徒然なる地球温暖化 No.1:電気自動車の普及は是か非か?
もう夏は死ぬほど暑いし変な虫が増えるし、冬は雪が減ってせっかく買ったスタッドレスタイヤの出番がないし、
気象災害は増えるし、コメや果物は暑くて育ちが悪くなるし、
北陸にいるはずのブリが北海道のサケを追いやってしまうし、
地球温暖化の影響はあらゆるところに及んでいます。
まあ、縄文時代は、北海道のオホーツクからカムチャッカまで、灯油ストーブがなくても人が普通に生活できるくらい温暖で、一大文化圏があったくらいだったので、その頃に戻るだけですが、東北から北海道より南に住んでいる人達はこれからしんどい時代になるのは目に見えています。
温暖化の速さを緩和して気候変動に適応するために、何をどうすりゃいいのかイマイチ判然としませんが、2024年頃自分が何を考えていたのかの記録として、地球温暖化に関わるモロモロを不定期に書いていこうと思います。
第1回目は、次回の車の買い替えで電気自動車ってどうなの?と思ったので、電気自動車(EV)についてです。
電気自動車(EV)とガソリン車のCO2排出量
日本は世界に比べて電気自動車の導入が遅れてるそうです。それでも、EVがどんどん普及してくると言われています。
いろいろな人がその環境性について紹介していますが、ちゃんと理解するために自分なりのやり方で計算してみました。
まず、(社)日本自動車工業会(2017年)によると、
ガソリン車の平均燃費は、 22.8 km/L です。
1km当たりのガソリン消費量は、 0.044 L/km ということになります。
ガソリン1L当たりの二酸化炭素排出量は、 2.322 kg-CO2/L と見積もりがありますので 、ガソリン燃費を掛け合わせると、
ガソリン乗用車の1kmあたりのCO2排出量は、 約102 g-CO2/km ということになります。
EVの実電費は、 8 km/kWh 程度(日産リーフの場合)です。
1km当たりの電気消費量は、 0.125kWh/km ということになります。
次に、各種電源別のライフサイクル二酸化炭素排出量は、
・石炭火力 993 g-CO2/kWh
・石油火力 777 g-CO2/kWh
・天然ガス火力 631 g-CO2/kWh
・原子力 20 g-CO2/kWh
日本の電力は2023年時点で、
・石炭火力 33%
・石油火力 5 %
・天然ガス火力 35 %
・原子力 7%
・水力や太陽光などの自然エネルギー 約20%
により発電されています。
これらの割合を踏まえると、発電された電力1kWh当たりのCO2排出量は、 約592 g-CO2/kWh と見積もられます。
先ほどの電費と掛け合わせると、EVの1kmあたりのCO2排出量は、約74 g-CO2/km となります。
EVはガソリン車に比べると、だいたい7割くらいのCO2排出量になるということです。
発電源の石炭火力や天然ガスを減らし原子力や自然エネルギーを増やすとさらに環境優位性は上がりますが、今の発電源の構成割合でもEVの方がCO2排出量の観点からは環境的に良いということになります。
ただし、この見積もりではバッテリーやモーター、ガソリンエンジンなどの生産・廃棄時にかかるCO2排出量を入れて比較していません。
今後、ガソリンエンジンのリサイクルに比べて、バッテリーのリサイクルに大量のエネルギーが必要になる場合は、EVの環境優位性は少し下がることになります。
結局のところ、CO2を出さない発電で得た電気の割合を増やしていかないと、せっかくEVを普及させてもCO2削減効果が大きいとは言いにくいです。
EVに置きかえた方がいい国とそうでない国
では、EVを導入したほうがいい国はどんな国でしょう?
比較対象として、ともにEVの普及率が凄まじい中国とノルウェーで比べてみます。
中国の場合
中国の電力は63%が石炭火力、0.1%が石油火力、3%が天然ガス火力、5%が原子力、約30%が水力や太陽光などの自然エネルギーにより発電されています。
中国の各種電源別のライフサイクル二酸化炭素排出量は、厳密には日本とは違いますが、仮に下のように日本と同様の値だったと仮定すると、
・石炭火力 993 g-CO2/kWh
・石油火力 777 g-CO2/kWh
・天然ガス火力 631 g-CO2/kWh
・原子力 20 g-CO2/kWh
電力1kWh当たりのCO2排出量は、 約648 g-CO2/kWh と見積もられます。
中国製EVの電費は、中国電動者産業によると 0.09~0.12kWh/km 程度のようです。
電力1kWh当たりのCO2排出量と電費を掛け合わせると、EVの走行1kmあたりのCO2排出量は 約58~78 g-CO2/km となります。
ガソリン乗用車の1kmあたりのCO2排出量が、約102 g-CO2/kmということでしたので、中国製EVはガソリン車に比べるとだいたい6~7割くらいのCO2排出量になります。
ほぼ日本と同様と言えます。中国はもはやEV大国ですが、EVを作りすぎて十分に利用されずに廃棄されている事例もあり、発電源のCO2排出量からみてもEVの普及でCO2を大幅に削減できているとは言い難いです。
ノルウェーの場合
一方、ノルウェーですが、この国は人口500万人足らずの小国ですが、世界第12位の石油産出国であり、2022年の統計では8,900万トン近い原油を生産しています。
ところが電力源比率で見ると石油や天然ガスなどの化石燃料はほとんど使われず、水力や風力発電など自然エネルギーで大半の電力を賄っています。
これは、EVに電力をいくら使ってもCO2を出さず、こういった国ではガソリン車をEVに変えれば変えただけCO2排出量を削減できますので、どんどん変えていった方がいいです。
ノルウェーのような極寒の条件では、EVの電費が多少落ちますが、EVの使用実績が増えることで技術の改良も進んでいくでしょう。
結論
EV用の電力をCO2を出さない原子力や自然エネルギーで賄える国はEVをどんどん導入すべきであり、化石燃料を使った火力発電で大半の電力を得ているような国では、EV導入によるCO2削減効果はそんなに大きくないので、EVの導入と並行して火力発電を減らして原子力や自然エネルギーの割合を増やしていく必要があるということになります。