今日しか味わえないものを
シンプルに、ただシンプルに言えば、
かっこよかった。
わたしにとって、最高にかっこいい人たちは、やっぱり最高にかっこよかった。
それだけなのだけれど。
汗だくでずっしりと重いような、でも大量の汗をかいてここ最近で一番軽やかなような身体を持て余したいまま帰路についている。
そんな今日という日を残してみようと思う。
ライブの開演時間がせまってくると、独特の緊張感がやってきた。
ライブハウスという場に入る前にしかやってこない緊張感を、4年ぶりにあじわう。
落ち着かない。
すごく、落ち着かない時間だ。
入場前も、入場してからも、私は震えていた。
ふわふわしながら、そわそわしながら。
震えていた。
3分前を示す時計を見てから、目を閉じる。
ゆっくりゆっくり呼吸を繰り返す。
開演の合図に、わぁぁっと歓声があがる。
その、瞬間、スキマが埋まる。
あ、そうだ。こんな瞬間がライブハウスだ。
パーンとライトがついて、メンバーがでてくる。
自然と声がもれる。漏れ出てしまう。
そこからはもう、ノンストップだ。
一瞬で全身汗まみれになる。
汗が目に入る。目が染みる。
今夜はステージがすごくよく見えた。
ぜんぶ見えて、ステージに向けられる視線や指先が、ぜんぶ自分に向けられるような気になってしまう。
そこらじゅうに飛んでいる音を全身に浴びる。
うれしくて、うれしくて
口が開きっぱなしで笑いっぱなしだった。
体力がないのを自覚していたけど、90分一緒に走り切った。
ぜんぶ終わった瞬間は、寂しさに包まれた。
いや、すごく幸せでいっぱいだっだよ。
でも、なんだろう。
この、無のような、満たされているような。
不思議な高揚感と脱力感とともに会場を後にした。
今日しか感じられない、今日しか味わえない感情を残しておきたくて、ことばを探す。
しっくりくることばがすぐにはみつからない。
今も、見つからない。
だけどやっぱり、あの場所の、あのステージのあの人たちは、最高にかっこよかった。
ありがとうございます。ロックンロールと生クリームとマンガと物語に使いながら、自分の中のことばを探っていきまます。