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徒然なる地球温暖化 No.3:ひとりひとりが生活で使う電力が積もり積もって温暖化を進める…

 今回のノートは、以下の本の内容を参考にして書いています。他にも色々似たような本が出ていますが、さっくり読み易いのでこの分野に興味が湧いた人には、この辺の本がお勧めです。

人口と電力の普遍的本質

 昔、我が家のベランダが腐って、付け替え工事をしないといけなくなったときに、この機会にソーラーパネルをベランダの屋根にできないかと思って、屋根に設置できるパネルの枚数で家の電力を自給自足できないか色々調べました。
 結局、ベランダの修理費がかさんでソーラーパネルの設置は実現しませんでしたが、我が家では1日10数kWh程度の電気を使っていることがわかりました。

 人や家が増えれば、それだけ大量の電気が必要になるということで、実際にどれくらいの電気が必要になるのか、最初に紹介した本を参考にして、いろいろ調べてみました。
 下の図は人口の多い国順に使っている電力量を示したものです。
・斜線で色塗りした棒グラフ は人口を示してい上側の軸で見ます。
・三色の棒グラフは各国が使っている年間電力で下側の軸で見ます。
 青色が石炭や天然ガスなどの化石エネルギーで発電した電力、黄色が原子力で発電した電力、緑色が自然エネルギーで発電した電力になっています。
 グラフは人口1億人以上の国と1億人以下の国に分けてあります。下側の軸の桁が1,000万GWhと100万GWhで違っていますので気をつけて見て下さい。

人口1億人以上の国々

 人口1億人以上の国々では、中国、アメリカは電気の使用量が非常に多く、人口14億人の中国では年間900万GWh程度、人口3億人のアメリカでは年間450万GWh程度の電力を使っています。
 インド、ブラジルは人口の割に使っている電力の量が少なくて、ロシア、日本という順番になっています。日本では大まかに言うと年間100万GWh程度の電力を使っています。
 ブラジル以外の国では、使っている電力の大部分が化石燃料を燃やして発電されています。つまり、人口に応じてCO2をたくさん出しているということです。

 次に、人口1億人以下の国々はどうなってるでしょう?

人口1億人以下の国々

 人口が1億人以下の国々では使っているエネルギーはバラバラで、国によって化石燃料や原子力が多かったり、自然エネルギーが多かったりします。
 人口がだんだん減って、1,000万人以下、日本の人口の10分の1以下になると、使う電力量は年間10万GWh以下になり、自然エネルギーの割合が多くなってきます。
 人口が500万人程度のニュージーランドやノルウェーでは、ほぼ自然エネルギーだけで電力を得ています。人口が減ると自然エネルギーだけでやっていけるんですね。
 ちなみに、日本の水力発電で得られる電力量は約9万GWh程度です。日本もこれらの国ぐらい人口が少なければ、CO2を出さずに自然エネルギーだけで暮らしていけることになります。
 残念な現実として日本は人口が1億人以上であるため、水力発電だけでは生きていけません。

 EV導入先進国のノルウェーを見てみると、14万GWh程度の電力を水力発電で得ています。ノルウェーの人口は日本の20分の1ですので、EVに必要な電力もざっくり日本の20分の1とすると、年間0.5万GWh程度の電力が必要になります。追加で0.5万GWh程度であれば、水力発電に加えて風力発電や太陽光発電を増やすことで、CO2を出さずに何とかなりそうです。

国ごとに異なる電力事情-日本は自然エネルギーだけでやっていけないのか?

 普遍的な事実として言えることは、まず人口が多い国は電力を得るために化石燃料を多く使い、人口が少ないと自然エネルギーだけで何とかなるということです。
 また、オーストラリアのように化石燃料資源がたくさんある国では、安く手に入るので化石燃料が多くなり、ブラジルやニュージーランドのように水力、地熱が豊かだと自然エネルギーが多くなる。
 化石燃料資源も自然エネルギーも豊かではない国、人口に対して電力が足りない国、日本もこれに当たりますが、そういう国は原子力も使う傾向があるということです。
 簡単に言えば、人口規模が小さければ自然エネルギーだけでやっていけるけれども、人口規模が大きくなると自然エネルギーだけではやっていけないことになります。
 また、自然エネルギーの場合は、安定したエネルギーとして水力発電を利用している国が多いということです。

人口当たりどれくらいの電力が必要になるのか?

