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町内会⑨:マンション管理組合との関係

私が町内会活動に参加したのは、住んでいるマンション管理組合の理事長を引き受け、この年は偶々町内会の班長に加え、十数年おきに回ってくるブロック長(理事)まで兼務することになったからである。

後の祭りでしかないが、町内会の理事就任の負担について事前に知っていれば、マンションの管理組合理事長は引き受けなかったかもしれない。

よくよく考えると、このマンションに転居した際に、何らかの手続きを踏んで町内会に加入したということ自体、無かった。
恥ずかしながら、町内会の仕事でヒィヒィ言うようになってから、本質的なおかしさに気づいたのである。

当然ながらマンション管理組合と町内会は、全く別の組織である。
マンション管理組合の目的は、そのマンションの維持・管理であり、居住者(厳密には区分所有者)である以上、管理組合への加入と管理費の支払いを義務付けられる。
一方、町内会の目的は、一言でいえば地域住民の互助や親睦であり、組織としてはあくまで任意参加のボランティア団体である。

では何故、本来は互いに無関係にもかかわらず、マンションの管理組合が住民を代表して町内会に参加する立場になっているのか?と疑問に思い、管理会社に過去の経緯を問い合わせると共に、管理規約等を自ら調べてみた。
その結果、このマンションは新築時に管理組合が代表となり全世帯が一括して町内会に加入することに合意し、町内会費は管理費から天引きされている状況が判明。
つまり、マンションの管理組合と異なり加入が強制されないはずの町内会に、その活動内容の詳細もよく知らず、その是非を検討する機会も与えられることもなく、更に金額さえも知らない町会費を自動的に徴収され、加入しているということである。
中古物件として購入した私は、重要事項説明等でその事情を不動産会社から聞いていなかったため、非常に驚いた。

それって世の中では普通なの?という思いで、関連する事例をネットで調べてみたら、町内会からの脱退を希望するマンション住民が、町内会費を強制的に徴収することは不当とマンション管理組合を訴え、勝訴した判例があるという。

やっぱり、道理が合わず、アンフェアである。
しかも私の場合、好意のつもりでマンション理事長を引き受けたばかりに、加入した覚えのない町内会の理事の仕事までやったのだから、まったくおめでたいと自嘲したくもなる。
絶対におかしい。マンションの管理規約がおかしいのなら変えねばならない。心が燃えた。

もう一つ気づいたことは、賃借居住者に関する矛盾である。
賃借居住者の場合、大家(区分所有者)に払う家賃に町内会費が含まれていて、町内会に加入していることになっている場合もあるが、区分所有者でないためマンションの管理組合には加入しないので、管理組合の理事職も、兼務する町内会の理事職も、請け負うことがない。
賃借であってもその地域に住み町内会に加入しているならば、応分の役割分担も担ってもよいはずなのに、マンション管理組合による一括加入故に逆に役割分担から解放されるのは、同じマンション住民なのに不自然で不公平な捻れた状況に思え、モヤモヤするのである。

さて、前年度に理事長であった私は引き続きマンション管理組合の理事会には監事として参加していたため、前年の町内会理事の仕事(の大変さ)を紹介しつつ、マンション全戸一括での町内会加入の問題を指摘、理事会で議論を重ねた。

その結果、マンション全戸一括での加入を次年度から取り止め(一旦全戸で脱退)、各世帯個別での判断による加入に切り替え、管理組合としては会費徴収の取り纏めを含め一切関与しない、という方針を理事会にて決議し、その前提で管理規約を改訂することにつき、年度末の総会に諮ることになった。

議論の過程で、マンション全戸一括で町内会から脱退することで問題になることはないのか?を、以下の点で検討した。

1.ゴミ置き場
町内会に加入しない住民が、ゴミ置き場の使用を町内会に拒否されたり罰金を取られる嫌がらせを受ける、というケースが全国的に問題になっている。
ゴミ回収は住民税を徴収する以上、町内会加入云々にかかわらず行政の義務であり、そのサービスとセットであるべきゴミ置き場は誰もが必要とするにもかかわらず、その管理は町内会に委託されているケースが多く、それ故に「フリーライダーを許さない」という理由で町内会に非加入の住民が排除され住民間でトラブルになる例が多い。
個別回収してもらえない限り、これは特に戸建て住宅居住者にとっては切実な問題で、結局は町内会加入が無難との判断になる場合が多いと思われる。
一方、マンションでは共有部分に住民専用のゴミ置き場がある場合が多く、私のマンションでもこれを使用できる。
つまり、言い方は必ずしも良くないが、ゴミ置き場の使用という観点では、マンションの場合は町内会加入は必須にはならないのである。

2.防災対策
大地震等の災害の際、町内会によって設営される避難場所の利用や、行政から配布される水や非常食などの救援物資支給の観点で、不利益になることは考えられないか?を検討した。
結論からすると、気にする必要は無い。
そもそも避難場所を利用するのは、自宅に被害が及び居住不能となる場合であり、堅牢で倒壊の可能性が戸建てに比べ低いマンションの場合、居心地が良くない避難所利用よりも、自宅避難を想定した災害対策を自ら講じる方が現実的である。
それに、そもそも非常時に救援物資が配布される際に、町内会の加入云々で扱いに差をつけられるなんてことがあり得るのだろうか?
それでも心配ならば、個別に町内会に加入すればよい。
少なくともマンション一括で加入することが必須とはならないはずである。

これらを整理して、理事会で決議案を取りまとめて総会に諮り、無事可決。管理規約も適宜改正され、町内会からは全世帯が一旦脱退し、希望者のみが個別に改めて加入することになった。
天引きになっていた町会費の分だけ、管理費も値下げとなった。
任意団体への加入なのだから、これが本来の形のはずである。

私はもちろん、脱退して終わり。加入継続していません。

決して町内会の存在意義を否定するつもりはないし、勉強になったことは多い。
活動の中で広報紙配布の負担軽減を訴えた結果、役員さんには煩がられながらも対応していただき、実際に業者委託に切り替えてもらえたことは、成果として大変良かったと思う。

しかしながら、町内会には古い体質故の魑魅魍魎とした部分が多く、大ナタを振るって改革すべきと思われる点が、実に多い。
これらを書き出すと、収支・予算管理の妥当性(繰越金が結構ある)、DX化の遅れ(現金での金銭管理、紙媒体での情報伝達)、行政から受給される補助金とそれによるしがらみ、上部団体(連合町内会)との関係性、多すぎるイベント、トップ主導の運営による理事会の形骸化(一方的な報告のみでインタラクティブな議論が無い)等々、キリがない。

次に町内会に関与するならば、文句を言うばかりでなく、それこそ役員になって、本腰を入れてこれらの改革に臨む気概を持ってからにしたいと思う。

申し訳ないが、現時点ではそこまでの覚悟も余裕も無いので、一旦撤退することにした次第です。

いつの日か、住み慣れた地域のためにライフワークとして本気で貢献したい、と思える日が来るまで。

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