
【IR分析 #90】 M&Aキャピタルパートナーズ(6080)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考える
「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益傾向など、興味を持つに値する企業をピックアップし、「どんな会社で何がいいのか」と、「買うならどのくらいか」を考えます。
これらは企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で量も多いので要点だけまとめました。多くの銘柄を時短で知り、ピンとくる銘柄を見つけて、安い時があれば検討することが目的です。
私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。
2024.9期 (2023/10/1~2024/9/30)
Q1 どんな会社?
中小企業の事業承継を支援するM&A仲介会社。金融機関からの紹介に頼らず、直接提案型営業で大型案件を開拓し、業界内で高いシェアを誇る。特徴は、業界最安水準の手数料率と「株価レーマン方式」による明確な料金体系で、顧客に公正な取引を提供する点にある。特に調剤薬局業界で国内No.1の成約実績を持ち、難易度の高い案件にも対応できる体制を整えている。
Q2 どんな状況?
事業承継ニーズ増加により、同社は契約負債(成約に至る前の段階の契約)が増え、将来の成約見込み案件が拡大している。専任チームの設置や営業効率化を進め、契約負債の増加を背景にパイプラインを拡充。中期経営計画では、大型案件の受託強化とコンサルタントの積極採用を掲げ、公正なマッチングプラットフォーム「BMP-CORPORATE」の提供などでさらなる成長を図る。

有価証券報告書等から作成
Q3 業績は?
2024年9月期実績:減収増益
売上高は前年の超大型案件が反動で減少したものの、営業利益率は高い水準を維持。特に契約負債の増加が顕著であり、これは将来の成約案件の増加を示唆している。
2025年9月期予想:増収増益
中小企業の事業承継ニーズが引き続き高まっていること、特に規模の大きな大型案件の受託が進んでいることが挙げられる。また、コンサルタントの採用を拡大することで、営業利益率の改善も見込まれている。大型案件の取り扱いをさらに増やし、新たなサービスの提供や提携を通じて市場シェアの拡大を図る。

Q4 予想の信ぴょう性は?
売上予想の前年実績比+23%は、過去5期の期初予想範囲(+7%~+18%)と比較して積極的な水準。成長への期待を強く持っていることがうかがえる。期末達成度は84%~128%とばらつきがあり、未達成の年も見られるため、予想の信ぴょう性は中程度と評価できる。上振れ・下振れの両方が見られるものの、達成度が高い年があることから、会社予想はやや保守的といえる。
一方、純利益予想の+23%は、過去の予想範囲(+3%~+29%)と比較して積極的な水準。達成度は71%~150%と幅広く、過去5期のうち3期が予想未達成であることから、信ぴょう性は低いと評価できる。やや強めの予想を設定する傾向があると考えられる。

達成度は期初予想の達成率。決算短信等から作成
Q5 市場の評価は?
EPSが上昇するとPERが低下する逆相関が見られることから、市場は利益成長を一時的と見て慎重に評価していると考えられる。また5期前と比較してEPSは増加した一方、PERは大幅に低下していることから、利益成長が十分に市場評価に織り込まれておらず、過小評価の可能性も考えられる。
直近期末のPERに割高感はないが、過去5期の安値PER平均(18.4倍)と高値PER平均(37.6倍)の範囲内にとどまっており、市場の成長期待が高まっている兆しは見られず、慎重な評価が続いていると考えられる。

平均は異例値を除く。有価証券報告書等から作成。
Q6 リスクをどう見る?
利益予想は、過去の範囲を上回る積極的な水準にあり、成長余地が期待される。特に売上は大型案件が進展すれば上振れの可能性があるため、一定の成長期待を含んでいる。また、直近期のPERが過去の安値平均を下回る水準にあることから、利益成長が市場で十分に評価されていない可能性があり、割安感が投資機会となり得る。
一方で、過去の純利益予想は未達成が目立ち、特に直近2期の達成度が低いため、会社予想の信ぴょう性には疑問が残る。また、EPSの上昇に対してPERが低下する逆相関が続いており、市場が慎重に評価していることが見受けられる。そのため、楽観的な予想に対する下振れリスクも考えられる。
最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。
過去の市場評価から、相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るために、リスク許容度に応じた3つのシナリオを提示します。これにより現在の株価位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。
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Q7 買うならどのくらい?
過去の市場評価の範囲から、相対的に低い水準を特定すると、投資を検討する際の目安として有効と考えられる。同社の場合、直近5期の安値PERの平均(18.4倍)〜高値PERの平均(37.6倍)を概ねの評価レンジとすると、
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