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随筆  何歳の時の自分にもどりたいですか? ー私の場合ー

1.   昔の自分に戻れるとしたら


 「もし昔に戻れるとしたら、何歳の時の自分に戻りたいですか?」そのように聞かれたら、皆さんはどう答えるでしょうか?「そんなこと決まっているじゃないか。元気な若い頃、つまり高校を卒業した頃か20才ぐらいだろう」と答える人もいるだろう。私の答えはどうだろうかと考えた。

2.   20歳のころに戻れたら


 確かに20歳のころは、今思えば楽しかった時代である。しかし、当時私は大学生であり、単位が全部は取れないことも想定して、授業を必要以上に多めに受講していたので、あまり暇ではなかった。義務感から勉強はしていたが、正直なところ勉強はあまり好きではなかった。

 今、その時代に戻っても、私の心配性は変わらないので、大きな変化はないだろう。だから、20歳の頃に特に戻りたいとは思わない。但し、自分の生き方を考えるために、若い時にもっともっと小説を読んでおけばよかったと思う。

3.   30歳台・40台の頃に戻れたら


 それでは30歳台はどうだろうか。結婚をして、数年経つと子どもも生まれた。家族が出来てそれなりに責任感も感じるようになった。独身時代のように、仕事が嫌になった時「何か他に良い仕事がないかな」なんてことを言うことも出来なくなった。

 歳を取るにつれて、仕事で大変忙しくなり、毎日仕事を終えて帰宅するのが午後8時過ぎ、しばしば9時を回っていた。(現在はもっと忙しく、過労死ラインまで働いている人も大勢いるだろうが。)当時は帰宅し、夕食を取り、風呂が済み、少しTVを見ていると眠くなり、寝床に入る毎日であった。

 今、30歳台、40歳台の頃に戻ったら、家族との時間を持てるように、少しでも早く帰宅できるように工夫をしたい。しかし、さほど生活は大きく変わらないだろうと思う。だから、あの頃の自分に戻り、あくせくと追われるような毎日を過ごしたいとは思わない。

4.   50台の頃に戻れたら


 50台になると、次第に体力的にも精神的にも仕事がきつく感じるようになった。しばしば「早く定年がやって来ないかな」としばしば思うようになった。先輩が定年まで勤めあげて退職をしていく姿を見ると、何度も羨ましく思った。それでも、なんとか50台を我慢して乗り越えたと思うので、50台には戻りたくない。

5.   結局、昔に戻ってもあまり変わらない


 以上のように考えていくと、たとえ若い時代の自分に戻ることができても、生活はあまりど変わらないだろう。但し、現在まで自分が経験したことや、その時その時の社会情勢などしっかり知識として持って、昔に戻れば違った生活ができるだろう。

 映画の「未来の思い出」(1992年公開 森田芳光監督 原作:藤子・F・不二雄)は、それまで生きて得た知識を持ったまま、10年前に戻るという設定である。しかし、この映画のような設定になっても、映画のように「未来の思い出」を有効に生かして、前の人生とは異なった生活をするだろうか。

 私の場合は、思い切って新しい人生を生きるほどの勇気はなく、一度生きたのと同じような生活をするように思える。違うのは、腹を立てた時には、決して重要な決断をしないようにはしてみたいことである。

6.   結論


 以上のことから、私は20台の若い時や現役時代に若返りたいとは思わない。それでも、定年退職をした頃に、もう一度戻りたいと思うことがある。

 定年を迎えて、仕事から解放され自由になった。しかし、現役時代と比べて、一定期間内に読んだ本の数を比べると、ほとんど増えていない。花が好きな私は、現役時代には時間を見つけては、花屋、公園、植物園などによく花を見に行き写真を撮ったものである。しかし、今自由な時間はあるが、「さあ見に行ってみよう」という気持ちにあまりなれない。

 定年退職時に戻ることができれば、今度は、仕事から解放されて手に入れた自由な時間を、楽しく有意義に過ごす努力ができないかなと思う。

 今までの人生を振り返ると、結局は、若い時の自分に戻って、苦しみをもう一度味わうより、残りの人生を出来るだけ健康で生きる方が私は良いという結論になりそうだ。

 最後にもう一度読者の皆さんに質問します。「もし昔に戻れるとしたら、何歳の時の自分に戻りたいですか?」

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