 寒い国、暑い国、経済レベルの違いなど、いろいろな条件の違いがありますが、中国、インドを除いて先進国のデータでざっくりと人口と発電量の関係を見てみると、100万人あたり、おおよそ12,000GWh程度の電力が必要となることがわかります。

人口と総発電量の関係

 ここで大事なのは、今後さらに発展が続く中国とインドです。中国は人口に相応する電力を使っていますが、インドの電力使用量は人口に比べて非常に少なく、電気を使わずに生活している人の割合がかなり高いです。
 昨今のニュースで聞くことが多いようにこれらの国の発展は凄まじく、これからどんどん伸びていきます。経済発展が続き、人口当たりの電力需要が増えれば、当然、総発電量も上がっていきます。

中国、インドが経済も人口も維持して発展する結果、何が起こるのか?

 ともに10億人以上の人口を有する中国とインドの発電量の推移をみると、この10年間で中国はほぼ2倍、インドは1.5倍になっています。

中国とインドの発電量の推移(IEAデータ)

 中国は、ソーラーパネルや風力発電の大型風車などの一大輸出国で、自国内でもものすごい量の電力を太陽光や風力で発電しています。それでも足りないので、電力の6~7割は石炭を主とした化石燃料により発電されています。
 インドも同様に、石炭で6~7割の電力を得ています。これらの国の電力需要が今後も増え続けると何が起こるでしょうか?
 両国ともに石炭の資源国ですので、石炭火力発電の量は増え続けるでしょう。世界や日本でCO2削減のために石炭火力発電をやめても、合わせて30億人近い人口になる中国とインドが石炭火力発電を増やすと、大気中のCO2濃度が全然下がりません。

 太陽光発電や風力発電を頑張って増やして石炭由来の電力分を置き換えるには、今の10倍以上にしないといけません。それは客観的に見て時間がすごくかかるし、現実的ではありません。
 これらの国が、国際社会からのCO2減らせというプレッシャーを手っ取り早くかわすためには、できるだけ石炭を天然ガスに置き換えるということになります。
 各化石燃料の環境影響は異なっていて、CO2排出量についてみると石炭に比べ天然ガスは約6割の排出量になります。

出典:CO₂は「火力発電所待機影響評価技術実証調査報告書」(1990年3月)/(一財)エネルギー総合工業研究所 SOx、NOxは「natural gas prospects」(1986) /OECD・IEA

 発電に必要な天然ガスは、国内で賄えない場合は国際市場から調達しないといけません。
 現在はロシアのウクライナ侵略への制裁措置で、ロシア産の天然ガスを各国が買わないようにしていますが、中国とインドは例外で、ロシアから買い手がいなくなって安くなった天然ガスを大量輸入するようになりました。
 国際協調よりも自国の電力を優先した結果ですが、違った視点で見ると、中国、インドが天然ガスをロシア以外のオーストラリアや東南アジア、中東、アメリカから調達していた場合、天然ガスの国際価格がさらに上昇していたでしょう。
 東日本大震災以降、原子力発電が減った分を天然ガスを輸入して発電に使っている日本は、経済的にさらに厳しい状況に追い込まれることになっていたでしょう。
 自分の住んでいる国の足元を見ることなしに、安易に、ロシア産の天然ガスを買っている中国やインドを責めてはいけません。

人口とエネルギーでウクライナに圧勝するロシア

 ついでに、ロシアとウクライナについて見ておくと、ロシアは人口1億4千万人、ウクライナは人口4400万人と、おおよそ3倍の人口差があります。
 電力量と発電源を見ると差は歴然で、ロシアは自国内の石炭、天然ガスに加えて原子力と水力を使って、自国内の資源で電力を維持できる構造になっています。

ロシアとウクライナの発電量と発電源

 対するウクライナでは、1986年のチェルノービリ原子力発電所の事故直後に原子力発電所の建設が中断されました。しかしながら、その後の電力不足によって1993年に建設延期を撤回し、現在は、原子力と石炭火力発電が中心となっています。
 ロシアによるウクライナの原子力発電所や火力発電所への攻撃は繰り返し行われています。ウクライナでこれらの電力源が減った場合、産業を維持するのは困難であり、国際送電網を介してEUから電力援助を行うことが不可欠となります。
 戦争終了後のウクライナ復興期には、太陽光や風力発電設備の拡大とその後のEU側への電力の送電が一つの収益源になると予想されます。

結論

 人口が多い国は電力を得るために化石燃料を多く使い、人口が少ないと自然エネルギーの割合が増える。
 化石燃料資源も自然エネルギーも豊かではない国、人口に対して電力が足りない国は原子力も使う必要がある。
 人口規模が小さければ自然エネルギーだけでやっていけるけれども、人口規模が大きくなると自然エネルギーだけではやっていけない。自然エネルギーで電力を得ている国の多くは、安定したエネルギーとして水力発電を利用している。

 次回は日本の人口と電力を見て妄想します…。

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