昭和47年から来た男 第3章
まいど! 50年後の神戸でやらかした小川ヨシアキです。
俺は興味本位で2度目のタイムスリップを敢行、難なく50年後の神戸にたどりついたんやけど、うっかりしてました。 令和?かなんか知らんけど50年も経ったら、そりゃ社会も生活様式もかなり変化してるわな…普通に考えたら分かりそうやね。昭和47年の50年前言うたら大正時代やもんな…… 俺が所持してる昭和47年の貨幣もどうやら使えそうにないし、身分の証明も無理やね。今更やけど75才の俺が口を酸っぱくして言うてたんは、こういう事やったんやな。ほんま軽率でした。
今はとにかく目の前の状況をどないかせんと、冗談抜きで帰れんくなるわ。 正体不明の不審者である俺は、ポリさんからの容赦ない質問攻めに大いに狼狽しておりました。 その時、小太りのポリさんの胸ポケットから聞いた事がない奇妙な音が鳴り響きました。小太りは胸ポケットから音を発している手帳を取り出すと、その手帳を耳に当てがって「もしもし……」と喋りだしたので、俺は口をあんぐり開けて固まってしまいました。 この時代の人たちが手にしている奇妙な手帳らしき物体は、どうやら電話の機能が備わっているようです。いやはや、ぶったまげました……
小太りが手帳型電話で喋ってる様子をまじまじと凝視している俺を見据えたもう1人の厳つい顔のポリさんが、 「そない珍しいか?スマホ知らんの?あんた一体誰やねん?」 と俺に対しての不信感を更に強めていました。俺は思考が追い付かず混乱を極めていましたが、そこへ思わぬ救世主が現れました。 「あの~、すんません。そいつは孫息子でして、連れ戻しに来ました。」 75才の俺が救いの手を差し伸べてくれました。しかし、なんで俺の居場所が分かったんや?まあ、細かい事は考えんと、おとなしく言う事聞いとこ。
「ほんまですか?そう言うたらよう似てますね。わかりました。」 そらそうや。似てるも似てないも俺らは同一人物やからな。 「ご迷惑お掛けしてすんませんでした。こいつはちょっと頭おかしいんですわ。責任持って連れて帰りますんで、どうか穏便にお願いしますわ。」 75才の俺がポリさんに話をつけてくれたおかげで、俺は無罪放免となり無事釈放されました。めでたし、めでたし…とはなりませんでした。 75才の俺は怒り心頭で、俺はこっぴどくどやされました。
「お前なぁ、あれ程言うたやろ。下手に干渉したらあかんて、わかっとんか、こら、ああぁ?」 俺はぐうの音も出まへん。しかし我ながら短気な奴やな…… 「お前が帰れんくなったら俺の人生が狂うてまうんねん。ええか、もう二度とタイムスリップすな!さっさと帰れ、あほんだら!」 「わかったよ。悪かった、ゴメン。なあ、ちょっと聞きたい事あんねんけどええかな?」「なんや?」 「なんで俺が神戸におるってわかったん?それと昭和47年以降の事を教えられんのはなぜや?」 「 今日はたまたま用があって神戸に来とったんよ。で、偶然交番の前を通り掛かったらこの騒ぎや。それと、未来の事は知るべきやない。知ったらあかんねん。そういう決まり事になってんねん。」 俺は今一つ納得出来んかったが、ここまで言われたらしゃあないと思い諦めた。そこへ、見知らぬ40代位の中年女が75才の俺に声を掛けてきた。 「ヨシアキさん、待ったぁ?ゴメンね、遅くなって。」 「誰?」「彼女や。」「嫁は?カヨコはどうした?」「死んだ。」 俺は言葉を失った……
fin
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?