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【IR分析 #87】 エフピコ(7947)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考える

「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益傾向など、興味を持つに値する企業をピックアップし、「どんな会社で何がいいのか」と、「買うならどのくらいか」を考えます。

これらは企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で量も多いので要点だけまとめました。多くの銘柄を時短で知り、ピンとくる銘柄を見つけて、安い時があれば検討することが目的です。

私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。

(※)有価証券報告書 決算短信 決算説明資料
2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)


Q1 どんな会社?

食品トレー容器の製造・販売で国内トップシェア。食品スーパーや弁当業界向けにプラスチック容器を提供している。使用済み容器を回収して新たな容器に再生する「トレーtoトレー」リサイクルを業界で初めて導入。流網は全国主要都市の85%をカバー。自動化設備の導入で効率的な供給体制を構築し、エコ製品の開発も進めている。

Q2 どんな状況?

単身・共働き世帯の増加で中食市場が拡大する一方、食品容器業界は原材料費高騰や物流費増加、人手不足に直面している。環境意識の高まりにより、企業には環境対応型製品の開発やリサイクル対応が求められている。物流網の再編、自動化設備導入を進め、新市場開拓やM&Aによる事業多角化を図り、売上高3,000億円を目指す。

【図表1】※は作成時点、その他は期末現在。
有価証券報告書等から作成


Q3 業績は?

2024年3月期実績:増収増益
エコ製品の販売拡大と価格改定が業績に寄与し、惣菜向け容器や低発泡PSP容器の販売が堅調に推移した。連結子会社アペックスの効果も大きく、14期連続増収を達成。営業利益は前年同期比で減少したが、価格改定や高付加価値製品の販売数量が回復し、一定の利益改善が見られた。

2025年3月期予想:増収増益
物流効率化やアペックスの連結効果で業績向上を図り、冷凍食品や病院介護食市場向け高機能製品の提案を強化。出荷枚数は前年比102.5%を目標とし、軽量化製品の拡販が成長の鍵となる。原材料調達の見直しや物流コスト削減により営業利益率向上を目指す。

【図表3】決算短信等から作成 (単位:億円)


Q4 予想の信ぴょう性は?

売上予想の前年実績比+6%は、過去5期の予想範囲(+2%~+8%)内に位置し、平均達成度100%を基にすると信ぴょう性が高いと評価できる。今期の売上予想は例年の中央値を上回るため、やや積極的な水準といえる。

一方、純利益予想の+3%は、過去の変動範囲(+0%~+7%)と比較して控えめであり、平均達成度(99.8%)から判断すると概ね予想に近い水準で着地している。会社予想は保守的な設定が見られ、信ぴょう性は中程度といえるが、実績が若干上振れする可能性も考えられる。

【図表4】予想は期初予想の前年実績比。
達成度は期初予想の達成率。決算短信等から作成


Q5 市場の評価は?

EPSの上昇時にPERが高い水準を維持する傾向が見られるが、EPSが増加してもPERが低下するケースもあり、市場は利益成長を慎重に評価している。一方、5期前と比較するとEPSは増加したものの、PERは低下しており、利益成長が市場評価に十分織り込まれていない過小評価の可能性がある。

直近期末のPERは19.2倍で過度な割高感はないが、過去5期の高値PER(23.6倍~34.1倍)の範囲内にあり、安値PER(16.6倍~22.3倍)と比較しても低すぎる水準ではない。これにより市場の成長期待は以前ほど高くないが、大きな下落傾向も見られず、慎重な評価が続いている。


【図表5】高安値PERは各期の高安値÷各期EPS。
平均は異例値を除く。有価証券報告書等から作成。


Q6 リスクをどう見る?

利益成長が市場に十分織り込まれておらず、株価の割安感があるため、今後の評価見直しによる株価上昇の可能性もあると考えられる。また、業績予想の信ぴょう性が高く、EPSの安定成長が続いていることから、長期的な利益成長の期待も持てる。

一方で、 直近のPERは市場の成長期待が慎重な状態にあることを示している。EPSの増加に対してPERが低下していることから、利益成長が株価に十分反映されないリスクがある。この状況が長期化すれば、利益成長と市場評価のギャップが広がり、過小評価が続く可能性がある。


最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。

過去の市場評価から、相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るために、リスク許容度に応じた3つのシナリオを提示します。これにより現在の株価位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。

この先は有料ですが、全銘柄が読み放題のメンバーシップは初月無料ですので、ぜひご覧ください。

本記事は開示情報等を基にした客観的な分析を提供するもので特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また期中の業績修正等は反映しておらずリアルタイムの情報ではありません。記載の数値や分析結果は参考情報であり将来の価格や投資成果を保証するものではありません。内容には十分注意を払っていますが誤りが含まれる可能性があります。また情報は予告なく変更・修正される場合があります。有料部分の「買うならどのくらい?」は、過去の業績データや市場評価の傾向を基に理論株価や目安を提示したもので、これらは一般的な投資手法に基づく参考値であり特定の価格や投資行動を推奨するものではありません。また市場環境や業績修正のなどの影響により変動する可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任で慎重に行ってください。投資はリスクを伴いますのでこれらをご理解の上でご利用ください。


Q7 買うならどのくらい?

過去の市場評価の範囲から、相対的に低い水準を特定すると、投資を検討する際の目安として有効と考えられる。同社の場合、直近5期の安値PERの平均(20.2倍)~高値PERの平均(29.4倍)を概ねの評価レンジとすると、

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