売上予想は前年実績比で▲1%と控えめなものになっています。過去5期の範囲(-1%~+21%)の中でも下限に位置しており、やや保守的な水準といえます。しかし、実際の達成度は平均103.2%と予想を上回ることが多く、会社は控えめな見積もりをする傾向にあるようです。これまでの実績を考えると、今回も想定より良い結果が出る可能性は十分に考えられます。
純利益予想の信ぴょう性
純利益予想は前年実績比▲14%と、こちらも慎重な見積もりになっています。過去5期の範囲(▲140%~+2%)内に収まっており、決して突飛な数字ではありません。達成度の平均は114.6%と、特に直近では大幅な上振れが続いていることから、今回の予想も実際にはもう少し良い結果になる可能性がありそうです。
Q5 市場の評価は?

どれだけ企業が利益を伸ばしても、市場がそれを評価しなければ株価は上がりません。では、この企業に対する市場の見方はどうなっているのでしょうか?
EPSとPERの相関性
通常、企業の利益が増えれば株価も上がり、PERも上昇するのが一般的です。しかし、この企業の場合、EPSが上昇するとPERが低下するという逆相関が見られます。市場は、目の前の利益成長を素直に評価するのではなく、「この成長は一時的なものかもしれない」と慎重に判断しているようです。過去5年間でEPSは大幅に増加しましたが、それに伴いPERが上がるどころか低下しており、利益成長を過小評価している可能性があります。
直近の市場評価の傾向
直近期末のPERは割安感が強い水準です。過去5期の安値PERと高値PERの範囲内に収まっており、市場の期待が大きく高まっている兆しは見られません。つまり、業績の改善にもかかわらず、市場はまだ慎重な姿勢を崩していないと考えられます。
Q6 リスクをどう見る?
投資には、期待とリスクがつきものです。この企業の場合、どのような点に期待し、どのようなリスクに気をつけるべきなのでしょうか?
プラスの要素
まず、利益予想が保守的であるため、実際の業績が予想を上回る可能性があります。過去の達成度の高さを考えても、売上が想定以上に伸びる可能性は十分にあるでしょう。また、市場が利益成長を過小評価しているため、現在の株価は本来の企業価値を十分に反映していない可能性があります。もし市場の評価が見直されれば、株価の上昇余地が生まれることになります。
マイナスの要素
一方で、市場は依然として成長に対して慎重な姿勢を取っています。EPSが増加してもPERが低下する傾向が続いているため、たとえ業績が好調でも株価がすぐに上がるとは限りません。また、企業の業績回復が一時的なものであると市場が見ている場合、現在の低いPERが長期的に続く可能性もあります。過去の実績だけで楽観視せず、市場の評価がどう変化するかを慎重に見極める必要があるでしょう。
この続きでは、過去の市場評価をもとに算出した「割安水準の目安」がご覧いただけます。ここまでの分析を踏まえ、この目安を知ることで、投資候補に入れるべきかの判断がしやすくなります。
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※分析記事の目次です。どんな会社かも簡単に書いています。ぜひご覧ください。
Q7 買うならどのくらい?
過去の市場評価の範囲を基に、相対的に低い水準を特定することで、投資判断の目安を得ることができます。
具体的には、直近5期の安値PERの平均から高値PERの平均をこの企業の概ねの評価レンジとし、その中間以下を「概ね安い水準」とみなすと以下のようになります。
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