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はじめての着物
6年前の暮れ、仕事を辞めました。
余暇を満喫してゆったりした気分のまま三が日が過ぎていき、暢気・気ままに過ごすうち、ふと思い立ちました。
そうだ、着物を着てみよう。
要するに、その時の私は暇だったのです。
30歳にさしかかるという時期でもあり、何か新しい事をしてみたいという気分でもありました。
何気なく当時流行り始めていたフリマアプリを登録してみたところ、¥3,000ほどで出品されている着物が目に留まり、特に深く考えることもなく、軽い気持ちで購入ボタンを押しました。
それが、私の初めて買った着物です。
いま思えば、サイズも見ずに――というか、着物に対して『サイズ』という概念・感覚がなく、色柄を吟味することすらしませんでした。
本当に、『なんとなく』買ったその一枚が、後に6年も続くいわゆる『着物沼』に落ちるきっかけになるとは思いもよりませんでした。
さて、着物コーディネーターという職業柄、お客様から着物を始めるきっかけをよく聞きますし、なんなら初めての着物の瞬間にも立ち合いますが、ほとんどの方が『着物を着よう!』と決心して始めることが多いようです。
まず着付け教室を探して……といったふうに。
私の場合、家にどんな着物があるかすら確認しませんでした。
これは今思えば、後から家族に聞いてみればよかったと思っていますよ。
(なんとちゃんとサイズ感のあった着物が複数枚あったのです)
とはいえ、全くの知識ゼロから始めたわけでなく、ほんの小学生の頃に祖母から民踊(みんよう)をかじった事があったので、何をどうやって着物を着るのか――一通りの手順・浴衣程度の着付けならばできるだろうという見通しがあったのです。
後にそれは根拠のない自信であったと判明するわけですが……ひとまず、そんなわけで、私は思い付きで深く考えずにフリマサイトの購入ボタンを押し、着物沼に足を取られることとなったわけなのです。
初めて自分の意思で手に入れた着物は、正絹の亀甲柄のアンサンブル。
実はその数年後に『鬼滅の刃』の義勇さんというキャラに(彼は亀甲柄の羽織を身に着けていました)ハマるので、今では中々気に入っていますが、とにかく幸いなことに、適当に買ったわりにはサイズ感はさほど悪くありませんでした。
着付けの知識があるとはいえ、半端なもの。
当然、いざ着始めたら手順こそ合っているものの、まともな形にはなりませんでした。
とりあえず羽織り、脱げることはないという出来具合。
そこで頼ったのが、YouTubeです。
着物界隈では、実は着付け動画が豊富に世に出ています。
2024年現在では、コロナのおこもり期間を経て、6年前より更に動画・Instagram・XなどSNSの着物情報は充実していますが、それも着物関係者の皆様が普及を頑張って下さったおかげだと感じています。
専門知識、それも長年の経験や勉強で培った技術と知識を、着付け講師の先生方が動画で惜しみなく分け与えて下さる。
ありがたいばかりです。
当時はそこまでの考えがあったわけではありませんが、YouTubeで5分程の着付け動画を視聴し、とりあえずお太鼓結びができるようになりました。
ここまで、着物をポチってから5日程です。
な~んだ、着物ってそんなに難しくないじゃん!
それが、当初の私の感想でした。
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