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【IR分析 #72】 ANAホールディングス(9202)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考えてみた

「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益傾向など興味を持つに値する企業をピックアップし、「どんな会社で何がいいのか」と、「買うならどのくらいか」を考えます。

これらは企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で量も多いので要点だけまとめました。多くの銘柄を時短で知り、ピンとくる銘柄を見つけて、安い時があれば検討することが目的です。

私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。

(※)有価証券報告書 決算短信 決算説明資料
2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)


Q1 どんな会社?

全日本空輸(ANA)を中核とする日本最大級の航空グループで、航空輸送を軸に旅行、商社、航空関連事業を展開。航空事業が売上の約64.8%を占め、PeachやAirJapanなどLCCブランドも展開し収益構造を多様化。国内外の航空市場で主要なシェアを持ち、訪日需要や新路線開設により競争力を強化。SAF導入など環境対策にも注力。

Q2 どんな状況?

航空業界は新型感染症からの回復が進む一方、地政学リスクや物価上昇など外部環境の不確実性が高まっている。国内外の旅客需要回復を背景に新路線開設や復便を推進し、観光需要の取り込みを強化。課題である燃料費高騰や為替リスクに対応しつつ、2025年度までに営業利益2,000億円超を目指し、SAF導入など環境対策を進めている。

【図表1】※は作成時点、その他は期末現在。
有価証券報告書等から作成


Q3 業績と予想は?

2024年3月期実績:増収増益
国際線旅客事業が好調。特に、訪日需要の回復や新たな路線開設によって、国際旅客収入が大幅に増加した。国内線でもレジャー需要が回復し、旅客収入の増加に寄与した。これにより営業利益率が改善し過去最高益を更新。

2025年3月期予想:増収減益
訪日需要の回復を背景に国際線の路線展開を強化し、国内線でも運賃改定で単価向上を図る。一方、純利益は公的支援終了や運航費、人件費の増加、燃料費高騰、為替リスクで減益予想となっている。

【図表3】決算短信等から作成 (単位:億円)


Q4 予想の信ぴょう性は?

売上予想の+7%は例年の変動範囲内の下限付近に位置しており、保守的な水準。直近3期の達成率は100%を超えているため、信ぴょう性は高いと判断できる。純利益予想の-30%は例年の変動範囲内に収まるが、達成率はばらつきが大きく、特に外部環境の影響で下振れしやすいため、予想は楽観的に見積もられている傾向があり信ぴょう性は低い。

【図表4】予想は期初予想の前年実績比。
達成度は期初予想の達成率。決算短信等から作成


Q5 市場の評価は?

EPS上昇時にPERが低下する動きが見られるため、市場は利益成長を慎重に評価している。5期前と比較してEPSは大幅に増加したが、PERは低下しており、利益成長に対する市場評価は過小評価の傾向がある。直近期のPERは割安感が強く、過去5期の高値・安値PERの範囲を下回っており、市場の期待は慎重なままと考えられる。

【図表5】高安値PERは各期の高安値÷各期EPS。
平均は異例値を除く。有価証券報告書等から作成。


Q6 リスクをどう見る?

売上予想は安定しているが、純利益予想は外部要因の影響を受けやすく、不安定さがリスクとなる。EPSが回復してもPERが低下しており、株価上昇が限定的となる可能性がある。外部環境による利益下振れリスクと市場の成長期待の低さが重なり、利益成長が株価に反映されにくい状況が続くことが、投資リスクとして挙げられる。

最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。

過去の市場評価から相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るためにリスク許容度に応じた3つのシナリオを提示します。これにより現在の株価の位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。

この先は有料ですが、全銘柄が読み放題のメンバーシップは初月無料ですので、ぜひご覧ください。

本記事は開示情報等を基にした客観的な分析を提供するもので特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また期中の業績修正等は反映しておらずリアルタイムの情報ではありません。記載の数値や分析結果は参考情報であり将来の価格や投資成果を保証するものではありません。内容には十分注意を払っていますが誤りが含まれる可能性があります。また情報は予告なく変更・修正される場合があります。有料部分の「買うならどのくらい?」は、過去の業績データや市場評価の傾向を基に理論株価や目安を提示したもので、これらは一般的な投資手法に基づく参考値であり特定の価格や投資行動を推奨するものではありません。また市場環境や業績修正のなどの影響により変動する可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任で慎重に行ってください。投資はリスクを伴いますのでこれらをご理解の上でご利用ください。


Q7 買うならどのくらい?

異例値を除く直近5期の安値PERの平均(16.3倍)〜高値PERの平均(25.3倍)を概ねの評価レンジとすると、

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