
【IR分析 #93】 長野計器(7715)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考える
「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益傾向など、興味を持つに値する企業をピックアップし、「どんな会社で何がいいのか」と、「買うならどのくらいか」を考えます。
これらは企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で量も多いので要点だけまとめました。多くの銘柄を時短で知り、ピンとくる銘柄を見つけて、安い時があれば検討することが目的です。
私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。
2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)
Q1 どんな会社?
圧力計や圧力センサを中心に計測・制御機器を製造・販売する企業で、産業基盤を支える製品を提供。主力製品の圧力計は世界シェア1位を誇り、売上の50%以上を占める。圧力センサや計測制御機器、ダイカスト事業も重要な構成要素である。蒸着型半導体歪ゲージ圧力センサの開発など独創的な技術力を持ち、研究開発から販売まで一貫した体制が強み。
Q2 どんな状況?
産業機械や半導体業界向け製品の需要が増加し成長。ICTやデジタル化の進展が計測制御機器の需要を後押しする一方、老朽化した社会インフラや人件費の高騰が課題。環境対応型製品や新エネルギー関連製品の需要を見据え技術革新を推進。中期経営計画に基づき、半導体製品の生産拡大、FA向け自動生産ライン導入、液体水素製品の開発を進める。

有価証券報告書等から作成
Q3 業績は?
2024年3月期実績:増収増益
経営成績の要因として、産業機械業界や半導体業界向け製品の需要増加、米国子会社の生産効率向上、円安の影響が挙げられる。不採算製品の見直しやコスト改善も収益性向上に寄与。
2025年3月期予想:増収増益
業績予想の根拠として、電子部品調達状況の改善や設備投資需要の回復が挙げられる。産業機械業界や自動車向け製品の売上拡大が期待されるほか、計測制御機器やダイカスト事業の成長も見込まれている。

Q4 予想の信ぴょう性は?
売上予想の前年実績比+4%は、過去5期の予想範囲(+2%~+12%)内であり、やや保守的な水準といえる。過去5期の達成度は平均98.2%で、信ぴょう性は高いと評価できる。一方、達成度の上振れ傾向が見られるため、会社予想は控えめな傾向があると考えられる。
純利益予想の+2%は、過去5期の予想範囲(+2%~+17%)の下限に位置し、非常に保守的な水準といえる。達成度の平均値は105.6%で、信ぴょう性は高いと評価できる。過去の達成度では上振れ傾向が顕著であるため、会社予想は控えめな傾向があると考えられる。

達成度は期初予想の達成率。決算短信等から作成
Q5 市場の評価は?
EPSが上昇するとPERが低下する逆相関が見られることから、市場は利益成長を一時的と見て慎重に評価していると考えられる。また、5期前と比較してEPSは大幅に増加したがPERは低下しており、市場が利益成長を過小評価している可能性が考えられる。
直近期末のPERは割安感が強い水準にある。さらに、過去5期の安値PER平均(8.14倍)と高値PER平均(13.68倍)の範囲内にあり、市場の成長期待が高まっている兆しは見られない。

平均は異例値を除く。有価証券報告書等から作成。
Q6 リスクをどう見る?
利益予想が保守的で、過去の高い達成度から上振れの可能性が期待される。さらに、直近期のPERが割安であることは、成長余地の大きさを示唆している。一方、市場は成長を慎重に評価しており、利益成長を十分に反映しない過小評価が続くリスクがある。また、市場期待の低さが外部要因の影響を受けやすく、株価上昇を抑える可能性にも注意が必要である。
最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。
過去の市場評価から、相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るために、リスク許容度に応じた3つのシナリオを提示します。これにより現在の株価位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。
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Q7 買うならどのくらい?
過去の市場評価の範囲を基に相対的に低い水準を特定すると、投資を検討する際の有用な目安となる。同社の場合、直近5期の安値PERの平均(8.1倍)〜高値PERの平均(13.7倍)を概ねの評価レンジとすると、
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