読書感想: サンタクロースの秘密 ―高橋大輔著『12月25日の怪物』を読んでー
1. サンタクロースの帽子
11月になって近くのスーパーマーケットに行くと、店員がサンタクロースの赤い帽子をかぶっていた。キリスト教徒がさほど多くないこの日本でも、サンタクロースは子どもたちに大変人気がある。今年はどんな贈物をもらえるのだろうかと、期待しながらクリスマス前になると、多くの子ども達は毎年楽しみにしていることだろう。
2. 聖ニコラウスからサンタクロースへ
このサンタクロースはいったいどんな経緯で誕生したのだろうか?私は随分前になるが、サンタクロースは聖ニコラウスという聖人に由来すると聞いたことがある。しかし、この聖人がどのような経緯でサンタクロースになったのだろうか?これらの疑問に対して、真正面から答えようとしたのがこの本である。以下、この本の内容を要約しながら紹介した後、感想を述べてみます。
3. サンタクロースの謎をひもとく調査の旅
著者の高橋氏はどのようにして、サンタクロースにまつわる謎を解いたのだろうか。まず、高橋氏は聖ニコラウスの情報を求めて、生誕地のトルコに行った。そして、さらに聖ニコラウスが埋葬されていると言われるイタリアに行き調査した。さらに、聖ニコラウス祭の調査をするためオランダに行った。
サンタクロースはオランダ人によって、アメリカのニューヨークに伝えられ、そこから現在に至る大変有名な存在になったと言われている。そのため、著者はニューヨークにも調査に行った。こうして、フィンランド、オーストリア、中国まで足を運び調査をしてサンタクロースが生まれて広がる様子を明らかにしている。
4. 調査の結果
調査から著者はサンタクロースの物語を次のようにまとめている。サンタクロース誕生には大きく2つの流れがあると述べている。
一つは聖ニコラウスの命日12月6日を祝日として祝う祭日であり、ドイツやオーストリアなどで祝われている。聖ニコラウスは身売りされそうになった娘の家にそっとお金を置いて助けたという言い伝えがある。これが子どもにプレゼントを渡すということになったらしい。
もう一つは12月25日は古代ローマの冬至祭であった。冬至祭とは次の年の幸運や豊作を祈る祭りである。これがキリストの誕生を祝う日に置き換えられた。冬至祭であれば世界のいろんな文化の中に根付いているのではないだろうか。
この2つの流れが合流したらしいというのが著者の結論である。著者はオーストリアの村の聖ニコラウス祭に参加したところ、聖ニコラウス役の人に加えクランプスという怖いお面をかぶった従者がいた。クルブスは子ども達がその年、良い行いをしていたか問い詰めた。また、それはなんと日本のナマハゲとよく似た格好をしていると述べている。
5 感想
キリスト教徒がさほど多くない日本で、サンタクロースの人気があるのはなぜだろうと長年思っていた。もちろん、年末の商戦の一つとしての利用価値があるのはわかる。しかし、それ以外にも何か秘密があるのではと思っていた。
その一つに、聖ニコラス祭でナマハゲに似たお面をかぶった人が出てくる話を知ると、なんだかサンタクロースは身近な存在に思えてくる。
サンタクロース誕生の秘密を詳しく知りたい人は、一度読んでみてはどうでしょうか。
読んだ本: 高橋大輔 (2012) 『12月25日の怪物』 草思社